第12話

「美怜、下がれ……」

軍人さんが低い声で言うと、美怜と呼ばれた女の子は俺をみたまま、軍人さんの後ろにたった。

「君のいう黙秘権だが、あると言いたいところだが、そんな物はどぶに捨てたまえ」

軍人さんは表情を代えることなく、言った。

ですよねー。

というか、この部屋に来ている時点で、なさそうだった。

俺は正直に絶望していると、軍人さんは続ける。

「もう一度、君に問いかけるが、君は変態をみたんだな」

軍人さんはまるで視線だけで殺せそうなほど鋭くナイフのような視線を此方に向ける。

その視線は完全に有無を言わせないような感じだった。

俺はちらりと軍人さんの横の女子高生を見た。彼女も、腕を組み逃がすことはないと目で訴えかけているよう。

「はぁ……」

俺は溜息をつき、一度目を閉じ、もう一度、瞼を開けると、口を開いた。

「一つ、質問していいです?」

俺は恐る恐る軍人さんに問いかけた。

「なんだ?」

軍人さんは顔色一つ変える事なく返事をした。「さっきから変態と言っていますけど、その変態って何なんです?」

俺は根本的な質問をすることにした。

まずそこがわからなければ答えるにも答えることが出来ない。

俺はしっかりと二人を見た。

二人は俺の方に視線を集中し、ジッと数秒ほど見詰める。

すると軍人さんは片目を閉じ、一度、息を着くと、言った。

「良いだろう」

「ちょっ、ちょっと大佐!」

美怜はそう言い、軍人さんに詰めよろうとした。

軍人さんは美怜のことを片手を上げて、制止するようなジェスチャーをする。

美怜は不服そうな顔をして口をつぐんだ。

「まず君はどこまで見ていた?」

軍人さんは鋭い視線を此方に向けたまま、問いかけた。

「どこまでって言われても、あの短い髪の女の子……」

そう言いかけると、再度、ドアができすぎたように開くと、そこから現れたのは俺に銃口をむけたショートカットの女の子だった。

「あっ!」

俺は思わず、言おうとしていた人物がドアから入ってくるという事態に、声を上げた。

ショートカットの女の子は俺の方をチラリと一瞥し、興味なさそうに別の方向を向いた。

「葛道か……」

渋い軍人さんは後ろを振り向くことなく、呟くように言った。

「なるほど、説明しなくてもあの場に最後までいたということだな」

軍人さんは、自分で納得するようにいうと、俺の方に向きなおった。

「で、君は何を聞きたい?」

軍人さんは机に、両肘を乗せ、そのまま両手をくむと、顎を乗せた。

おお、そのポーズはと思いそうになりそうだが、そんな余裕はない。

必死で威圧感のあるこの取調室から、出ようと頭を回転させていた。

しかし、何も知らないままで何かされるよりはッ恐怖は和らぐ。

意を決し俺は答えた。

「正直、全部です」

俺は軍人さんに怯むことなく、答えた。

「…………」

軍人さんは俺が答えると、押し黙り、瞼を閉じる。

そして数秒後、隻眼の瞼をかっと、見開いた。そして意外なことを口にした。

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