第8話 分析と凶報

西暦2027(令和9)年2月15日 日本国東京都


 海上自衛隊第一任務群のリスビア軍港攻撃から一夜明けて、危機管理センターでは報告会を兼ねた国家安全保障会議が行われていた。


「先程の攻撃の結果、カストリア王国軍は侵攻用の戦力を喪失し、年単位での再建を余儀なくされる事となりました」


 飯田統合幕僚長の報告を聞き、高田は静かに頷く。


「これで、相手はしばらくアゾリア諸島に対して手出しをする事は出来ないでしょう。ゲリラの行動は?」


「すっかり大人しくなりました。本土との連絡が途絶えたらしく、それで何が起こったのかを察した様です。降伏者も増加しており、これで後顧の憂いを断つ事は出来るでしょう」


「成程…ともかくこれで、相手は我が国の実力を知った筈です。これ以上の戦闘は無益であると理解してほしいところですが…」


・・・


同日 パルトシア王国 首都リスビア 王宮


 東京で高田首相たちが会議を行っていた頃、アフォンス5世らパルトシア王国上層部もまた会議を行っていた。しかし多くの明かりが消えたリスボアの街並みの様に、会議室は薄暗い雰囲気に包まれていた。


「…死傷者は民間人も合わせて15万人に達し、損壊した家屋は実に5千棟に上ります。地方では軍の急激な減少に伴う反乱も頻発しており、十分な鎮圧が出来ない状態にあります」


 将軍の一人が震える声でそう報告し、アフォンス5世は拳を玉座に叩きつける。無理もない、まさか魔法を知らぬ東の辺境国が、想像も出来ぬ程の破壊を以て、征伐軍を殲滅したのである。この事実を真正面から受け入れよと言われても、納得できる筈もなかった。


「…くそ!おのれ、野蛮人どもめ!」


「そもそもアレは何だ、蛮族どもめ、一体いつあんなところに城を築いたというのか!?」


「このままでは、我が国は全ての地で反乱が起きて崩壊しかねんぞ!対応策はどうなっている!」


 喧々諤々と怒号を交えながら議論が行われるが、これといった明確かつ有効的な対策は出てこない。ここから西にある大国イスパニア王国との戦闘でも、ここまでの被害が出るという想定は出てこなかった。むしろ此度の様な惨敗など予想すらしていなかったのだ。


「兵士自体は、徴兵で直ぐに取る事は出来るが、肝心の武器や艦船は直ぐに用意する事は出来んぞ!一体どうする!」


 その怒号に答えられる者など、何処にもいなかった。そんな問答などする必要はなかったので当然である。とその時、一人の軍人が血相を変えて会議室に飛び込んできた。


「会議中失礼いたします、陛下!」


「何事か…!」


「は、それが…イスパニア王国が先程、大使館を通じて我が国に対し、宣戦布告を行いました!現在、10万近くの兵力が国境線付近に集結しつつあるとの事です…!」


「な…!?」

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