第4話 変わりゆく想い
あのような1件があって以来、チカと僕は少しずつ疎遠になっているような気がしていた。
チカが喋りかけて来ることも減っているような気がする。だんだん部活にも顔を出さなくなってきた。
そんなにチカのことを頭の隅で気にかけながら
僕は黒崎先輩との日々を満喫していた。
正直悪い気はしていなかった。
僕は幼い頃からチカと何をするにも一緒で、
ほかの女の子と関わることがほとんどなかったのだ。今思えばチカが居たせいで僕に友だちが少なかったのでは、とも思えてくる。
だがそれでも想いを寄せている女の子だ。
こんな考えは良くないと振り切り、
日々を生きている。
そんな事を考えながら黒崎先輩と帰っていると
黒崎先輩が「ハクくんほかの女の子のこと考えてたでしょー!」と微笑みながら冗談を言う。
本当のことだったため僕は少し躊躇った。
そんな僕を見て黒崎先輩の顔から
微笑みが消えた。
「え?本当に考えてたの?ねぇ、なんで黙るの?ハクくんは私の事だけ考えてればいいんだよ?なんで私という存在が隣に居ながらほかの女のこと考えてるの?」
またこれだ
黒崎先輩はどうやら僕を見て一目惚れしたらしく、大人しい性格から恋愛経験が少なく、
初めて会った時や、一緒に帰るに連れ、距離を縮めても全てを許してくれる。僕への想いが歪んでいたらしい。いわゆるメンヘラと言うやつだ。
僕はそんな先輩を愛しているフリをしていた。
いつでも利用できそうな馬鹿な女だったからだ
この様子なら人を56せと言っても言われた通りに行動するだろう。
僕は先輩からの愛情表現を全て受け止めた、
手を繋いだり、腕を組んだり、ハグやキスまで
求められたから応えた。たまに弁当を作ってくるがそれも美味しいと文句も言わずに食べる。
そんな僕を見て、先輩も僕と付き合っていると思い込んでいるようだ。
一方こんなことは止めるだろうチカはというと
ずっと学校を休んでいる。
どうやら精神的に不安定なようだ。
面会すら拒んでいると噂を聞いた。
多少は心配だが、チカのことだからと僕はそこまで気に止めていなかった。
とある日の帰り道、僕はいつも通り先輩と帰っていると何か違う視線を感じる。
恐らくチカだろう。
僕の予想は当たっていた。
僕は早々に先輩と別れ、家の方へと歩いていく。
家の前に誰かいる。
チカだ。
髪も伸び、目つきも心做しか違うような…
そんな変わり果てたチカを見て僕が言う。
「久しぶり、ずっと後をつけていたようだけど、今度は待ち伏せかい?何か用があるなら声をかけてくれればいいのに」
チカが少し下を向いた
「久しぶり…先輩と…仲いいん…だね」
僕になぜこんな言葉をかけたのかだいたい予想はついた。
続けてチカが言う。
「ハクは、ハクには私が居たのに…なんであんな女と一緒になるの…」
僕は聞こえていたが聞こえないフリをした。
「なんだって?僕だって忙しいんだ家に帰ってもいいかな?」
チカはさらに下を向いてさっきよりも小さな声で「そ、そうだよね、ごめんね…」と言って
僕の家の隣にある自分の家に帰っていった。
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