第4話



俺は現在、唯一の友達でもあり幼馴染でもある倉敷大河とともに

荒廃した町をぶらぶらと歩きながら情報の擦り合わせを行っている。


「なるほど、つまりあれは宇宙人じゃなくて魔物ってやつだったってことだな」


俺が現状でわかっている情報を大河へ伝えると何度目かにしてようやく納得してくれた。


「そー、だからまた襲ってきた時は倒しちゃっていいからな」


「わかった。そーゆ―ことなら今度はためらいなく殺せそうだ」


こいつは法で縛られなきゃダメなタイプの人間だな。


大河と話していくつかわかったことがある。

まずあの隕石は夢なんかではなかったってことだ、

大河も間違いなく同じものを見たと言っていたので確定だろう。


それと、この町の景色から見て推測するに明らかに俺らを除いて町全体の時間が進んでいる。

まだ俺ら以外の人間に遭遇していないから他の人間がどうなのかはわからないが、

隕石が落ちてくる直前の季節は11月だったのが、今は所々桜が咲いていることを考えると

秋から春と、少なくても半年以上は時間が経過していることになる。


まー恐らく半年なんてものじゃないけどな。


携帯も確認したが充電が無いのか壊れているのか暗い画面のまま全く反応しない。


「でもなんでそんなこと知ってるんだ?」


1人で考え事をしていると大河がそう話かけてきた。


「あー、それなんだがよ、なん」


「あ」


言いかけた言葉が大河の一声に遮られる


見ると大河の見つめる先に魔物がいた。


大きく黒いトカゲ、まるでコモドオオトカゲのようだが長い牙が口から飛び出し

背中には大きなひれがついている。


「あれはバジークだな」


「いやだからなんでわかんだよ」


バジークは俺らを見つけるや否やものすごい勢いでこちらへ駆け寄ってくる。


「いや、こわ!思ったより怖いんだけど!」


かさかさと大きなしっぽを揺らしながら迫ってくるそれは想像も何倍も迫力があって恐怖心をあおる。


いや、しかたないでしょ、いままでそんな体験したことなかったし


「俺にまかせろ」


言いながら大河が俺の前に立つ


やだ、かっこいい。


バジークはもう目の前まで迫っている。


そして____


パンッ!!


「・・・・え??」


大河がバジークにサッカーボールキックをかました。

あまりに美しいフォームは今も俺の目に焼き付いている。


いや、そんなことはどうでもいい。

問題はそのあと、サッカーボールキックを食らったバジークが爆ぜた。


パンって音してたでしょ?


あれ、生き物が爆ぜる音だったみたい。俺も初めて聞いた。

木っ端みじんとかそんな生易しいものじゃない、蹴られた場所がはじけ飛んで無くなった。

現にその場には大きなしっぽしか残ってない。


「まーこんなもんしょ」


「いやいやいや、え?・・・なにしたの今?」


「何って、普通に蹴っ飛ばしただけだよ」


「え、お前普通に蹴っ飛ばしたら生き物爆ぜさせられるの?こわ。・・・

あ、てか待ってさっき死んでたゴブリン達の一部が無くなってたのも・・」


「あー、あいつらもぶん殴ったらこいつとおんなじような感じになったな」


「・・・・前からそんなだったのか?」


「いや、今まで何かを思い切りぶん殴ったことなんかなかったからな・・・」


それもそうだな、もしあったら今頃ニュースになってる。


「ただ、俺身体能力超強化Lv1って言う能力があってよ、もしかしたらこれも関係あるかもしんねーな」


「うん?」


「だから今まで何かをぶん殴ったことなんか」


「いやいや、そこじゃないよ、そこな訳ないだろ。身体能力超強化のとこな」


「あーそっちな、それが目が覚めた後からなんとなくそんなものがあるってわかるんだよ、なんか気持ちわりい感覚なんだけどよ」


「なるほど・・・・お前もか・・・」


「・・・も?」


「いや、さっき話してたろ、魔物だってなんでわかるんだって」


「ああそうそう、なんでお前はいろいろ知ってるんだ?」


「多分だけどさ、俺も能力をがあってなそれのおかげだと思う」


「へー、なんの能力よ」


「博識って能力のLv1らしい」


「博識?」


「そう、まー簡単に言うとものしりって感じかな」


「・・・ものしり・・・、はっはっは、お前らしいな」


大河が馬鹿にしたように笑う


「笑ってろ、残念ながら俺はもう一つ能力を持ってるからな」


ただの負け惜しみからくるでまかせではない、本当にある


「ほー、なんて能力?」


「能力進化Lv6」


「・・・それはどんな能力なんだ?」


「・・・それは、おまえ。・・・・能力が・・進化するんだろ・・。」


「わーーっはっはっはっは、さす、さすが、はは、ものしりだな」


大河が手を叩いて爆笑している


ぶっ飛ばすぞ。と口に出せない自分が情けない。

まーあんなのを見せられた後だからね。仕方ない。


「ないよりはましだろ」


対抗の言葉を何とか絞りだす


「いや俺も2つあるぞ」


「え?あんの?」


俺の切り札があっさり破られる


「ああ、金魔力全吸収Lv4ってやつだ」


「ねー、なんかお前のだけやたら名前長くて強そうじゃない?」


「そうか?まーでも使い道がわからないからな・・・、だれかわかる人いないかな・・」


言いながらちらちらと俺の方を見てくる。


「いや、俺もわからないぞ」


「ものしりおじさんでもだめだったか・・・」


こいつマジで覚えとけよ。


「もういいから行くぞ」


俺が無理やり話を変えて歩き出す。


「おいおい冗談だって、・・てか、さっきからどこ向かってんだ?」


「あれ、言ってなかったっけ?ホームセンターだよ」


「ホームセンター?何しに行くんだ?」


「いや、今のままじゃ何かと不便だからな、武器やらバッグやらを探しに行くんだ」


「なるほど・・・」


崩れている建物も多いが全壊している建物はそうそう見ないのでおそらくホームセンターも無事だと思う


しばらく歩いていると道の先にゴブリンが2匹いるのが見えた。

ゴブリン達はこちらに気が付くとキーと声を出しながら向かってくる。


「なー、今度は俺にやらせてくれないか」


俺が大河に確認する


「いいけど大丈夫なのか?」


「多分大丈夫」


そういうと俺はこちらに走って向かってきているゴブリンに手をかざす


「んー、どこしょっ!!」


すると俺の手のひらからバレーボール大の火の玉が飛び出した。

それが1匹のゴブリンに当たるとみるみるうちに体中に燃え広がりついには全身丸焦げになって倒れた。


「もういっちょ!」


仲間がやられたのを見て狼狽えているゴブリンに次は手のひらから風のカッターのようなものを射出する。


スパンッ!


見事にゴブリンの首に命中したそれはきれいにゴブリンの首をはねて見せた。


「よし」


言いながらくるりと大河へと振り返る。


・・・・・・


そこには無表情のまま固まっている大河が立っていた。


「・・・なんか言えよ」


沈黙に耐えられず俺が声を掛ける


「なに今の」


「魔法」


「まほ、・・・前から使えたのか?」


「そんなわけねーだろ、多分博識のおかげだな」


「なんで博識のおかげで魔法がつかるようになるんだよ」


「なんとなく魔法の使い方がわかるんだよ」


・・・・・・


「・・・俺の能力と交換しね?」


「いや、お前さっきさんざん馬鹿にしてたろ」


「えーー、お前だけ魔法使えてずりーよーー」


駄々をこね始める大河

大の大人の駄々は見ていてつらい。ちなみに大河は身長が190近くある、だから余計につらい。


というか、能力は交換しようと言ってできるものでもない。


「あー、後よ。こんなこともできるぜ」


先ほど風のカッター、通称エアカッターで倒したゴブリンのもとへと歩いていく。

さっきさんざん馬鹿にされたお返しにもう一つ魔法を見せてやる。


「ディグ」


俺がゴブリンの死体に手をかざしながらそうつぶやくと瞬く間にゴブリンの体が光に包まれ

そのままポコポコとまるで光の泡がはじけるように死体が消えていく。

そして、その真上にぶかぶかと何かが空中に浮かび上がる。


それはゴブリンの皮と骨それから肉であった。


そのまましばらくすると、ゴブリンの死体はその皮と骨と肉だけを残し血も残さずに完全に消えてなくなった。


「どうよこれ、すごいだろ」


素材を持ち運べるものがないためそのままスルーして再び歩き出しながら自慢げに大河に語り掛ける。

これは生活魔法の一種で、どんな魔物も簡単に解体してくれる解体魔法である。


「・・・・これは知ってる」


「あ、知ってんだ。」


どうやら知っていたらしい。

なんで知っているんだ?


「てかよ、そーいや俺も魔法つかるぜ」


嘘、まじで?俺のアイデンティティがいきなり崩壊しそうなんですけど


「ちょっと見ててな」


大河はそういうと自分の右手首を左手でつかむ


「うぉぉぉおお!!ファイアァァァッ!!」


ポッ。


すると右手のひらに今にも消え入りそうなほどわずかな火がともる。

ライターの火よりも小さいその火は、次の瞬間には風に吹かれて消えてしまった。


・・・・


今日何度目かの沈黙


「・・・お前それ生活魔法の着火な」


「いや、ファイアーだろ」


強引に押し通そうとする大河。


なるほど、でもこれで大体理解できた。

恐らく魔法に関する能力がなくても生活魔法ならある程度使うことができるのだろう

だからさっきのディグも知っていたのだ。


「お、あれか」


大河の言葉を無視しそんなことを考えていると大河が今度は大きな建物を指さしながら言った


「やっと着いたな」


その先に見えるのは大きなホームセンター、

相変わらずツタには覆われているもののとりあえず見た限りでは崩落もしてそうになく一安心だ


「じゃーとりあえず入りますか」


俺はそういうとホームセンタ―の入り口へ一直線に向かうのだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る