レッドの帰還 前編
前回までのオカメンジャー
エアコンが壊れたオカメンジャーの基地。
それを直すため、金を稼ぎに外へ出たレッド。
無事にエアコンも直り、基地に平和が訪れた……筈だったのだが。
*****
基地に平和が戻って三日。
いつもと同じ、平穏な日々。
オカメってる仲間たちも相変わらずだ。
しかし、たったひとり、そうでない人物がいた――。
(なんでだ?)
レッドは麻袋の中で、自分の身に起きていることを思い返してみる。
仕事からの帰り道、急に横付けしてきた黒いバン。中から現れた数人の黒づくめの男に、何故か麻袋を被せられ、車に乗せられたのだ。
(誘拐? なんで? 俺、別に身代金とか取れるような身分でもないし、特殊能力あるわけでもないし、連れ去る理由が全く持って思い当たらないんだけど)
誰かの恨みを買った?
知らぬ間に、なにかしでかしてしまったのだろうか?
「おい、本当にこいつが?」
麻袋越しに、誰かの声が聞こえる。
「そのはずです」
一体誰が? なんのために?
ここで一つの仮説を立てる。
もしかしたら、ヒョットコーンの残党という可能性はないだろうか?
あれだけの死闘を乗り越え、すべて終わったつもりでいた自分。しかしまだその一派が残っていたとしたら……?
(基地が危ない!?)
高鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸をする。
まずはこいつらの目的を知らねばなるまい。
どのくらい走っただろう。ゆっくりと車が止まり、麻袋のまま運ばれる。
どさりと降ろされ、足音が遠ざかっていく。
(え? 置いて行かれた??)
安全を確認し、麻袋を破る。周りを見ると、どうやら四角い箱……大きさからして、コンテナのようだ。
「なんでコンテナ……?」
わけもわからぬまま、聞こえてくるのは……霧笛?
「……って、船ぇぇぇぇぇ!?」
*****
コンテナを下ろされた先は、見知らぬ土地。一体どこなんだ?
「……大豆?」
目の前には大量の大豆。
これで、納豆を作れと言われたのだ。なんで?
「お前は納豆のエキスパートだと聞いた。オカメキング」
「は? オカメキング??」
「オカメを愛し、オカメに愛された男。それが、オカメキング……」
いやね、確かにオカメには愛されてるかもしれないけどさ。それと納豆は、別じゃないか?
「いいから、早く作れ!」
黒づくめの男に連れ込まれたのは謎の施設。そこで納豆を作れというのだ。
「これがOKMTX(オカメトキシン)
え、やだ。普通に、やだ。
しかし、逃亡しようにも見張りだらけで逃げ出せない。ああ、家族が心配してるに違いない。どうにかしてここを出たい!
考えた結果、謎の薬品OKMTX(オカメトキシン)
黒づくめの男に言われるがまま、納豆を作った。作り方はYou Tubeで見た通りだ。なんとか完成にこぎつけ、ご丁寧にレシピまで書いておく。もちろん、あの怪しい薬は混ぜていない。どうなるかわからないような怪しいものを納豆に入れることなど、納豆を愛するすべての人を裏切る行為だ!
ちょっと自分でもよくわからないが、そんなわけでよくわからん施設で、納豆を作り上げたのだ。
*****
黒づくめの男が、出来上がった納豆をチェックしに来た。ねば~り、ねば~り、箸でかき混ぜ、出来栄えをチェックする。
「なるほど、さすがオカメに愛された男……」
多分褒めている。
だが、満足した後、用なしになった自分をどうするつもりか、それはわからない。
「これでお前も、用なしだ」
ほらね!?
やっぱりじゃん!
わっかりやすい悪者の捨て台詞じゃん!
「この納豆を、どうする気だ!」
聞いてやったね。消されるかもしれないんだし!
「聞きたいか? いいだろう。冥途の土産に教えてやる。これはな……、」
「これは……?」
「インバウンドだ」
「……」
「……」
「……は?」
確かに、コロナが明けてこっち、外国からの観光客も多い。インバウンドだと言われると、なんだか納得してしまいそうな自分もいる。納豆と納得ってなんか似てる。あ、関係なかった。
「OKMTX(オカメトキシン)
「……チョットイミガワカラナイ」
「ええい! お前には関係ない! 連れて行け!」
黒づくめから黒づくめに引き渡され、狭い部屋に閉じ込められる。逃げるなら今しかない! 隠し持っていたOKMTX(オカメトキシン)
~後編に続く~
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