人体実験(当社比)

「ん~、おっかしいなぁ」

 イエローが冷蔵庫を覗きながら首を傾げている。そんなイエローに、ブラウンが声を掛けた。


「おはよう。朝からどうしたの?」

「ああ、ブラウン聞いて! 私の実験用のペットボトルがないのよ」

「実験用…って、なんの?」

 途端に警戒モードに入る。イエローの実験など、どう考えても怪しいに決まっている。

「それはさぁ、まだ人体実験してないから何とも言えないんだけど…、」

 モゴモゴと口を濁す。


「おはようございまーす。二人とも、どうしたんです?」

 玄関からランニングを終えて戻ってきたのはレッドである。こう見えて、意識高い系男子なのだ。

「それがさぁ、イエローのペットボトルがなくなった、って」

「へぇ…ゴキュゴキュ…ふぅ~」


「あああああああ!!!!」


 イエローがレッドを指し大声を出す。

「へ?」

「それ、私のペットボトル!!!!」

 まさに今、レッドが飲み干したボトルを指している。

「はぁ? これがイエローのなわけないでしょ。これは俺のですぅ」

 心外だ、とばかりにレッド。


「ねぇイエロー。その液体飲むとどうなるの?」

 ブラウンが真面目な顔で訊ねる。

「えと、その人の本性が出る、って言えばいいのかな。例えばレッドだったら、全裸になってパソコン作業始めたりするはず!」


「……」

「……」


「全裸で?」

 レッドが聞き返す。


「裸族であることは体にいいんだぜ! とか言いながら全裸になってパソコン打ちそう」

「そんなことせんわっ!」

 レッドが全否定する。


「それか、全裸で将棋。金を守ることばかり気を取られ、玉を取られるという例の、あれだ!」

「全裸をやめろ! あと、過去の傷を抉るなよなっ!」

 レッドが抗議する。


「あと、実はレッドって**で××な%#*らしくて、**だってこと×〇△%$!」

「ちょっと、イエロー伏字だらけなんだけど、その話…」

 半笑いでブラウンが突っ込む。


「だから、俺そんなんじゃっ、」


 レッドが慌てふためいていると、奥の扉がバンと放たれ、ネリーロを抱いたブラックが現れる。


「レッドについて語ればいいの? まずレッドは人当たりがよい。吸収率がよい。味は濃い。何でも来い。おパンツを、履かない!」


「何言ってんだ、履いとるわっ」

 必死に抗う。


「時々自分に絶対的な自信を持ち、俺は間違ってない! や、俺はまともだ! などと言った勘違い発言をする一方、本当に自信がある事柄に関しては『え?なんで知ってるの? やはり俺はそれがにじみ出てるのか?』と心の中で思っているに違いないという結果が出ているのだよ、当社比!」


「レッド、面白いネリね」

「言いがかりだ! 俺はそんなっ」

「**で××な%#*らしくて、**だってこと×〇△%$、」

「うわぁぁぁぁぁ! やめろ~~!」

 レッドが顔を赤くして叫ぶ。ブラックがニヤリとほくそ笑んだ。


「ねぇブラック、**で××な%#*ってナニ?」

 ネリーロがきゅるん、とした目で訊ねる。ブラックが答えを口にしかけるも、ブラウンに取り押さえられるブラック。

「アガガ、モゴ…、」

「ネリちゃんに変なこと教えちゃダメ!」


「あ、もしかして私のペットボトル、ブラックが飲んだ?」

「イエローのかどうかは知らんけど冷蔵庫のなら飲んだ」

「ああ、もう~!」

 イエローが頭を抱える。

「あれはその人の本性をさらけ出す効果があるから、普段からさらけ出してる人には意味がないんだってば!」

 イエローの説明を聞いたブラウンがブラックを見、手を叩いた。

「なるほど」


「本性って…、それでそうして俺が全裸でパソコン打ち始めるんだよっ」

 激しく抗議するレッド。

「なんていうか…レッドってそういうとこあるじゃん?」

 イエローがサラッと決定事項のように言う。ブラウンが深く頷き、ネリーロが真似をして頷いた。


「ああ、もう、こいつらを止めるためには、俺は分身でもするしかないのかっ」

 苦し紛れに、そう叫んだ時だった。


「あふぅ、レッドさんもしかして誰かと戦ってますぅ?」

 寝起きの、ゴールドだ。


「分身ですねぇ、ふぁぁぁ、はぁい…オカメの…ご加護を~ムニャ」


 金色の光がレッドを包む。


 見る見る間にレッドが分裂し始め、基地内がレッドで埋め尽くされてゆく。


「ちょ、なにこれ、増えすぎ!」

 ブラウンがテーブルの上に避難しながら叫ぶ。

「うわ、キモッ、自分がいっぱいいるって変な感じっ、っていうかゴールド、もしかして、ちょっと、やだぁん」

「レッド何きもい声出してんの? あ…もしかしてっ」

 イエローが口元を抑える。

「なに? なんなの?」

 ブラウンが訊ねる。イエローが口籠る。


「レッド軍団、おパンツ履いてない~~!」

 元気よくブラックが宣言した。


「ぎゃ~!」

「やめてよ~!」

「ズボン履いててもノーパンってなんか嫌ぁぁ!!」


 阿鼻叫喚。

 地獄絵図。

 修羅場。


 楽しそうなのはネリーロだけである。


「おパンツ? ネリは履いてるネリよ~」




 こうして地球の平和は今日も守られた。

 みんな、楽しいGWを!


 頑張れ、オカメンジャー!

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