壮大なオフ会②
「はぁぁああああああああ!」
謎の視聴者、ディストリア。
彼女が参戦すると言ったときはどうなるかと思ったが、実際に戦ってしもらうと……なかなかどうして、想像以上の強者だった。
「はっはっは! その程度かね諸君‼」
実に高らかな笑い声をあげながら、襲い掛かる魔物たちを一網打尽にしているのである。
美憂もさすがの腕前で魔物たちを蹂躙しているし、この二人についてはなんの心配もいらないだろう。
いくら弥生が強い魔物ばかりを召喚しているといっても、彼女たちなら対処できるはずだ。
そして問題は……。
「くおっ……!」
シヴァーナの両目から放たれる光線を、郷山は懸命になって避け続けている。
以前の戦闘で、あいつは自慢の防具を失ったばかり。
いまは二軍の装備を身に着けているのか、漆黒龍ゲーテよりも明らかに見劣りする防具で全身を守っている。おそらくシヴァーナの攻撃を一撃でも喰らってしまえば、致命傷は免れないだろう。
美憂とディストリアがちらちら郷山のことを気にかけているが、危なっかしいのには変わりなかった。
それでも。
「ぬぁぁぁぁあああああああ!」
郷山はシヴァーナの隙を見つけるや、果敢に飛び出していった。
そして横一文字に振り払った大剣が、的確にシヴァーナの胴体を捉える。
「ギュアアアアアアアアアア!」
さすがは《攻撃力アップ(特大)》を持っているだけあって、かなりのダメージが通ったようだ。シヴァーナは大きく後方によろめきながら、痛々しい悲鳴をあげる。
――が、それが逆に、敵の怒りを買ってしまったらしい。
「グガァァァァアアアアア‼」
すぐさま体勢を立て直したシヴァーナが、その右手を郷山の全身に打ち付ける。
「ご、郷山!」
俺はいままでのことを忘れて、あいつの名を叫んでいた。
あの攻撃は、もはや見間違えようはずもない。
文句なしのクリーンヒット……あの防具でそんなものを喰らってしまっては、もはや無事では済まないだろう。
「くぁあああああああ!」
大きな衝撃を受けた郷山が、魔法の準備を整えている俺の隣まで吹き飛ばされてきた。
懸念した通り、やはりとんでもないダメージを負ってしまったらしいな。
防具の大部分は無惨に破壊され、そして全身のあちこちからは血が垂れてしまっている。
「く……ぐぐ……」
「お……おい、大丈夫か! さすがに撤退したほうが……」
「い、いや……。大丈夫だ……」
しかし郷山はゆっくり立ち上がると、なんと再びシヴァーナの方向を見据えるではないか。
「こうでもしねぇと、償いの一つにもなりゃしねえ……。おまえは、この痛みをずっと負ってきたんだよな……」
「…………」
「改めて言わせてくれ。――いままで、本当にすまなかった」
「ご、郷山……」
「安心しろ。死ぬにしても、あいつのバリアーを破壊してからにするさ。このあとのことは頼んだぜ……霧島」
郷山は俺に頷きかけると、再びシヴァーナに突進していく。
肉体的にはとっくに限界を迎えているはずなのに、とんでもないスピードだった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ‼」
そのスピードを乗せた強烈な一撃を、シヴァーナに容赦なく見舞う郷山。
文字通り、命を賭けた渾身の攻撃だった。
――パリン。
その決死の覚悟が届いたのか、これまでシヴァーナを覆っていた薄いベールが、大きな破砕音とともに壊れた。
「いまよ筑紫くん! 最後のトドメを‼」
「了解!」
見れば、状況を察したであろうディストリアが郷山を背負い、安全な場所に避難させている。美憂も遠くに移動しているようだし、これならばなんの問題もないだろう。
炎属性、最上級魔法――プロミネンス・エクスプロージョン。
その瞬間、天から舞い降りてきた一筋の火柱がシヴァーナたちを飲み込み――その瞬間、すさまじい大爆発を発生させた。
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