1-16 タコ足電線
車を走らせていくと、目的地に近づくにつれてだんだんと異様な光景に変わっていった。
最初は電柱にかけられた電線が増えてきた程度だったが、黒い電線が電柱の容量以上にかけられて、あろうことか壁を真っ黒になるまで埋め尽くしてきた。
高い位置にある電線の仲間に入れなかった下位の電線は地面を伝い、自販機やゴミ箱、街道に生えた木の上を通ったり、貼り付けられたりして出来るだけ高いところに掛かろうとしていた。
所々黒い厚めのビニールが剥がれて、中の銅線やピンクやエメラルドグリーンのチューブが見えている、その電線は道路にも当然あふれていて、すでにクネクネと曲がりくねった一車線を除いて車の居場所なんてどこにもない。
その道も…もう。
「アセビ、降りるぞこれ以上は車じゃ行けない、まあ電線の上から行くこともできるがいつ断線するかわからない、いいから行くぞ。」
「ウン、」
先に降りた俺が手を出して、その手を取って飛び降りると、早速足元にあった電線で転びそうになり、細い腕を持ち上げてプランッとさせて助ける。
「おら、足元に注意しろって言っただろ。」
その後のアセビは足元を見続け、注意していたから躓くことはなかったが、逆に木から垂れ下がった電線に頭をぶつけそうになっていたので、仕方なく気づかないように手でどかしながら歩いた。
「ん?」
アセビが足元を見ていると、何やら他の電線とは違う細い電線があることに気づき、その電線の先を顔で追った、すると先には監視カメラがジーとコチラを見ていた。
「アレ、カメラ!」
びっくりして、エイキチの手を掴むと、手を引いてカメラに監視されていることを知らせた。
「ああ、安心しろライトの監視カメラだ。防衛のためだとよ、ってかよく見たらもっと有るぞ。」
エイキチの言う通りよく周りを見れば、黒い電線で紛れていたがカメラがいくつも壁について、侵入者の一挙手一投足を監視している。
「やっぱすげぇな、何でいまだに壊れてねぇんだよ、あのタコ。」
近くのビルや高い木から電線が伸びて、垂れ下がり、次はその上に電線が乗ることで電線の大きな束で空中に吊り橋のような足場を作っている。
今まで見えていた、町から伸びていた電線達が全部一つの管制塔に集まって、ぐるぐると巻きつけてまとめられている、その見た目はまるで頭の大きなものから無数の足が生えるタコの化け物みたいになっていた。
銅線とは言えあの量は計り知れない重量のはずなのに、比較的細い管制塔は立っていた。
錆びた梯子を登って、管制塔の小さな制御室のドアをガラっと開けると内装が見える。
ドーム型の部屋はドームの壁のほぼ埋める、重要な大きなガラスが電線でぎゅうぎゅうに埋まり、何も見えない、こう言う制御室は通常なら数人大人が入ってもまだ余裕があるものだが、中はコンピュータやら配電盤、ごちゃごちゃになった配線などの物に溢れて人間二人程度でギュウギュウになる。
そして一目では誰もいないように見えた。
「オイ!来たぞ!監視カメラで気持ち悪りぃ視線を感じてたぞ、見てたんだろライト!」
俺がドアの横に続く、鉄製の壁に少しだけ強めに拳を握って叩いて大きな音を鳴らす。
ライトと名前を呼ぶとすぐ横にあったでかいコンピューターの上から書類が崩れてその物に紛れて人が落ちてきた。
「アイテテ、やあ、エイキチ久しぶりだね、」
「ああ調子はどうだ、」
黒髪をエイキチと同じくらいの髪が
下がって広がった見た目でもわかるも弱気なタイプ。のライトが足元に仰向けでひっくり返ったまま、エイキチも見下したまま挨拶をした。
「今日は情報をくれ、」
立ち上がるのを待ってから、話しかけようと思っていたけど、立ち上がると書類を一枚一枚拾い始めて、これは長くなると思った俺は気にせずに話しかけた。
「情報珍しいね、窃盗団の情報かな?
じゃあコレなんて…」
と言って拾っていた書類の一つを見せてくるが、今日の目的は違う。
「違う、コイツの情報をくれ。」
アセビを物みたいに背中から取り出すと、ライトに見せて、一応頭を下げさせて挨拶をさせる。
「この子、ああよろしく初めまして、僕はライトっていいます。」
ライトの顔を見ると、一度コクッと頷くとまた俺の足の裏に隠れた。
まあ…そうだよな。
「この子は先輩の子供さんですか?」
「違う、訳があって少しの間、拾ってるだけだ……で行けるか、」
アセビを気にして見ていた目線を戻すと、
ライトは背もたれの大きいオフィスチェアに座って、マイクや片目だけスカウターみたいなものも完備された自作の黄色いヘッドセットをつけていた。
目の前の半透明のパネルに手を通り抜けると、手に半透明のグローブが付き、
片方の手で何十桁かのパスワードを一瞬でキーボードで入力すると、目の前にあった何も透けないガラスに、マップやカメラの映像、今も忙しなく動き、変化し続ける数字の羅列が画面が映る。
コイツまた改造してるな。
ライトの仕事の顔になった、その目は静かに淡く青白い光を反射している間接照明になった、こっちを振り向くその集中力には、戦闘でもなんでもないが俺も圧される。
「どこらへんの区画に住んでたのかな、
それが有れば大体のことは解かるよ。」
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