レッド、オカメンジャーを卒業したい!の巻

「思うんですけど!」


 食後、みんなで団欒している最中、急にレッドが立ち上がった。

 ブラウンとネリーロはテレビにくぎ付け、ゴールドは不在。イエローは携帯をいじり、ブラックはハンモックに揺られ微睡んでいる。結果、声を掛けてくれたのは、

「どうしたでゴザル?」

 ブルーだけである。


「あああ、唯一まともなゴールドがいない時に切り出すんじゃなかったかっ」

 勝手に切り出し、勝手に突っ込んでいるレッド。


「っていうか、俺の話聞いてほしいんですけどぉ~? ねぇ、みぃんなぁ?」

 パンパンと手を叩くレッド。全員が面倒くさそうにレッドを見る。


「なんなのよ? そこまで言うからには何かとびっきりいい話か、絶対すべらない話か、それとも、」

「ちょ、ちょ、なんでハードル上げるんですかっ」

 ブラウンの言葉を掻っ攫い、焦るレッド。

「えぇ? 大した話でもないのに注目させたってことぉ?」

「イエロー殿、容赦ないでゴザル…」

 ブルーが震える。


「大した話か、って言われたら、これはとても重要な話かと! なのでちゃんと聞いてくださーい」

 いつになく自信満々な笑顔で、レッド。


「で? なに?」

 腕を組み、レッドを見遣るブラウン。隣でネリーロがブラウンの真似をして腕組みをしている。


「みなさん、気付いてないんじゃないかと思って改めて確認なんですけどね」

「確認? おパンツならレッド以外みんな履いてるよ? あ、ブルーはふんどしだけど」

 ブラックがハンモックを揺らしながら答える。


「パンツの話じゃない! っていうか、俺も履いてる! そうじゃなくってぇ」

「違ったか」

 ブラックが顎に手を当てる。


「あ、わかったネリ!」

 ネリーロが手を挙げた。

「はい、ネリちゃん」

 ブラウンがネリーロを指す。

「デザート何食べたいか、って話ネリ?」


「ああ、そうですねぇ、デザート…じゃない! いいから俺の声に耳を傾けろぉ!」

 駄々っ子のように手をバタバタさせるレッドである。


「まったく世話の焼ける。はいはい、聞いて上げるわよ」

 ブラウンが促すと、レッドは、

「なんか雑なんだよな、扱いが…」

などとぶつぶつ言いながらも話を進めた。


「みんな忘れてるかもしれないから言うけど、俺たち、もう解散してもいいんじゃないかと思うんだ」


 レッドの言葉に、全員が首を傾げる。

「え? なんで?」

 ブラウンが真剣に聞いた。


「だって、第一話でもうヒョットコーン倒してるじゃないですかっ? ってことは、もうオカメンジャーである必要なんてな」


「ああああああああああ!!!!」


 レッドの言葉に被せるように、ブラックが叫んだ。


「うわっ、なにっ?」

 レッドが耳を塞ぐ。

「レッドがご乱心じゃ~~!」

 ブラックの言葉を皮切りに、その場にいる全員があたふたし始める。


「うわぁぁぁ」

「きゃ~~~」

「うひょ~」


「ちょ、ちょちょちょ! なにっ?」

 慌てるレッド。


「…そうネリか、」

 ぽつり、とネリーロが呟く。


「え?」

「レッドは…オカメンジャーであることをやめたいネリか?」

 きゅるん、とした瞳で見つめる。

「うっ…それは…なんていうかほら、普通の人間に戻ってもいいんじゃないかなぁ、って」


「普通?」

 レッドの言葉を遮り、ブラウン。


「あの日…オカメであることを始めたのはあなたなのにね、レッド…」

 かつての出来事を振り返る。


「はぁ? それ、俺じゃないでしょ?」

 あくまでも否定的なレッド。


「…オカメオカメオカメ~」

 小さな声で、口ずさむイエロー。


「オカメ~を~かぶ~ると~」

 続く、ブラック。


「かおがかおがかおが~」

 ブラウンも、混じる。


「へいあんび~じん~」


「オカメオカメオカメ~

 オカメ~を~かっぶぅ~るとぉ~」


 いつしか、全員で大合唱となる。


 そんな歌声を聞き、レッドの頬をひと筋の涙が伝う。


「なんでだ…なんで俺…涙が…」


 そんなレッドの肩に、ポン、と手を置くブラウン。

「もう、答えは出ているじゃない」

「ブラウン…、」


「さ、みんなこの話は終わりよ。何か美味しいデザートでも食べましょうか!」

「そうネリ! 食べるネリ!」

「そうでゴザルな!」

「まったく、レッドったら人騒がせなんだからっ」

 イエローがレッドの腹に肘鉄を食らわせた。

「痛っ、やめてくれよっ」

「あははは」


 今日も基地は平和だった。


 頑張れオカメンジャー!





 ふと、寝る前に思う。


「……いや、待てよ? やっぱりおかしくないっ? は? なんで俺、あんな歌聞いて納得しちゃってんのっ? はぁぁ?!」


 レッドがレッドをやめる日。


 それは、オカメ滅亡の日…なのかもしれない……。

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