第9話

ネイキッド・タイガーはジロリと俺と隣の女の子を一瞥すると、美怜をみつめる。

美怜もすぐに見詰め返す。

なんだか緊張感が半端なく感じ、空気が重たくなる。

「【ネイキッド・タイガー】、なぜあなたが

この国に?」

平田は【ネイキッド・タイガー】に質問する。「時は近い。 同志の力、信念が欲しい」

【ネイキッド・タイガー】は平田に顔をむけることなく言った。

「それでは【デスヌード】の面々を集める時がきたのですね……」

平田は感極まったように言うと、眼鏡の位置を直す。

「ここはもう用済みだ。 行くぞ」

感極まった平田と対照的に、【ネイキッド・タイガー】は淡淡と言う。

【ネイキッド・タイガー】が言うと平田はわかりましたと一言だけ呟く。

【ネイキッド・タイガー】は美怜とこちらにむけて、背をむけどこかへ行こうとする。

「待ちなさい!」

美怜はフライパンを構え、背をむけどこかへ行こうとする二人に声をかける。

【ネイキッド・タイガー】と平田は意にすることなく、足をすすめる。

「待ちなさいって言ってんの!」

美怜は叫んだ。

そこでようやく【ネイキッド・タイガー】は歩みをとめた。

「逃げる気?」

【ネイキッド・タイガー】はぴくりと反応し、美怜の方へむきなおる。

「逃げる? 能力の差は明らかにある。 其れを自覚しない者ほど愚かな者はいない」

【ネイキッド・タイガー】がそう言うと美怜は眉間に皺をよせ、駆け出した。

彼女は【ネイキッド・タイガー】へむかい、フライパンを振り上げ、奇襲をかけようとした。しかし【ネイキッド・タイガー】と平田へと接近した瞬間、突然、どこからともなく美怜の目の前に、猿ぐつわをしつつも全身タイツの格好をした人物が現れた。

「なっ……!?」

美怜が驚き、足を止めた直後、【ネイキッド・タイガー】と平田、その人物は忽然とこの場から消えていた。

「しゅ、瞬間移動!?」

俺はまさに形式的なリアクションをしたが、本当に何が起きているのかわからず、ただその光景をみているだけ。

「なんだったんだ、今のは?」

俺は呆然としつつも、自転車に手をかけ辺りを見まわす。

「逃げようと考えても、ダメだよ」

ショートカットの女の子は近くに立っていて、逃がさないという釘をさされた俺は、完全に

頭の中がホワイトアウトしただただ立ち尽くすだけ。

これが俺との変態との因縁の幕開けだった。

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