第3話 振り向けば
「この世の中は不平等だと思いませんか? 人間も規定された範囲の形でなければ人間として扱われない。 自分たちと違ったら排除する。 本当にやっていられないと思いませんか? 本当の自分を殺し、そのまま社会で生きつづける。そんな人生苦しくないですか?」
まるで演説をしているかのようにサラリーマン風の男は話し続ける。
その間にもサイレンの音はおおきくなり、近くで止まった。
これはチャンスではないかと俺は思った。
それならば、警察に向かい、何か言えばそのまま助かるのではないか頭の中で考えた。
サラリーマン風の男はそのまましゃべりつづけた。
「政治家や芸能人は心の解放だとかなんとか言ってますけどそんな物は本当の解放にはならない。真の解放は欺瞞に満ちた人間の心から脱却し、変態し真の自由になること」
サラリーマン風の男は華麗にターンをきめる。俺は本当に心から何を言っているんだと思った。
このオッサンはやっぱりどこかマズイ奴なんじゃないか。
速く逃げ出したくて俺は後ろを振り返ろうとした。
そのときだった。
足下が聞こえ、誰かが近づいてきていた。
俺はその足音の主に助けを求めようとした。
そのままサラリーマン風の男を無視し、後ろから聞こえた足音の主に声をかけようと、振り向いた。
「助け……」
俺は振り向きながら言葉を失った。
俺の目の前に居たのはどこかの高校の制服を着た金髪の女子校生だった。
ただ何かが間違えているんじゃないかと思ったのは彼女が持っているものだった。
正直、似合わないアサルトライフルを手にし、かつ腰の辺りには何かしらの武装とフライパンを持っていたからだ。
「てぇ」
俺の助けての「て」は蚊の飛ぶような音に消えた。
女の子は此方を睨み、ライフルを躊躇なく構える。
「へ……」
明らかに銃口は此方を向いていた。
俺は訳がわからず狼狽えてしまう。
金髪の女の子はライフルを構えながら口を開いた。
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