『ヤギさんどちら?』プロローグ2/2

 「応答を願います。至急、応答を!」


 上空から彼女に向けて、飛竜と思しき爬虫類が喉を鳴らしながら迫ってくる。


 ここまで見て来た読者諸氏には、どうやって『ヤギ』たる彼女がこの世界に辿り着いたのか、伝わったことであろう。


 「文明脅威を“竜”と認定。繰り返します、文明脅威“竜”!!」


 反応がないのは、無理もないことだ。

 彼女は『黒い鍵の魔法書』によって開かれた“深淵の向こう側”に次元断裂を作ってしまったのだ。


 途方もなく入り乱れた次元の先に飛び出て……。

 そして、次元の窪地ゲイルガンドへ……すなわち、この世界へ……と落ちて来た。


 通信や情報分析を補助していた人工衛星は、もうない。


 文明区画も、隔離ドームも、管理AIも、そして人々に理不尽を強いる「文明停滞法」もない。


 「仕方ないなぁぁあっ。本部の承認なしで、自力で対処するしかないみたいね。」

 「『ヤギ』の意地ってヤツを、見せてやりますか。」


 どこからともなく、機械音が聞こえる。

 「「衛星軌道兵器サテライトウェポン、通信途絶」」

 「「緊急措置により、対“巨竜”モード、解除します」」


 『ヤギ』は、ザワザワと身体を歪め、『灰ヤギ』となった。


 「さっさと“トカゲもどき”を倒して、あの丘の向こうにでも行ってみるか。」


 火炎放射とともに飛び込んでくる火炎飛竜ファイアドレイクにも、まったく恐れを見せない。


 「「次元断裂銃リフトガン励起レイズ」」

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