1-18 説明書
道には無数の地割れが発生した痕跡が残り、一直線の道という形すら壊してしまったジグザグの瓦礫道。
建物はどれもが高く、密集していた、その全てのビルが崩れたり壊されていた。この街に来た者にココは酷い地震が多かったのでは無いかと思わせる外観。
そんな荒れ果ててしまったコンクリートジャングルに長年の放置によって古びた、ビル群を見ていると、
街に近づく時からも見えていた一際大きく、
それでも綺麗に残っていたビルが顔を覗かせる。
季節としても暖かくなって来てはいたが、突然ビルが視界に入った時から、急激に熱くなった風が吹いて来た。
ライトの説明ではビルは100階以上、ビル上部が少しだけ膨らんでいて、その場所が太陽の熱を反射して、ビルの前の道路や歩道を囲う一帯の空間に集中させているらしい。
目的地のビルの表面に貼り付けていられた窓ガラスの皮膚はひび割れてはいたが、珍しくビルとしてはまだ全然壊れていない。
太陽から降り注ぐ光と熱が一番強くなる時間、日照時間ピッタリのサンサンの光を反射していて、さらに誇らしく佇んでいた。
「アチィ!!なんだこの頭おかしい暑さは!絶対イホー建築ってやつだろ!」
俺は車の中だってのに、このクソな暑さで溜まったイライラを声にして叫ぶ。
アセビもあまりの暑さに、目をただの大きい黒丸にして、顔から窓窓の外に垂れ下がる様に顔を出して、走る速度で僅かに冷やされた空気を浴びている。
「フー〜、ぬるい……」
「アセビ手は出すなよ、この温度だ外装なんて触ったら日焼けどころじゃなくなる。」
そんな事を言った俺も、フロントガラスから落ちてくる光が、手の色を変えて見せる、車が少し影に入ったところでもう一度腕を見てみると、自分の少し浅黒くなった肌がある。
「あいつのところまで行くのにも時間かかったのに、次は熱帯かよ、このままじゃダンディ通り過ぎちまう。」
数週間、メタルの店を出てすでにそれほどの時間が経過している。
メタルの店はあくまで辺境にある店だ、技術者のライトは仕事や相手の関係のため仕事をする場所はこの地区の中央だ。辺境から中央までこの悪路では数週間という途方もない時間がかかる。
そしてこの暑さだ、エイキチからすれば今までの旅路の中で一際長く感じる旅路だろう。
「…こんなとこに立てて平気なのか、気温のせいで壊れたとかだったらアイツ一発殴って狂った頭を正気に戻すしかないな。」
少し荒い運転で車をビルとビルの狭間の影に留めておくと、出来るだけ熱くない様に服をターバンみたいに巻き付けて、影を移動する、
洗濯もできなくて、服があんまり残ってなくて仕方なく、アセビの髪に俺のズボンを巻き付けるときは、誘拐する時すら死んだ様に無抵抗だったアセビが、初めて嫌がった。
駆け足でビルの中入るとそこには、
「コレは珍しいな…綺麗だ、」
俺は珍しく綺麗な建物に唾を飲んだ。
白い内装に黒いホコリや茶色い煤は溜まっては、いるが壁や床はツルッとしていて、所々にペンキの剥がれた丸みがかった装飾が付いている、白い円柱形の縦に24の溝が掘られた柱が何本も支えているほどに広く、軽く二百畳、400平方センチメートルはある。
そんな広さなのに内装がそんなに壊れていない、少し補修をすれば今すぐにでも通常に使えそうなほどに。
くすみの無い透明の生きているガラスを久しく見ていなくて、暑さで乾いた瞳からは透明感のある水のカーテンのように見えた。
今まで見てきた、崩壊以前に建てられた建物の中で建物自体の美しさは一番、
この世紀末みたいな街での雰囲気はまるで神殿の様だと言える。
ビルの中央は大きく開けていて、10階程度の階層を突き抜けている吹き抜けがあった、
とりあえず最下層から見える範囲までは、重要そうなものは置いていなさそうだ。
見栄えに重きを置いて安全性を軽く見ているような軽々しい建築では無く、いつもは警戒する床材の強度の確認なんか必要がないほどに、この建物は完成されていた。
「ライトもコレを見て電波塔の場所に選んだのか。で多分屋上だよなぁ。」
吹き抜けの大穴の下に行き、上を見上げると
側面も窓の水色、床の白色、手すりの黒色が層のようになっていて、統一感がある大穴が見える。
「なげ〜…アセビテキパキ行くぞ!」
コレからも長いんだなと感じると半目になった虚目で苦しそうな声を捻り出して、
無理やりに自分を鼓舞するために声を上げる。
2人は暗い非常階段をヘッドライトをつけて登っていき、ビルの中を着々と進んでいく。埃まみれの床は少しだけ滑りやすく、しっかりと2歩目を踏み締めた。
〜〜〜〜〜〜
ごめんね、スランプ気味で。
多分次の話は治ってると思う。
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