1-11 安心感
2人は同じ色のバックパックを背負い
見晴らしのいい十字路に次の獲物を品定めをするように巣から出る。
あたりの家賃の高そうな高層ビルたちの中で
そこまで高そうではない古典的な二階建ての三角屋根の家を指差す。
「アセビ、理由はわかるか?」
アセビは顎に手を当て俺の考える動作を真似るがすぐに、「...何で」と聞いてくる。
「...高い家は今だにセキュリティが生きてることがある、まあ特に扉だな
木やコンクリは脆くなって壊せても
鉄はサビで余計に動かなくなる、昨日の車みたいにな。」
コクコクと頷き近くにあった
ゴミ箱のをける。
ゴミ箱はその場で倒れて、
小さい缶が地面に転がる。
そんな話をしながら2人は歩いていると目的の家の前に着いていた。
扉が受け枠にハマるタイプでは無く、
さらに古典的なスライド式のスモークガラス扉、ガラスを覆うようにある鉄の枠に僅かに木目のようなものが確認できる。
経験則だがこうなっている素材はほぼ真鍮かアルミ!高く売れるけど...
今は家の中に危険がないか集中だ。
「入るぞオイ!ココからは注意しろよ。」
俺がアセビに呼びかけると、危機感を感じたのか近寄ってきて俺の股下に隠れる。
扉の脇に体を隠し、
扉を足でゆっくり開ける隙間から中を覗く、
ピアノ線は無い、射出機も無ければ
足跡も無い、一旦トラップ類は無さそうだ。
「一旦は安心かな、でも注意はしろよ。」
コク
玄関には家族写真だろうものが分からないぐらい埃を被っていた。
「埃が床に均等に積もっている、少なくとも今は誰も居ない。」
木の張った廊下を進むと一歩目で
ありえないほど曲がる。
「端を渡れアセビ。」
リビングを見る、
キッチンと一枚の吹き抜けを挟み、
一部屋になっていた。
壁に沿うように棚が並びその上に写真立て
テーブルの上にも
家の壁にまで
至る所に写真立てが置かれる、
大体の家はその写真の数写真の大きさでどれだけ幸せな人が住んでたがわかる。
この家は言うまでも無い。
「俺は仕事だ、」
埃を退けると綺麗なスマホを手で簡単に分解した、
基盤を取り出し、画面の手前に入っている紙なんかより薄い半透明のフィルムを取り出すと、
本体を軽く握りスマホが一瞬で丸めたちり紙になった。
「アセビこの部屋のリモコンを集めてくれ、えーあの、細長い押せる奴。」
リモコンの分解は簡単だ、
指でつまむようにプラを割れば
後は基盤だけが出てくる。
「ウシッ、多層板だ。」
胡座をかきながら小さくガッツポーズをする。
俺の摘んでる多層基板は立体的に回路を書かれている物だ、通常の片面の基盤より高く売れる、...だったっけまあ受け売りだけどな。
基盤を眺める俺の横に、小さい腕で一生懸命に、俺の言ったものを8本持ってきたが、
半分はおもちゃだった、
「細長い押せるもんって言ったもんな、
そうだよな〜。」
困った顔をしつつも頭は撫でてやる。
カーテンが破れている隙間から
まばらに指す光の一つが、
壁の影に隠れていたお宝を照らす。
「...冷蔵庫か!」
黒光りする寸胴で四角い形をした、
基盤の宝箱。
腐りを通り越して黒く変色した内容物には期待はしていないでも、冷蔵庫といえば冷却器コンプレッサー、
どちらも使用用途が多く高額な部品だ。
少し興奮気味で分解をすると
小型エンジンぐらいはある冷却器を取り出す、
「1番の収穫はコレだな!アセビ聞いてんのか?」
分解に集中していて目を離していた、
何処にいるのかと辺りを見渡すと肩の服を掴んでぶら下がっているアセビを見つける。
アセビはよじ登り俺の耳元に移動すると、
暗闇の続く廊下で僅かに開いている扉を指す。
一瞬で緊張感が高まるのを感じる。
「誰かいるのか、」
そろりそろり足音を立てずに、
中から光の差す扉の横に立ち、
強く強く拳を握り、覗く。
一面に広がるのはピンク色の雲
動物のぬいぐるみたち、大きなベット、日差しの良い大きな窓、確実に子供部屋だった。
「フー、緊張して損したぞ。」
落胆する俺の股下を潜って抜け、アセビは一番最初にベットに飛び込んだ。
陽の光に照らされて黄金色になる埃を散らして、ベットは小さく軋む。
キシッ
ベットの上で寝るアセビの表情が
あまりに心地よさそうで俺もふかふかの魅惑に負ける。
ギシーー
「何で俺を呼んだんだ?」
「離れるなって、言った、」
「そうは言ったけど、あんな...何か見つけたみたいな顔すんなよ。」
「ベット見つけた、」
「良いなこのベット、欲しいな。
俺の身長で車中泊は首にも腰にも悪すぎる、
お前は大丈夫かもだけどな。」
肌触りの良いシーツを全身で感じるように
仰向けで手と足大きく開いて、
目を瞑っているアセビを見て、昨日のことを思い出す。
リラックスしてんな
そういえば昨日の夜見つけた、
アレ何と無く持ってきたんだよな。
俺はポケットから懐かしい音楽レコーダ
を取り出し、固まったスイッチを入れる。
〜♪〜〜♫〜
優雅な音楽 音階 フレーズ
今も耳に残っている物もあるが、
「初めて、」
「俺も初めて聞く..こんな音楽だったっけ。」
同じイヤホンで聴くために、
頭を近づけて大きなベットの上で
左右でかなり大きさの差があるハの字を作る。
聞きたがっていた音楽を聞いてるアセビが
どんな顔してるのか気になって向く、
「おやすみ」
俺を見つめるアセビの顔は
今までの中で1番口角が上がってる!
頭をガバッと起こし、珍しい表情を見て、
俺も舞い上がってしまう。
「お!どうしたご機嫌じゃねーかアセビ!
まだ寝ねーぞ。」
しばらくゴロゴロしていると、
ベットの脇、近くにあったゴミ箱の中に魔法のステッキがあって、アセビが魔法のステッキを掲げる。
光が透けるほど、薄くそして
光が透けるほど、澄んだ透明。
「そのおもちゃは明らかに高くは売れねぇな。」
そんなに考えなかった答えにアセビは
少しだけ考えた後《のち》、
一本ずつ指を離していき、最後の二本で名残惜しそうに揺らぎ、落ちかけた所を俺がそのステッキを握った。
「欲しいのか?持ってけ別に良いぞ。」
さっきのも含めて今まで見た中で1番の笑顔で
俺の目を見て言った。
「ありがと、」
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