第5話


「だいぶ荒れてるな」


ホームセンターの中へと足を踏み入れ館内を見回した俺はそうつぶやいた。

商品棚は倒れ、商品が床に散らばり全体的にだいぶ埃がたまっている。


「うわ、なんかきもいのいるぞ」


大河が言う


「それはスライムだな」


「なんか想像と違うな」


そこには直径30センチほどのゼリー状の物体がウニウニと動いていた。

まるで海辺に打ち上げられたクラゲのようなそれはこちらに向かってくる意思はなく、もぞもぞと何かを食べている。


「こいつプラスチック食ってるぞ」


スライムを覗き込んで確認した大河が言う。


「まじか」


言いながら俺ものぞき込む、すると確かにスナック菓子の袋のようなものを食べていた。


「お腹壊さないのかな」


「食ってるってことは問題ないんだろ、こいつは人類にとって貴重な存在だな」


大河の問いに俺がそう答える。

きちんと体内で分解できているのであればプラスチック問題を一気に解決してくれるだろう。


っと、こんなことはどうだっていいんだった。


俺はスライムから視線を逸らし体の周りに3つほど光る球体を発生させる。

これは、ライトと呼ばれる生活魔法でその名の通り周囲を明るく照らしてくれる。


館内は窓が少なく日の光が入りずらいため全体的に暗いのだ。


「よし、じゃあさっくそくショッピングと行きますか」


「おー、全部買い占めてやろうぜ」


そう会話をすると早速動き出した。


まずは、移動用に大き目なリュックを買った、大河は柄のうるさいバッグを選んでいた。


その後、アウトドアグッズコーナーでキャンプで使うよなグッズを片っ端からバッグに詰め込んだ。

大河は1番高そうなものを選んでいた。


そして次に食品コーナーへと足を運ぶ、しかしながらスライムに食べれらたのか、はたまた先客に持っていかれたのかほぼほぼ残っている食品もなく、

いろいろ悩んだ末、俺は1キロの詰め替え用の食塩と砂糖、それとパウチ型の非常食だけバッグに入れた。


他にも残っている調味料類を持っていこうかとも迷ったが、醤油などのボトルを開けるといやな臭いがしたため持っていくのをやめた。

大河はニッコニコしながらに5リットルのウィスキーをうるさいバッグに入れていた。


うん、それはナイスだ。にしてもよく入ったな。


最後に武器を調達する。


これは何が武器になるかわからないので今一度館内を周って決めることにした。


あ、やべ。


回ってる途中ファッションコーナーの前を通り着替えを持っていないことに気づき急遽調達する。

今着ている服も動きやすいようジャージに着替えた。


「あれ、なにこれ」


同じように着替えをしていた大河が鏡を見ながらつぶやいた。


「何が?」


「俺髪の毛赤色になってんだけど」


「あー、目が覚めた後からずっとそうだったぞ」


「そうだったぞって、お前、言えよ・・・」


「いや、そんな変化気にする余裕ないぐらい周りが変化してたからな。・・・まー、似合ってるしいいじゃん」


「うん、・・・たしかにそうだな」


大河もまんざらでもなさそうだ。

大河は元々黒髪だったがなぜだか今は赤色になっていた、まーそんなこと今となってはどうでもいい。

ちなみに俺は黒髪のままだった。


着替え終わった大河はこれまた柄のうるさいジャージに着替えサングラスまでかけていた。


俺が着替え用に何セットか余分に持っていくよう伝えるとバッグの中身を確認しながらしばらく考え込み

最終的にしぶしぶながらバッグからキャンプ用品を取り出し、入れ替えるようにジャージを入れていた。


・・・・・・酒はマストなのね。でも、ナイスだ。


ある程度館内を周った後俺たちは一度小休止に入るため、館内に展示されている椅子に腰を掛けた。

バッグからコップを取り出しヒヤの魔法で水を入れる、これもまた生活魔法の一種で少量の水を生み出す魔法である。


魔法って便利。


「と、言うわけでとりあえず館内を周ってみたけどお気に入りの武器は見つかったか?」


コップの水をチビチビと飲みながら大河に問いかける。


「・・・・あー、あったんだけどよ。その・・なんていうか」


「なんだよ、もったいぶってないで教えろよ」


「いやさ、俺魔法使いになろうと思ってよ」


・・・・・始まったよ。最悪だ。最悪の方向に大河の悪い癖が出ちゃってる。

・・・・・まーいつも最悪の方向に出るんだけど。


「絶対やめた方がいいぞ。お前は頭空っぽにして魔物ぶん殴ってれば無敵なんだから」


「でもよ、できることやってもつまらないだろ?」


はい、もー無理だ。こーなったらもう説得も意味ないって知ってる。長い付き合いだから。


「・・・・ふつうは、それが楽しいってなるんだろうけどな」


「俺、普通じゃねーから。ということで俺に魔法の腕で抜かれないように精々がんばれよ」


こいつ開き直りやがった。だが、今回は俺も驚かせてやろう。


「いや、お前が魔法使いになるなら俺は剣士になるわ」


「・・・は?何言ってんの?」


ほら、動揺してる動揺してる。


「だから、俺は剣士になるって」


「剣士ってあの、海外ドラマなんかで見る剣一本で勇猛果敢に戦うあの剣士か?」


「そう、その剣士」


「・・・・あのな、お前みたいなただでさえ運動神経が天才的に無い人間がさらに

何年も引きこもって生命活動を維持するのでやっとってレベルのやつが剣士なんかなれるわけないだろ」


「言い過ぎ言い過ぎ」


「あ、あぁ・・ごめんつい・・」


びっくりした、思ったより言われて早くも心おれそう


「大体やってみないとわかんないだろ」


「いや、わかりきってるだろ。お前なんか剣持ってたって素手の小学生にも勝てねーだろ」


「言い過ぎ言い過ぎ。え、全然反省してないじゃん・・・・・それにできることやったってつまらないだろ」


「何言ってんだおめー」


「お前が言ったんだろ」


・・・・・・


「本気なんだな?」


しばらくの沈黙の後、大河が聞いてくる


「あ、ああ」


正直言われすぎて発言を撤回したい気持ちもあるけど、今は逆に撤回できない雰囲気になってる。


「よし、じゃあ武器を取りに行こうぜ」


そういい俺たちは頭の中で決めてある武器を取りに行くのであった。

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