オカメン誕生

うり北 うりこ

第0話 オカメン誕生


「あのね、最近またパパが変なの」

「えっ? ゆりパパっていつも変じゃん」

「そうだけど、もっと変なの」


 学校の休み時間。ゆりの真剣な表情に、私は首を傾げた。


「今度は何が変なの?」


 話を聞くと、どうやら昨年末からおかしかったみたい。何でも、最初は冷蔵庫を開けた途端に崩れ落ちたらしい。


「なんで、崩れ落ちたの?」

「わかんない。でもね、目があったって……」

「えっ、何それ怖い」


 もしかしたら、ゆりパパは霊感があるのだろうか。


「それでね、ママが言うには寝言で、はいてますよ。とか、カメとか言うんだって」

「えっ? どういうこと?」


 私の質問にゆりは小さく首を振る。ゆりにもゆりパパの行動は意味不明らしい。


「この間スーパーにパパと行ったら、こんなところにもいたか! って言ったあと笑って動かなくなったの」


 なんだろう。ただのヤバい人に思えてきたんだけど。


「それが最初は節分のコーナーで次はお好み焼きの粉のそば、最後は納豆とお豆腐の前だったの」


 共通点が見つからず、私は首を捻る。


「最近はいつもお風呂に入るとオカメオカメオカメ~♪って楽しそうな歌声がするんだよ」

「……楽しいんならいいんじゃない?」


「うん。だけど、心配だからこっこちゃんに相談したんだ」

「こっこちゃんって、ゆりパパの妹さんだよね?」

「うん。そしたらね、そんなに好きならオカメをプレゼントしてあげたらいいよぉ……って言って、こっこちゃんが注文してくれたんだ」


 なぜ、オカメをプレゼントすることになったのか。一体どこでオカメ好き判定をしたのか、私の理解の範疇を越えたので、ここで私は考えることを放棄した。


「それで、どうなったの?」

「震えてた」

「はい?」

「やはり、逃れられないのか……って言いながら震えてた」


 そう言いきったゆりは遠い目をした。


「あのね。パパ、最近会社にもオカメを持ってってるみたいなの。俺には使命があるとか言いながら」

「使命?」

「うん。オカメンなんだって」

「何それ?」

「わかんない」


 オカメン。謎の言葉を残しながら、授業開始のチャイムが鳴ったので席につく。


 この時の私たちは知らなかったのだ。変態オカメンという人物が現れたことを。また、その正体を──。



──to be continued?



※この物語はフィクションです。実在の人物とは関係ありません。


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