第15話
軍人さん俺の問いに対して、こくりと頷いた。「正解はどちらでもない」
軍人さんは、またファイルを捲り、あるページを開いた。
ここを見てみろ。
そこには英語で3番と番号が振られ、一人の男の写真が貼られていた。
どこかの外国の男性だろうか。
疑問に思いながらのぞき込む俺に、軍人さんは続けるように言う。
「ここに写っているのはミッキー・ユーティスという男だ。この男は元々、清掃の仕事に着いていた。だがある日。彼は変態【メタモルフォーシス】した」
軍人さんは次のページを捲る。
するとそこには驚愕の写真が貼られていた。
ミッキーと書かれた男は写真の中で、タンバリンを両手に持ちながら、踊っているような様子の写真。
だがそれだけなら違和感も感じないし、気にもとめない。
ミッキーと書かれた男はタンバリンを持ちながら、警察官と対峙していた。
俺は訳がわからず、どういうことだと顔を上げる。
軍人さんは意図が分かっているのか、俺が顔を上げるとすぐに口を開いた。
「彼は元々、タンバリンを鳴らしながら誰もいない公園で踊り歩くということが常習になっていた。それに相まって、彼はタンバリンのリズムで、人をマインドコントロール出来るようになった」
それを言われ、俺は再度、写真を見る。
どうみてもそんな風には見えないけどな。
ただ夜に公園で、こんな奴と出会ったら、即逃げるし、お巡りさんきてくださいになる。
俺は質問した。
「この人はその……、その力で何かしたんですか?」
「まず隣人をその力で、操りつねにパンツ一丁で過ごさせ、外を走らせるようにしたり、職務質問をしようとした警察官をその場で洗脳し、警察官同士でお互いに銃撃戦を始めさせるように混乱させたりと、負傷者および死者をだした」
眼帯の軍人さんはさっきと打って変わってかなり、低いテンションで話す。
そのせいか、よりこの今、見ている記事の重さがわかり、背筋に寒気が走る。
そしておれはどうしよもなく根本的な疑問にぶちあったった。
「この話が今までの変態【メタモルフォーシス】の説明と、俺の質問の何が関係あるんですか?」
俺が質問すると、軍人さんは一度、口を結び直すと再度、言った。
「変態【メタモルフォーシス】をし能力を発現した人間は能力が発現する前に何かしらの執着するものがあったりと偏りがみられた。研究の段階で因果関係は定かではないが、彼らはみな能力を発現するまえからかなりの変態だったことは九九パーセントの確立で分かっている」
軍人さんはその厳つい顔で変態と続けた。
正直、本当に場違いな言葉ではあるものの、現実、俺はその【変態】と呼ばれた人間達が能力を発揮している姿を目にしている。
これが現実だとしたら本当に悪夢のようなことだ。
「君の先程のどちらなのかという質問に対しては正確に答えるのであれば、両方ということになる」
俺はなんともいえず口元を抑えてしまう。
悪い夢を見ているようだった。
あんな変態的な行為を見せられつつも、強大な人間離れした力を見てしまえば、何がなんだかわけがわからなくなってしまう。
黙り込む俺をよそに軍人さんは再度、資料のページを捲る。
俺は視線を其方に向ける。
そこにはひとりの女性が写っていた。
写真の側にはまたも英語で五番と割り振られていた。
「ここに写っているのは、ミランダ・ウィンという人物だ。 彼女はもともと、臭いになみなみならぬ執着を抱いていた。変態【メタモルフォーシス】後、嗅覚が人間以上に発達し、交際していた相手の浮気を察知。その後、交際していた相手を殺害している」
またもやパワーワードが出過ぎてどうしていいのかわからなくなりそうになる。
硬直している俺を他所に軍人さんは続ける。
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