オカメのご加護

 オカメネリーロの加入に伴い、秘密基地が吹っ飛んで木端微塵になってしまったオカメンジャーたちは、困った時のゴールド頼み、とばかりオカメゴールドを呼び出した。


「…ってなわけで、ごめんね、ゴールド」

 ブラウンが可愛らしく小首を傾げてお願いポーズをとる。

「まったく、仕方ないですねぇ。でも、これきりですよ? 私の力を便利屋みたいに使っちゃダメです」

 小さい子供に諭すかのように「めっ」と言い、ゴールドが壊れた基地の方に向き直る。


「ごめんなさーい。レッドの教育がなってないからこんなことに…ねぇ?」

 ブラウンが抱いて、同意を求めているのはオカメネリーロである。

「私がいない間にこんな可愛い子が入っていたなんてっ。ネリちゃんよろしくね」

 ゴールドとネリーロが握手を交わす。


「で、レッドとブルーはどこ行ったの?」

 基地は、壊れた残骸を片付けた跡が残されているものの、二人の姿はない。

「あ、帰ってきましたよ?」

 ゴールドが差した先にレッドのおんぼろ車が見えた。


「あれ? みんな来てたんですか?」

 車の窓からレッドが顔を出す。

「なにしてるの?」

 ブラウンの言葉に、レッドがその名の通り顔を真っ赤にして叫んだ。


「なにしてる、じゃないでしょうっ? こんなことになっちゃって、片付け全部押し付けてさぁっ! 片付け大変だったんですからねっ。ブルーは急に置手紙おいてどこか行っちゃうしっ」

「あ、そういえばいないね?」

「なんか、修行の旅に出るって言っていなくなったんです。俺が一体何回ごみ集積場往復してると思ってるんだぁ!」


 わいのわいの言い出したレッドを、ブラウンが宥めた。

「わかったわかった。もう安心していいよ。ゴールド連れてきたから。ね?」

「へ? ゴールド?」

「さ、よろしくね!」

 ブラウンがゴールドに声を掛ける。と、オカメゴールドが、木端微塵になった基地に向かって手をかざす。ポウ、と光の玉が浮かぶと、見る見る間に大きくなっていく。そしてその光が基地全体を包み込む。


「オカメのご加護を…、」


 ゴールドから放たれた光によって、基地が見る見る間に元に戻って行く。

「うわぁ、すごーい!」

「ゴールド、すごいネ」

 ブラウンとネリーロが手を取り合ってはしゃいだ。


「……あああああ、なんだよそれぇぇぇ」

 レッドは、膝から崩れ落ちる。


「ユータ、どした?」

 ネリーロが思わず名前を読んでしまう。

「名前で呼んじゃダメだってば! …じゃなくてさぁっ。なにこれ? え? ゴールドにこんな力があるんだったらさぁ、俺、片付けなんかする必要なくなかったんじゃないんですかっ? え? どうなんです、ブラウン!」

 泣きながらブラウンに詰め寄るレッド。

「……あー…、えへ?」

 笑って誤魔化すブラウン。


「酷すぎるぅぅぅ」


 泣き崩れるレッドの肩を、ネリーロがポン、と叩く。

「レッド、泣くナ。メシ、食うか?」

「あああ、ネリーロぉぉ」

 レッドがネリーロを抱き締めた。


「ま、これで全てが上手くいったわね。とりあえずみんな、中でお茶でもしましょ」

「ネリ、肉ヤク!」

 ネリーロが元気よく手を挙げた。

「あら、ネリちゃんはお料理もするの?」

 ゴールドが訊ねると、

「ネリ、ゼッフル粒子で肉ヤク!」

 口を開きかけたネリーロを全員が止める。


「駄目よ、ネリーロ!」

「ダメダメダメ!」

「あらあら、それは困るわ」

「…ダメ?」

「ゼッフル粒子は敵をやっつけるときだけしか使っちゃダメなのよ!」

 ブラウンが慌てて説明をする。ネリーロがきゅるん、とした顔で頷いた。


「それにしてもピッカピカになってますねぇ」

 レッドが部屋を見渡し、しみじみと言った。


「あれ? そういえばブラックは?」

 ブラウンの質問に、皆が首を傾げる。

「基地が壊れてから見てないですよ。どうせ片付けが嫌で避けてるんでしょ」

 ぷりぷりしながらレッドが言った。

「そっか」


 しかし、噂をすれば…なのである。


 バン!


 唐突にドアが開き、ブラックが血相を変えて部屋に飛び込んでくる。


「ねえねえねえねえ~!!」

「ああ、来ちゃった」

 レッドが頭を抱えた。


「大事な質問がありますっ!」


 改まって、皆の顔を見遣る。

 一同がブラックに集中する。


「ペンチとレンチの違いについて答えなさい、が議題」


「ペンチと、」

「レンチ…ですか?」

「なんじゃそりゃ」


 怪訝な顔をする面々を一通り見つめると、神妙な面持ちで言う。



「次回へ、続く!」

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