第7話帰還

 魔法使いはうずくまりながらゆっくりと瞼を開き、朧げな視界を腕で擦る。ふと魔法使いは、自身の体を見る。衣服は全身が土埃で汚れ、所々には小枝や葉っぱが付着していた。魔法使いは少し落胆して頭に手を掛ける。すると、手には葉っぱがあり髪に絡まっている。魔法使いは手で頭についた木々を振り払い重い腰を上げる。辺りはまだ少し薄暗かった。魔法使いは手元の魔導書を取り出した。

 「え?」

 魔法使いの動揺の声が漏れる。手にあるはずの魔導書は、ページ一つ一つが引き裂かれそして丸焦げになっていた。これではろくに魔法が発動出来ないと魔法使いは思い魔導書をしまった。辺りは戦っていた時ほどの緊迫感はなくなり少しばかりの静けさが漂っていた。魔法使いは本が使えないので自力で不器用ながら魔力探知をする。これでも魔法使いはある程度の魔法は使えるように魔導書が使えない保険として数枚魔法が秘められたページを小さく丸めて飲み込んでいた。するとバケモノエルフに連れ去られる前の森だということが分かった。魔法使いはホッとしてその場で膝から崩れ落ちる。

 「あああ、やっと帰れる」

 魔法使いは元の森に帰れたことにちょっぴり安堵し。一呼吸つく間も無く次に一刻も早くまだこの森で戦っている二人の少女たちを探しに行く。立ちあがろうと膝に手をかけた時、躓いたように斜めに倒れ込む。なんと魔法使いの体はもはや魔法使いの意思では簡単に動かせない程に壊れていた。このままでは探す以前に自分が野垂れ死んでしまうと思い魔法使いは自分の体に魔力を強引に流し最後の力を振り絞ってトボトボ歩ける程度に強化をした。

 「早く魔力が切れる前にあの子達を見つけ出さないと」

 魔法使いはぎこちない足取りで暗い森の奥に歩みを進める。小枝を踏み締め一歩一歩足を前に出す。視界は霞み明らかに捜索は困難であると理解していても魔法使いは決して諦めなかった。足場も徐々に不安定になる。もとより道など作られていない森であった。そんな道が続くなか魔法使いは足元に草木が引っかかるのを感じながら歩む。

「あ、、がぁ、またか、、」

 途中身に覚えの無い記憶が魔法使いの頭を何度もよぎる。涼しい野原、かけっこで遊ぶ二人の少年少女そんな記憶が浮かぶ。一つ一つ思い出すごとに耳鳴りや頭痛が魔法使いを襲う。悶えながら魔法使いは傾斜が少しある地面に倒れ込む。その時今まで流していた魔力が切れてしまった。魔法使いはここまでだと悟り歯を食い縛りながら悔しさを噛み締める。でも諦めきれず魔法使いはもうこれ以上動けない体を立たせようと少し体浮かせては倒れるを何度も繰り返した。すると何処からともなく四つ足の動物が近づいてくる音がしてきた。魔法使いは首を曲げ目をやる遠くから暗い森に光を灯す何者かの姿が魔法使いの目に入った。見えると同時にそれが鹿の姿であると言うこにも魔法使いは気づいた。そしてその神々しい鹿は魔法使いの所に来てそっと耳元に軽く

 「妖精の子達と再会させてあげる」

 そう囁いた。それと同時に魔法使いはまたも意識が無くなった。

 

 

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