誰か頼む
ゴールのようなものがあると思っていた。
ゴールじゃない。
ゴールのようなものだ。
例えば、高校の卒業式、大学の入学式に卒業式、それに入社式も。
一つの区切り。
その区切りさえ終えれば、人生はどうにかなると思っていた。
けど、それでは終わらない。
高校が終われば、大学に進学したり、社会人として働いたり、どちらも途中で辞めて、家に引きこもるかもしれない。
そのどれをとっても、その後には人生が続く。
まるで安全な道などなく、これさえやっておけばいいなんてことはない。
花の蜜を集めていれば生活出来るミツバチは、花の蜜を集めること以外はしらない。
遊びも勉強も、不公平も理不尽も、何もかも知らない。
ただ、生物の本能に従って、生き物のルールに従って、花の蜜を集める。
ならば、人間も社会のルールにそって動こうではないか。
高校に行き、大学に行き、会社勤めをする。
そうすれば、人並みの人生が送れるらしい。
まるでRPGの攻略チャートのような簡単な筋書き。
そこに努力や失望はなく、人生ゲームの駒を動かすように自分が動けると勘違いしてしまっている。
勘違いしたまま動きたかった。
機械のように、決められたことだけをやっていれば過ごせるようになりたかった。
けど無理だ。
一つ道を踏み外し、少しでもずれてしまえば、攻略チャートは通用しない。
宝箱を逃したからと言って戻れないのだ。
セーブもロードも出来ず、勝手にステージが動き始める。横スクロールアクションも真っ青なスピードで進んでいく。
黄色いボールのついた棒に飛びつけばゴールになどならない。姫を救うという壮大な使命もない。
何をすれば、この人生をクリアできる。
何をしていれば、この人生を攻略できる。
魔王に効く特別性の剣をどこで作ればいい。
誰か、誰でもいいから教えてくれ。
そして、一緒にこの人生を攻略してくれ。
頼む。お願いだ。
頼む。
幸ある風に 虚空 @takeshun00
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