第8話 ギルド
良い武器や宿を得るためにも、金が必要だ。
ところが、ロゼたちの貯蓄はほとんどなかった。
「まずは資金調達から、か」
こうして俺たち一行はギルドの門を叩いた。
「おぉ、賑わってるな」
ギルドにはアニメや映画の中にいるいかにも冒険者というような服装をした人間が大勢いた。
Tシャツにズボンという一般人の服装をしているのは俺だけで、この場に明らかに似つかわしくなかった。
周りの冒険者たちは俺の方を見てくすくすと笑っている。
俺は気にせず受付へ向かう。
「ようこそギルドへ」
受付の女は美人だった。
「仕事の依頼を探している。難易度が低いものはあるか?」
「あー……ロゼ様、ですか……」
女は俺の後ろにいるロゼを見ると突然歯切れの悪い受け答えをした。
「えっと……これはどうですか?」
女が出してきた依頼書を確認する。
依頼主は街外れに住む農家の夫婦で、内容は下級モンスターの討伐だった。
報酬の相場を知らないが、おそらく最低依頼料だろう。
「引き受けよう」
依頼が貰えるだけありがたいのだ。
俺は二つ返事で依頼を受けた。
簡易的な手続きの中で、受付の女が俺を不審な目でちらちらと見ていることに気づいた。
「何か言いたいことがあるのか?」
あからさまな態度に少し腹が立って、語気を強くそう尋ねる。
「……ロゼ様のパーティーに新しく加入されたのですか? ギルドでは見ない顔でしたので」
俺が「そうだ」と答えると、女は気の毒そうな顔をしながら「頑張ってくださいね」と言って依頼書を手渡した。
「まったく……感じの悪いギルドだな」
依頼書を持ってギルドを出るとため息とともに愚痴を吐く。
「ごめんなさい……」
「どうしてロゼが謝るんだ?」
「それは……」
口籠もるロゼの代わりにルイスが言った。
「有名なんだよ。俺たちがポンコツだってことは」
吹っ切れたような言い方だった。
「あぁ」とギルドの振る舞いを思い出す。
てっきり余所者の俺の身なりを笑っているのだと思っていたが、他の冒険者たちの冷やかし笑いや受付の対応はロゼたちにも向けられていたらしい。
「気にすることはない。何にせよ、依頼が貰えたんだ。早く依頼主のところに行こう」
ロゼはまだ浮かない顔だったが、こくりと頷いた。
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