レッドの受難
「で、二回に分けてやるほどの話なわけ?」
ブラウンの突っ込みにも動じないブラック。
「そう。ペンチとレンチの違いを聞かれた。で、答えた。『ペンチは拷問に使う道具で、レンチは殺人現場に落ちてる凶器』だと!」
拳を突き上げ、自信満々に言い切るブラックに対し、レッドが呆れた顔で言う。
「はぁ? なにそれ。言っておくけどレンチは両方の使用が出来るよね?」
「うっわ、レッドって案外怖い人だね…、」
ブラウンがドン引く。
「え? 俺、間違ってます? そもそもブラックの答え自体、変でしょ!?」
「ネリ、ゴウモン知らない。ナニ?」
「あら、ネリちゃんはそんなの知らなくていいんですよ?」
ゴールドがネリーロをにそう言った。が、ブラウンが横からキッチリ、説明する。
「あのね、拷問っていうのは、虫歯を抜いたりすることだよ」
ざっくりである。しかも、違う。
「歯?」
「ん~、わかりにくいか。あ、レッド虫歯ない?」
キラッキラの目でレッドを見つめるブラウンに、思わず仰け反るレッド。
「やだ、ちょっとあんた達、なにする気? うっわ、怖い怖い怖い! 俺、虫歯なんかないんで!」
「じゃ、とりあえず甘いものいっぱい食べて虫歯になろっか?」
どこまで本気かわからないブラウンの視線を受け止めきれないレッド。
「ってかさ、これいつまで続ける気? おかしくない? おかしいよね? そもそもこれ書いてるのアイツだろ? これ、俺が喋ってるわけじゃないのにさ、なんか読んでると俺が喋ってるんじゃないかって錯覚しちゃうことがあるんだけど、俺だけ? え? みんなはそういうこと、ないの!? すんごい気持ち悪いんだよね、たまに。そこに自分がいるみたいでさぁ。大体ね、俺、真っ当な一般人だよ? 仕事でシャレオツ銀座を歩くことだってある、意識高い系男子なんだよ? 変態お仮面とかパンツとか、もはや意味不明だしさぁっ、オカメネタだって最初はこんなじゃなかったよね? 納豆とか豆腐とか、平和だったあの頃は何処へ行っちゃったわけ? 『いつものオカメの上から着用できるダブルウェアリングタイプがトレンドの最先端!』ってなんだよ!? 誰だよそういうわけわかんないこと言うやつって! は? 俺じゃん! あああああ、」
崩れ落ちるレッド。
辺りを見渡すと、ブラックがハンモックに寝そべって揺られている。
他のメンバーはいつの間にかいなくなっていた。
「って、なんで誰も聞いてないんだっ!」
地団太を踏む。
「ひとり語りが長すぎだって」
ブラックだけが聞いていたようだ。
「はぁ!? そもそもこれは俺が喋ってるんじゃないのに何で文句言われなきゃならないんだぁぁ!」
「ま、そう言わないの。みんなレッドが好きなんだから」
「騙されるもんかっ」
ぷい、とそっぽを向く。
「素直になりなよ。本当は『こんな自分もありだな、おいしいよな』って、心の片隅で思ってるでしょ?」
「思ってないしっ」
そんな不毛なやり取りをしていると、ブラウンが飛び込んでくる。
「大変! ネリちゃんが警察に連れて行かれた! レッド、助けに行ってあげて!」
「ええ!? ネリーロがっ!?」
さっきまで管巻いていたレッドがシャキッと背筋を伸ばす。
「わかった! 行ってくるっ!」
オカメンジャーレッドは、誰よりも面倒見のいい、愛されキャラなのである。
頑張れレッド。
頑張れ、オカメンジャー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます