第5話 死者蘇生
「おお、これが街か……!」
森を抜けて少し歩くと街に出た。
そこに広がっていたのは、日本では見られない街並みだった。
西洋風の建物がずらりと並び、出店も賑わっている。
「ここはカタルスという街よ。近くの森は攻略難易度が低いから初心者向きで、冒険者もよく利用している。だから『はじまりの街』とも呼ばれているわ」
「へぇ〜。なるほどなぁ」
「この姿だと流石に人目につくわね。ひとまず協会へ行きましょう」
確かに魔物の血がべっとり付いて棺桶を背負った冒険者は悪目立ちしてしまう。
それに、ロゼとルイスも早く蘇生してやらなければならない。
「教会があるのは街の中央部。あの時計塔が目印よ」
アメリアが指さした先には、大きな円盤型の時計がはめ込まれた、尖った屋根の細長い建物があった。その下には大きなベルが付いている。
「ようこそ、冒険者よ」
教会では神父と従者が俺たちを出迎えた。
「仲間の蘇生をお願いしたい。街の外れの森で魔物が出たんだ」
アメリアは端的に用件を伝える。
目上の人に対する口の利き方がなっていなかったが、神父は寛大なのだろう。特に気にする素振りもなく、常に微笑を浮かべている。
「良いでしょう。では、棺をこちらへ」
俺は2人の棺桶を教壇に運んだ。
「我が神アルスよ。この者たちにご慈悲を」
神父がそう言うと、天から柔らかな光が射した。
光は棺を包み込み、一瞬激しく発光した。
そして次の瞬間、光が解けるとロゼとルイスが現れた。
目の前で起こった神秘的な現象に思わず息を飲んだ。
死者が生き返るなんて、前世じゃ有り得ないことだ。本当に俺は異世界に来たんだと実感してしまった。
「よかった……」
アメリアが安堵の表情を浮かべる。
仲間との再会だ。
ロゼはゆっくりと教壇を降り、こちらへ歩み寄る。そしてべったりと血に汚れた俺の姿を見た。
「あなたが魔物を倒したのですか?」
ロゼが俺にそう尋ねた。
俺が「あぁ」と答えると、ロゼは俺にハグをした。
「っ!?」
先程アメリアにも抱きつかれたが、これはこの国でお礼を言う時の作法のようなものだろうか。
しかし、アメリアの時とはまた違った柔らかな感触が胸の辺りに……。
「ありがとうございます。助かりました」
ロゼはすぐに体を離すと頭を下げて礼を言った。
その姿を見て俺は一瞬考えてしまった不埒な想像を抹消する。
「俺からも礼を言う。ありがとう」
ルイスが握手を求めて手を差し出す。
俺は血で濡れていたので手を出すのを少し躊躇ったが、ルイスは気にせず俺の手を掴んで握った。
「疲れたでしょう。まず体を綺麗にして……それから美味しいご飯をごちそうするわ。あなたは私たちの勇者よ」
「よし! 早く行こうぜ!」
ルイスが先頭に立って歩き出す。
俺たちは神父に礼を言って教会を出た。
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