陰キャ、ドラゴンと渡り合う(コメント回複合)

ゆきりあ:あああああああああああ!


バルフ:逃げろ! 早く逃げろ‼


みらい:ミ、ミルちゃん‼


リストリア:そいつは攻撃前の溜め時間が最大の弱点だ‼ 機会を窺って逃げろ!


ムーヴァ:頼む頼む頼む頼む! 誰かミルちゃんを助けてくれ!


破壊神:え、マジ? 死ぬの?


ゆきりあ:駄目だ、こっちのアドバイスが聞こえてない‼


がす:マジで河崎チームより強かったのかよ…


リストリア:明らかに格が違うね。俺が助けにいければ…!


バルフ:誰か、誰か! 誰かミルちゃんを助けてくれっ! じゃないと……‼


みらい:あれ?


ファイド:ん?


リース:誰か来てね?


ゆきりあ:さっきの少年‼


ムーヴァ:来てくれたのか霧島君‼


破壊神:いやいや、おまえが来たところで助けられるわけないだろwww


ディストリア:少年! ミルちゃんを頼んだぞ! 今は君だけが、僕らの救世主だ‼ 僕の強い傘は……いま、君が握っている!


みらい:破壊神って奴黙れ! 素直に応援することもできねえのかよ!


リストリア:待て。霧島ってことは、あの人の子どもか……?


バルフ:誰でもいい! 頼むから俺たちのミルちゃんを助けてくれ!




――――――





 思っていた通りだった。


 ミルは大ピンチに陥っていた。

 緊急モンスターに対して尻餅をついているばかりでなく、戦いの最中に剣を落としてしまったのか、肝心の武器がはるか遠くに転がってしまっている。


 そして。


「ゴォォォォアアアアアアアアア‼」


 対する魔物のほうは、思わず恐怖心を覚えるほどの見てくれだった。


 一言で表現するとすれば、くれないの巨大龍というべきか。おぞましい漆黒に塗られた両翼に、ぬめぬめと激しく動き回る尻尾。鱗の一つ一つが尖っており、触るだけでも傷がつきそうな見た目をしている。


 たしかこいつは――紅龍こうりゅうギルガリアス。


 掲示板ではAランクの魔物として知られているが、こいつは通常個体ではなく緊急モンスターだからな。Sランクに分類されるか……もしくはそれをさらに突き抜けるか。仮に河崎チームが勝てなかったとしても、それはなんら不思議なことではなかった。


「グルァァァァァァァァア!」


 そしてその紅龍は、いままさに、ミルに向けて獰猛な腕を振り下ろそうとしていた。


 対するミルのほうは、恐慌に陥ったまま動く素振りもない。


 このままでは――彼女は鋭利な爪に切り裂かれる。

 それはもはや火を見るより明らかだった。


「くおおおおおおっ!」


 俺は絶叫をあげ、腰に掲げていた剣を右手に取る。


 いくら薬草採取だけを目的にしているとはいっても、いつどんな危険に遭遇するかわからないからな。護身用に一本だけ、俺は常に剣を携帯するようにしていた。


 ガキン‼

 俺の剣と紅龍の爪が激突し、周囲にすさまじい衝突音が鳴った。


「くぅううう……‼」


 駄目だ。

 かろうじて受け止めることには成功したが、そもそもの膂力が違いすぎる。


 このままじゃ押し返され――


――――


戦闘経験につき、新たな《ルール無視》が追加されました。


 ・薬草リポップ制限時間 無視

 ★相手の攻撃力 無視


――――


「……え?」


 ふと視界に浮かび上がってきた謎の文字列に、俺は心底仰天する。


 攻撃力無視?


 どうしてこんな文字が浮かびあがってきたのかは謎だが、背に腹は代えられない。

 このままじゃ俺はもちろん、背後で尻餅をついているミルでさえ死んでしまう。


――スキル発動! 攻撃力無視‼――


 俺が心中でそう唱えた瞬間……なにかが変わった。


 さっきまで途方もなく強く押し込まれていた紅龍の力が、一気に感じられなくなったというべきか。まるで赤子にでも押し込まれているかのごとく、いまはたいして力を感じない。


 これが攻撃力無視……ということか?


「おおおおおおおっ‼」


 絶叫をあげながら、俺は無我夢中で剣を振り払う。


「グオァァァァァァァァァアアア‼」


 すると驚くべきことに、紅龍は悲鳴をあげながら後方に吹き飛んでいくのだった。



―――――――――――


お読みくださいましてありがとうございます!


今回は防御系ですが、これからどんどんやばい《ルール無視》を覚えるようになります!

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