第8話


あれから俺たちは弱い魔物と戦い、強い魔物は逃げるを繰り返し何とか2つ目の橋の近くまでたどり着いた。


「ふー、何とか倒せたな」


言いながら額のあせをぬぐう。

つい今しがたも1体の魔物を倒した。

倒した魔物は昨日倒した大きなトカゲのバジークだ。

大河が着火で気を引き、俺が逃げながら鉄パイプで殴る。この戦法で30分もあれば倒すことができる。


ディグの魔法で解体し、いくつか浮かび上がる素材の中で骨だけを少量回収しバッグへしまう。


すると頭の中でまたあのわからないのにわかる矛盾した感覚がよみがえる。


「あ、能力レベル上がった」


「まじで、なんでわかんの?」


「なんとなく」


「なんだよそれ」


そうとしか言いようがないのだが確実に能力レベルが上がったのが分かった。


「なんの能力が上がったんだ」


続けて大河が問いかけてくる。


「博識がLv1からLv2になった」


「へー、なにが変わるんだ」


「わかんない」


そう、レベルが上がったのはわかるのだが肝心の何が変わったかが全く分からないのだ。


「ものしりレベルが上がってその変化がわからないんだったらレベルアップの意味ないだろ」


「知らねーよ、俺に言うなよ」


ドンッ、・・・ドンッ


俺らがそんな話をしているとどこからか大きな音が聞こえてきた。


・・・・?


俺らは会話をやめ2人で顔を見合わせると音のする方へと進路を変える。


しばらく歩いていくと大人が数人で何かを取り囲んでいるのがわかった。

そして、手に持っている棒状のものを思い切り振り下ろす。


ドンッ


という音が荒廃した町の中に響いていく。

どうやら音の正体はここで間違いがないらしい。


さらに近づきよく観察する。


「ATM?」


大河のつぶやきに俺が目を細める。

確かにそれはコンビニとかにおいてあるATMのまんまそれだった。

側面には7の文字がついている。


「清々しいほどの火事場泥棒だな」


ATMを数人の大人で囲み棒で叩く、完全に言い逃れのできない状況だ。


まー、どうこうしようなんて思わないけどね。


「かかわらないようにしよ」


そういってくるりと振り返る。すると


「あれ、君たちうちのチームの人じゃないよね」


見ず知らずのちょいぽちゃ中年男性がそこには立っていた。

しかも話しかけてきた。


「あ、こんにちわー」


挨拶しながらも俺の思考がものすごいスピードで回転する。

明らかにさっきの火事場泥棒メンバーの1人だ、

俺達が現場をバッチリ見ていたと知られればただでは済まないだろう。


「あ、どうもどうも」


そう挨拶を返すちょいぽちゃ。


「あれは何をやってるんですか?」


気づいていない体でそう質問する。これでちょいぽちゃが誤魔化してくれれば完璧なのだが。


「あー、あれはねトレジャーハントだよ」


いいように言ったな。誤魔化すってそうゆう感じのを望んでたわけじゃないんだけど。


「そうなんですね、お宝みつかるといいですね」


俺がそう返す。見つかるも何もほぼ確実に入っているだろーけど。


「はっは、そうだね。それより君たちは渡りかい?」


・・・・・・・?


何言ってんだ?名前の話か?

だとしたら鈴木や佐藤ならまだしも、しょっぱな渡りはさすがにチャレンジャーすぎるだろちょいぽちゃ。


「いえ、俺は倉敷大河っていいます」


大河が会話に入ってきて怪しさマックスのちょいぽちゃにフルネームで自己紹介を始める。


「僕は、平塚っていいます」


しぶしぶながら俺も名字だけ名乗る。


「・・・・?いや、・・・あ、・・・え、あれ?・・・あ、ああ僕は田島っていいます」


なんだこの反応?

ちょいぽちゃこと田島さんことちょいぽちゃは自己紹介後もあれー?と首をかしげている。


「あ、あのさ君たちはどこから来たの?」


「葛西にある公園から来ました」


「葛西の公園?そんなとこにコロニーがあるなんて聞いたことないけど・・」


コロニー?何言ってんだこのちょいぽちゃ


「もう少し詳しく教えてくれないか?」


そう聞かれ隕石が落ちてから俺達が経験したことをありのままに話した。

するとちょいぽちゃの表情がだいぶ序盤で驚愕に変わった。


「まって、まって、てことは君たちは昨日目が覚めたってことだよね?」


そこで引っかかるなら一番最初で話止めとけよちょいぽちゃ


「そうっす」


大河が返す。


「・・・・落ち着いて聞いてほしいんだけどね、僕、いや僕を含め少なくても

僕が知る人全員、多少の前後はあれど大体2か月前に目が覚めたんだよ」


「「えっ?」」


大河と俺の声が一致する。


いや、思い返せば辻褄があうことばかりだ。

周りに人がいなかったこと、ホームセンターの食料品がほぼほぼ無くなっていたこと、

そして昨夜の光に今のちょいぽちゃとの会話の行き違い。


でも、どうして俺らだけ・・・・?


オオォーーーーー!


考え込んでいた俺の耳に歓声が聞こえてくる。


「お、どうやら宝箱が開いたみたいだね、・・・僕たちこの後昼ごはんになると思うんだけど良かったら一緒にどうかな」


「お願いします」


ちょいぽちゃこと田島さんの誘いに大河が即答する。


お腹もすいてきたし山ほど聞きたいことあるからいいんだけど。

それにどうやら悪い人たちではなさそうだしな。

・・・多分。まー、なんかあったら大河の疾風走りで逃げればいいや。


そう考え、俺達は歩き出した田島さんの後をついていくのであった。

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