レッドの帰還 後編

 目を閉じれば思い出す……。


 ああ、そうだ、自分には家族がいるんだ。

 優しい嫁と、可愛い子供が。

 仕事は忙しいし、正直クソだなって思うこともあるけど、頑張れているのは、家族がいるから……。

 冷蔵庫にはオカメ納豆と、オカメ豆腐。

 その隣にあるのはもちろん、オタフクソース……。


 ああそうさ、俺は幸せだった。

 誰が何と言おうとも、だ。


 そんなある朝、娘が言ったのさ。

『パパ、私ね、最近オカメに夢中なの!!』


*****


「ハッ! ……今のは……夢?」

 一気に目が覚める。


 体中に痛みを感じる。OKMTX(オカメトキシン)7102ナットーフを口にした副作用なのだろうか。そもそもこのOKMTX(オカメトキシン)|7102とは、大豆製品の虜にさせるための薬だと、黒ずくめの男は言っていたが……、


「……だとすれば、別に体に毒ではないな??」

 苦しくなることもなければ、もちろん体が縮むこともない。しかも既に納豆好きな自分にとっては、あってないような効果だった。

 だが、待てよ? それではここを脱出するチャンスが生まれないってことじゃないか!!


 監禁された部屋の中、慌てて手錠を外す。何度も警察に捕まっていた経験から、縄抜けは得意になっていたのだ。何故だか急に万吉さんを思い出した。ああ、元気かなぁ。


「よし、行こうっ」

 思えば遠くへきたもんだ。

 ここがどこかは知らないが、まさか船に乗せられ運ばれるとは……。一体どこの国にいるのか、と外に出てみれば、施設の前にある道路標識は、日本語。

「……あれ?」

 拉致られた場所から船に乗せられ、運ばれた先も……日本??

 しかも秋田じゃん!


 秋田にある納豆の会社が納豆メーカーNo1であるおかめ納豆の秘密を知ろうとオカメに愛された男……つまり自分を拉致し納豆を作らせた、と?

 はぁ? なにそれ意味わかんない!

 わからんが、とにかく今は、黒づくめの男たちに消される前に、この場から立ち去るしかない。

 秋田からオカメンジャー基地まで、どうやって帰ろう……。新幹線に乗るために単発でバイトしなきゃじゃね? なんでここまで来てまた働かなきゃならんのか……。


 なんだか最近働き詰めな気がする。

 あっちに行って仕事して、こっちに行って仕事して。

 ねぇ、これって意味ありますかね?

 企業戦士は戦うのみってか?

 さすがにやってられない。

 疲れた……。

 もう疲れたよ、パトラッシュ…………、


「ネリちゃんっ、それ頭に被っちゃ駄目だってば!」

「だってカッコいいネリ~!」

「それはレッドのおパンツでしょうっ? おろしたてとはいえ、やめなさいー!」

「きゃははは、やめなぁい!」


 耳元で、何やら騒がしい声が聞こえてくる。バタバタと走り回る音と、それを追いかける足音……?


 もぎゅ


「ぐえっ」


 カエルが潰れたみたいな声を出したのが自分だと気付くまで、数秒。自分を踏んでいったのが、赤いおパンツを被っているネリーロだと認識するまで、数秒。半身を起こすと、そこが見慣れたオカメンジャーの基地内だということに納得するまで、数分。


「……え? ちょっと待って、もしかして夢落ちなわけ??」

 ハッキリ言ってはいけないことを、ハッキリと言ってしまう。


「レッド、何寝ぼけてるの? あ、そういえばイエローとちゃんと話してよ~? オカメアンソロの話途中で急に寝始めちゃってさぁ、イエロー困ってたんだからっ」

 ネリーロを追いかけていたブラウンが仁王立ちで腰に手を当てる。


「え? あ、へぇ」

「へぇ、ってアンタ……」


「なぁ、今って何年?」

 そうだ。もしこれが夢落ちだというなら、今は2023年のはずなのだ!

 しかし、ブラウンから返された答えは、そんなもんじゃなかった。


「は? 私たちに時間の概念なんかあるわけないじゃない」

 あっけらかんと、言い放つ。


 ……そうか。

 我々はコ〇ンくんでありサ〇エさんであり、ち〇まるこちゃんだったのか!!

「なるほど」

 妙に納得した自分を、この際だから褒めてやりたい。


 ──帰ってきた、などという感覚自体、違っていたのだ。


 我々はいつもここにいる。

 指先ひとつで、いつでも動き出す。

 そこに「時間」という概念など必要ではなくて、きっと誰かがふと思い出した瞬間に、いつだって動き出せるのだ。


「そっかぁ、俺、ずっとここ(基地)にいたんだなぁ」

 しみじみそう言うと、ブラウンが、

「ちょっと、いつまでもゴロゴロしてないで、買い物行ってきてくれない? ネリちゃん、アイス食べたいって! あ、私はハーゲンダッツね!」

 ちゃっかり主張される。

「ネリはレディーボーデン! 抱えて食べる!」

 赤いおパンツを被ったまま、ネリーロが元気に手を挙げた。

「欧米かっ」

 どこからか湧いて出たブラックがネリーロにツッコミを入れる。

「パピコの白!」

 主張も忘れない。黒いくせに白いのを食うのか、とは言わないでおく。


「……へいへい」

 立ち上がり、大きく伸びをする。


 オカメンジャーはここにいる。

 迷惑がられても煙たがられても、オカメはオカメなのだ。

 ネバーエンディングオカメ……

 ネバーネバーオカメ。


「諦めるな。オカメが味方してくれるよ」

オカメ顔のインコが、そう言った気がした──。




*******************


花里さんお帰り記念。

毎度のことながら意味不明ですね。

オカメンジャーは、そういう話なので。( *´艸`)クスクス


ちなみに

>「諦めるな。オカメが味方してくれるよ」

これ、正しくは

「諦めるな。幸運が味方してくれるよ」

というネバーエンディングストーリーの名言です。


気が向いたらまた更新します。

オカメン、最高~!ぃぇ━━ヽ(*゚ω゚)人(゚ω゚*)ノ━━ぃ♪

 

 

 

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