1-28 混乱の花
栄養のある土は、輝いて見える事がある。
適切な水分、空気、微生物、菌、目に見えないが土の全体に優しい成分が大量に含まれている。
それらは植物にも優しく、風に乗ったタネを優しく包むクッションになって、種が根を広げやすように柔らかく、若々しい葉っぱを芽吹かせる手伝いをする。
ある人は、風にも優しいと言う。
沢山の菌や種を運んできた風は、空気が含まれた土の中に入り込み、荷物を置いて行く。また風は気ままに吹かれて土から出ていき、いつか咲いた花も揺られる。
路肩の路肩、この世界では珍しく平坦な道、
その脇に咲いている花越しに、目の脇には映っているであろう、オレンジ一色だけの花には目もくれず泥をいじってるアセビがいた。
二の腕まで泥に埋めて、一気に持ち上げる、腕にこんもり積もった泥の山を一部に落として集めている。
また泥で土台を作った後に指で穴を開けていき、集合体が苦手な人なら発狂するような、別に普通のエイキチも一目で気持ちが悪くなる見た目の、何かができる。
そしてすぐ壊して、一部に盛っていく。
ある程度、アセビの膝あたりまでの高さの泥を集め終わると、上の尖った部分を潰して、
上に座ろうとした。
当然だがアセビは泥に沈んだ。
アプアプ、している所にエイキチが駆けつけて、アセビを持ち上げる。
お姫様抱っことかでは無い、汚い汚れた雑巾とかを持つような、指先で摘むようにして持ち方で。
「何してんだ、」
「泥遊び。」
全身にドロッとした泥をつけて、掴んだところのせいもあって、猫みたいに無防備にお腹を出している。
泥の跳ねた顔で、平然と言う。
「そう言う事じゃねぇ、何馬鹿なことしてんだって事だよ。前みたいに泥です食器とか作って遊んどけよ。」
「ここのは泥、緩い、」
そう言うと、自分の服についた泥を拾い上げて、分かりやすいように見せつける
「そうかよって、知るか!」
アセビをその体制のまま、ヒョイっとほっぽると、エイキチは仕事に戻った。
離れるとまたアセビは、ぬるい茶色の中に飛び込んだ。
それを見て、なんでそんなに夢中になれるかね、泥ぐらいで、そんな事してるなら車内の整理の手伝いでもしてもらいたいよ。
と正常な思考を吐露したとき、自分で言ってふと気になった。
泥ぐらいと言ってしまった、泥遊び。
そこに、何か理由があったのでは無いかと、
アセビは詳しい出生が不明だ。
育ちも不明、だが虐待を受けていたのだと今までの行動も、それなりに観察眼があるなら一目でわかる。でも今は、いや今でもやっぱり虐待を受けていそうな顔、身体というのは変わらないが、最近では道ゆく人から変態を見るような目も減った気がする。
「なんで、泥で遊ぶんだ。」
聞こえてはいないぐらいの小さな声が出てしまった。
コイツには大きな謎が多すぎて、今まで趣味というひとことで通り過ぎていった。
今この瞬間だけは、コレが一番頭の中で前に出ていたからだ。
コレもあいつの趣味なんだよな。
何でしてる?
普通、子供っつったらおもちゃとか……でもはじめての反応だった。
思い出す、初めての窃盗見学体験ツアーに連れていったとき、アセビの自由に任せて、おもちゃを持って行かせたとき、その時の顔。
最大の笑顔をしていた。
変な意味じゃ無いくて、本当に変に身じゃなくて、あの顔を見ると、心がムズッとしたんだ。
何か泥遊びを趣味にする事に、理由があるとか、問題があったとか、伏線があるとか、
全部かんけいなくただ単に土とか泥が大好きな変なやつだった、だけって可能性もあるよな。
無意味に空回りを繰り返す、宙に浮いた車輪みたいな、自問自答の結論が出かけていたとき、何かのスイッチが入る。
エイキチと目があったアセビはそれを察して、一目散に逃げ出した。
永吉の目が追っていたものは、やはりアセビの……服。
「服も汚してんじゃねーか!!それ俺が勝手やったヤツ、オイッ逃げんなー!」
泥の中を逃げるから俺も一緒になって泥の中を追いかけた。
でも可能性はあるよな………
………だから気を引くために。
アセビの足首掴んで、適当に近くの川で洗い流すと幸い、服や下着ついた泥はヘドロや下水などの汚い成分が入っていなくて、綺麗に落ちた。
そしてエイキチの仕事も終わった。
「残りの距離10リットルも入れば、十分だメディクターの所でも半分は残せる。」
誰でも使いやすい整備された道路、上質な泥は、未だに稼働中の給油所での出来事だった。
この想定より長くなった旅は段々と収束の方に向かっていた。
「あ、あの廃墟は元々メタルの店だったんだぞ、アイツ適当に内装も変えるし、店の場所も変えるからな。」
「へー、メディクター?」
「あー、名前は違ったぞ、あそこは三店舗目だからな、最初の店名はメルメタル、二店舗目がメメメタル、さっきの三店舗目は五臓六腑、で今の四店舗目でお前も知ってるメディクターになってるんだぜ。」
ここまで詳しく言いながらも、エイキチは別のことを考えている、
この長い旅の目的は、アセビの正体を知る事だった。
一番はライトに聞いて、それなりの金を払って終わりが良かったけど、まあそれは叶わなかったが、旅の途中で知ることは出来た。
ライトが情報処理能力が高かったように、エイキチも得意とする生存能力があった。筋力はもちろんとして、野生の感が強い。
そんなエイキチが考える事は、
一つ気に思うのはあの言葉だよな。
犬に向かって、怯えているって言った
何故か…いや子供の感性でそれなら良いんだ。
でも何故か、引っかかってるんだ。
能力
コイツの……生存能力
いやいや、まさかな。
だとしたら今俺のこの考えも、
自分の体が拒否する用に抵抗していたが、
恐る恐る、アセビの顔を見る。
アセビはそっぽを向いて、無表情になった。
考えも、詠まれてる。
ここに居るのが嫌になる、走行中の車の中でもここから飛び降りたくなるほどの、尻assな空気が流れて、アセビは畔道に田んぼが見て、今までの旅を思い返していた。
ガタンッガタンッ
今は、好きで着ていた水色のワンピースを乾かすからと脱がされて、薄ピンク色と白い花柄のワンピースと言う見た目の服を気に入らないのに着せられて、少し不機嫌になっていた。
「アセビ、ピアノって弾きたいんだよな、そう言えば、近くにピアノ出来るキチガ…」
キチガ、まで言ってエイキチの口は急停車した。
「アー、……ウッグ、ッッッハー ハー、
と、ともだちがいてよ、ソイツに、」
ともだちその一言を捻り出すまでに、数秒間息も絶え絶えの状態で、白目まで剥いて、すっっごい嫌そうな顔していた。
その瞬間に、今度はエイキチがブレーキを押したんじゃ無い、車が大きく傾いて止まる。
そして近くで、小さな爆発音と発煙筒の匂いがした。
Thieves lurk in packs.
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