1-17 心霊カモン!


 ホコリ一つない部屋なのに、この間抜けたボンクラなライトが住んでいると考えるだけで、埃っぽく薄汚く見えてしまう冷暗部屋。

薄暗い球形のドーム部屋の中で窓ガラスいっぱいに写っている画面から、

ケミカルでカラフルな色、光が点滅して、画面から飛び出してきた、部屋を滑るように楽しげに部屋中を飛び回って反射していると、突然目の奥にあるミラーボールに飛び込んできた。


その時その場所だけ、部屋の全てが光って見えて網膜の中がまるでパーティみたいになる。



キーボードを入力する指が、一打一打ごとに押し込まれる速度が、加速していき、力強く押されたキーボードと横にいただけの停止していたキーボードの側面同士が擦れ合い、黒く焦げプラスチックの熱せられた嫌な匂いが漂ってくる。


そして今、メタルの指がエイキチの目で終える速度をついに超えた。



消えたように見えた最後の一打は、正確にエンターキーを押していた。

そのエンターキーだけにかかった力が衝撃波になって、机、机の足、管制塔の床、鉄筋の鉄塔と伝っていき、ついに地面まで到達した。



メタルのニヤッと吊り上がった口元が背後にいる俺にも見えた、この時までは俺も感心していた。……なのに。


目の前に現れるネオンパープル色に光る、「無理」と書かれた大きな看板を片手で持ち、もう片方の手でOKサインをして、片目をつぶってウィンクをしている、異様に頭のでかいコイツ。


「……何だ…コイツ」

「……オ」

この場所の理解が追いつかなくて取り残された二人は、呆れと  混じった目で見たー。



ライトは少し慌てた様子で、俺の言葉を聞きもせず無視してキーボードをカチャカチャしている。

「アレー何でだ〜……… あ!そう言えば、電波塔の一つに問題があるんだった。」


「オイ話を……また窃盗団関係か?」

やれやれ方を落としと言いかけた言葉を引っ込める、多分今は言っても聞かないだろう。


「今回は窃盗団関係じゃない、何の知識のないバカどもが重要度も理解せずに、敷地の中にあるとかクソな理由をあげて、電波塔を資材と間違えて壊すようなクソな話じゃない。

…今回のはもっと怖い話さ。」


いくつかのファイルの中から

故障と書かれた黒いファイルを開いた、

最初は小さく写っていた画面だが小さいライトがしがみついているカーソルを操作すると、画面全体が真っ暗になり、相対的に部屋の中の光も淡くなる、ぐるぐると回っているようなマークが消えると、画面の真ん中に藍色の再生マークが出現する。


透明のグローブをはめた方の手で指パッチンをすると、その時、部屋全体を薄ら明るく保っていた、一つの蛍光灯の電気が切れた。

今まではかろうじて薄暗いと言えた部屋が、完全に暗闇の中に潜った。


「その電波塔を作った時についでに付けていた盗聴器から、何か壊れた直前とかの情報が得られるんじゃないかと思って確認をしたんだ。」


「何だよ、結論を言えよ。」


「ちょっとエイキチ静かに、

…気を取り直して、盗聴器からピーピー…ピーピーって鳴き声が聞こえてきたんだ、

そう…まるで子供の泣き声みたいなね!」


空気を読まないエイキチの口を封じると、

ライトは椅子を二人の方に向けて、もう一度座り直した。


画面の光によって青白くなった顔を、俺らを怖がらせようとしてるのか、目を大きく見開いて、口を歪ませて子供なら怖がるかもなぁってレベルの顔を近づけてくる。


急に暗くなったこと自体にはびっくりして、周囲に危険物がないか、危険人物がいないか、警戒していた二人だったが、急に顔を近づけてくる男に対しては、二人とも無関心だった。


「まあ、チョウガイだったんだけどね。」

「チョウガイ?」

「害鳥 の 鳥害。」

ライトは首を傾げていたエイキチに向かって、指で空中に字を書いたりわかりやすく繰り返して教えてあげる。


「多分アンテナに巣が作られちゃったんだと思うんだよね。

電波の障害が出るサイズの巣ならドローンの出力じゃ無理だし、こう言う自然災害と言うか、アンダーワールドカオスも然り、AI現象的な問題は人間が直接手を加えるしかないんだ。

僕が動くと、かろうじて動いているここら一体の地区の電気が消えるし、それは流石に怖い。そこで!エイキチ君に行って直してもらいたい。」

俺に向かって指をさす。


生意気になる、自分の為になることや仕事の利益になることを話す時はいつも被っている逃げ腰の仮面が剥がれる、昔から知っているライトの悪い癖だ。


「まあそれなら仕方ねぇな、荷物を置いていく今のうちに検品して金用意しとけよ、

…先に言っておくがパクんなよ。」

ポケットに手を入れながら立つ、殺意を混ぜた威圧感を背中から放ちながら、手を伸ばした。


「ハイ、先輩!」

この場所にアセビを連れてきて初めて来た時みたいに、地面に近い低い位置からの体制で足は土下座をして、片手を持ち上げて敬礼をすると、手を繋いで離れていく二人を見送った。




二人が遠かったのを録画した監視カメラで確認すると、暗い管制塔で一人になったライトは、小さな端末を片手に持ち、筆を片手に持つと小声で何かを報告するように呟いていた。


「ロリに敬礼 連れてきた勇者に感謝の花束を……か、良い俳句ができたぞ。

サッ仕事仕事ッ」


また仕事の定位置に登った。

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