第2話
俺らは公園のベンチに座り缶酎ハイを飲んでいた。
あの後警察が来て軽い事情聴取と連絡先を聞かれ、店から追い出された
お会計はいらないらしい。なんというか複雑・・・・
「お前明日も仕事だろ、早く帰れよ」
俺が何度目かの帰りたいアピールを大河にする
「帰ったってどうせ寝れねーよ、あんなもん見ちまったんだから」
確かにそれはそう、だけどここにいるのも怖い。
だってあの後犯人逃げたんだもの。
あまりにも非現実的な現状が理解できず全員その場で固まってしまった
そしてその隙をつくように犯人はすぐに店から逃げ出していった。
もっというと今も犯人は捕まっていない可能性が高い
その証拠にさっきからパトカーのサイレンがあっちこっちから聞こえるし
「いやお前、犯人がここら辺に隠れてて俺らのこと襲いに来たらどうすんだよ」
「そしたら俺が返り討ちにするから大丈夫だろ」
「確かに」
一瞬で納得した。
こいつがいれば確実に安全だ、むしろ家に一人でいるよりもずっと安心できるわ
やっぱ朝まで付き合ってもらおう。
「でもよう、あのおっさんもちょっとかわいそうだったよな」
大河が言う
「足かけられたんだっけか」
「そうそう、多分いじめかなんかにあってたんだろーよ。いくつになってもあるもんなんだな」
「年は関係ないでしょきっと、むしろ仕事上だと立場や責任がある分タチ悪そうだしな。まー学生の判断力の欠けたいじめもえぐいけどな」
ついつい嫌なことを思いだしてしまった
「でもよ俺もよう、おっさんの気持ちわからなくもねーよ」
大河が2本目の缶酎ハイをあけながら言う
「いじめられてたのか?」
「いや、そうじゃねーよ。むかつく相手がいるってことだよ、・・・さすがに殺したいとまでは思わないけどな」
「あーな、まーわかるわ。・・・なんか世の中ってそんなんばっかだよな」
・・・・・・・
少しの間沈黙が流れる
「あーあ、明日仕事行くのめんどくせー」
大河が突然叫ぶ、こいつだいぶ酔っぱらってるな
「明日ぐらい休めないのか?ショッキングな場面に出くわしてしばらく外に出れそうにないですとか言い訳つけて」
「無理に決まってんだろ、俺がそれを言って信じてもらえると思うか?」
「無理だな」
「即答かよ、てかお前は明日仕事ないのか?」
「俺は自営業だからな、いつでも休める」
「いいなー自営業、どうせお前のことだからコスいことして稼いでんだろーな」
「・・・・まーそーな」
・・・確かに胸を張って言えるような稼ぎ方はしてないが面と向かって言われるとちょっと傷つくな
「くっそー、会社の上に隕石でも落ちてきて会社潰れねーかな」
「そしたらお前ニートだぞ」
「もういいよいっそニートで」
「なら普通にやめろよ」
まー実際気持ちは少しわかる。
不謹慎だが隕石でもなんでもいいから今の社会が崩壊寸前にならないかなって時々思うことがある。
好きでも無いことを毎日繰り返すこの日常を一瞬で破壊するような出来事でもあれば、
またみんなゼロからよーいどんでスタートすれば今度は俺も輝けるのかもしれないなんて
そんな都合よくいくわけなってわかってはいるけど考えてしまうのだから仕方ない。
「帰るか・・・」
大河が小さくつぶやく
「あれ、帰るのか?」
朝まで保護してもらうコースで考えてたんだけど。
「あー、駄々こねてても仕方ないからな」
「結局仕事にはいくのね」
「隕石落ちてきたら別だけどな」
「お前の会社休めなさすぎるだろ」
「もーいいんだよ、俺はこのまま働きつぶされてぼろ雑巾みたいになって死んでくんだから」
大河がベンチから立ち会がリ空を見上げながら言う
「お前でも卑屈になることあるんだな」
俺も立ち上がり最後に忘れ物がないか携帯のライトで足元を確認する
「行くか」
忘れ物が無いことを確認した俺は駅の方に向けて歩き出す。
といってももう終電も無いだろうけどね。
タクシーで帰るか・・・最悪ホテル泊ろ
あれ?大河がいない
くるりと後ろを振り返り確認する。
「おい、大河なにやってんだよ」
すると大河は上を見上げたまま固まっていた。
俺もつられるようにして上を見上げる。
・・・・・・・・
目を、いや脳を疑った。
そこには空を埋めるほど巨大な隕石があった。
ん・・?
ゆっくりと大河の方に向き直る。
すると大河もこちらへゆっくりと顔を向ける。
目が合うと再び2人して空を見上げる。
間違いなく隕石だ、それもとてつもなく大きい。
社会が崩壊とかのレベルじゃない。確実に地球が滅びる。そのレベルのやつ。
段々と周囲が明るくなっていく、
そして昼と見紛うほどに明るくなると。
パッ視界が白一色に染まるのと同時に俺は意識を手放した。
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