第3話 変貌

背後からの小さな声に気づいた僕達2人は、

思わず振り返った。


そこには背が小さく髪の長い女の子が立っていた。彼女は少し恥ずかしそうに僕達に話しかけてきた。

「あ、あの新入部員の子ですよね…?」

不思議と怯えた子犬を連想させるような彼女は

続けて、「私、2年の黒崎ミオナって言います…」と言った。


僕達は彼女が2年生だという事実に驚きを隠せないまま、要件を尋ねた。

「どうかしたんですか?」

すると彼女は上目遣いでおどおどしながらこう聞いた。

「ぁ、あの、お2人は…お付き合いをしているんでしょうか……」


僕はドキッとした。


そんな中、間髪を入れずチカが答えた。

「違いますよー、幼なじみで小さい頃からの腐れ縁なだけです。小学校の時から同じクラスなんですよ!」

人の想いを考えずに放ったチカの一言が、僕の心にグサッと突き刺さった。心では理解してるとはいえ実際に言われるとダメージが大きい…


チカの一言を聞き、先輩は少し明るい表情になった気がした。

すると先輩は、「じゃあ、これからお家に帰る予定でしたら、一緒に帰っても…いいでしょうか…」とモジモジしながら聞いてくる。


なんだこの可愛い生物は、気を抜いたら思わず抱きしめてしまうのではないか、と思いながら己の理性がそんな欲望を抑えてくれた。


もちろん僕達2人の答えはこうだ

「もちろん!」


先輩の表情が一気に笑顔になる

「やったぁ!エヘヘ、新しい部員の子と仲良くなれるか実は心配だったんだー!」


何かから解き放たれたように先輩が話し出す。


先輩と僕達3人は学校生活や部活について話したり本について話したりして帰り道を歩いていく。


「ハクくんとチカちゃんは普段どんな本を読むの?私は恋愛小説とかライトノベルだったり、マンガも読んだりしてるよ!」


僕は本を読むがチカはあまり本を読むタイプでは無いことを知っている僕はどう答えるのか気になりながらも答えた。

「僕はそうだなぁ、太宰治作品が好きだけど、色んな人の作品も読むかな、でもライトノベルも好きだしマンガも好きだなぁ」


チカは「私はあんまり本は得意じゃないけどハクと一緒なら本も楽しく読めるかなって思って入ったんだ!」


先輩はチカの発言を聞いて少し顔を曇らせた気がしたが、すぐにこう答えた。


「そうなんだ!2人とも仲良しなんだね!

あらためて入ってくれてありがとう!これから仲良くしよーね!」


そうして僕達3人は親交を深めていき、3人で帰るのが当たり前になっていた。それと同時に、先輩と僕との距離が物理的にも近くなっていった。最初は3人で手を繋いで帰ったりしていたが

だんだんと僕とだけ手を繋いだり、腕組みをしたりとかかなり距離が近くなっていた。


そんなある日、部活に行く前にチカに屋上へと呼ばれた。

僕が屋上へ行くとチカが待っていた。

帰りのHRは同じタイミングで終わったはずなのに早いなと思いながらもチカに声をかけた。

「ごめん、帰りの用意が遅くなって」

チカが「大丈夫よ、私もさっき来たばかり」

と答えた。

僕は早速呼び出された本題を聞いた。

「どうしたの?こんなとこに呼び出して、早く部活にいこうよ、先輩が心配するよ?」


チカは少しうつむいたが話し出した。

「最近、先輩との距離近くない?」

僕は自覚はしていたがあえて分からないふりをした。「なんのこと?いつも通りじゃない?」


チカは少し悲しそうだった。

「いつも通りなんかじゃないよ。」

声が震えているのがわかった。

「最初は手を繋いだりしてるだけだったから何も言わなかったけど、最近はどう?腕組みしたりハクに抱きついたりしてる…」


「そんなことないよ、先輩なりに僕達と仲良くなろうとしてるだけだよ。」

僕は戸惑いながらもこんな言葉しか浮かばなかった。

続けて僕は言う

「なんでいきなりそんなこと聞くんだよ。僕達は別に付き合ってるわけでもないだろ?それに先輩も悪気がある訳じゃないと思うよ?」


チカの目には涙が浮かんでいるように見えるがいつもと違う笑顔を浮かべながら

「そっか、そ、そうだよね!先輩も仲良くなりたいだけだよね!ごめんね、変な話で呼び出しちゃって、早く部活に行こ!」

と元気に答え足早に図書室へと向かった。


僕も早く行かなくては。


そう思いながら図書室へとおもむき、いつも通りの時間を過ごし、いつも通り僕と先輩とチカの3人で帰った。


チカの発言が頭をよぎるができる限り自然体を

装い、今日という日を終えた








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