1-10 目からビーム


バン背面のハッチを開けてそこで二つの小さいヘッドライトをつけながら、ゴソゴソと大きな袋に入った盗った物を一つ一つ確認する、そのまま流れ作業で

場所を取らないように形に合わせて箱詰め、ネジや銅線などの小物によっては袋詰めにする。


そんな整理をしながらエイキチがアセビに話しかける。

「どうだったよ、」


鉄の匂いだけがする数秒間

背後からは何も聞こえない

多分あん時みたいに首傾げてんだろうな、俺は返答を貰うのは諦めてそのまま話を続ける。


「初めてだったろ外出たの、

ん?ってわけでもねぇか何度か俺と出たか。


そうだなぁ......でもコレから何してもいい外の世界、は初めてだろ。」


「うん!」


突然の諦めてた声が聞こえて

しかも大きな声で聞けて肩が大きく上がる。


カラーンカカカッ

普通に驚いて作業中持っていた

ドライバーとスピーカーが落ちる。

「ビビってねぇよ、別に」


アセビの一言以外誰も何も言ってないのに、

車の下に入った落とし物を焦って拾い上げる、そして手の上のスピーカーを見て何となく思いついた単純な疑問。


「そう言えば

お前音楽って分かるのか?」

アセビの方に顔を振り向けると

「ミッ」

と小さい悲鳴をが聞こえる、


ヘッドライトで白くなった肌、眩しそうに目を瞑り手で顔を覆うアセビを見て、

俺はすぐにヘッドライトの電源スイッチを切る。


「おっとすまねぇな、大丈夫か?

まあ音の連続した..流れみたいな物ーかな、

今まで聴いたことはあるか?」


「ある、」

アセビは執拗に目をこすり目を赤くしながら答える。

「へぇ そうか聴いたことはあるんだな、」

アセビの答えに想像通りだと

エイキチの口角が少し上がる。


「勝手に流れてたのを聴いただけだろ」

水面のように揺らぐ瞳に広大で綺麗な星空の全て浮かべて俺の目を見る。

「エイキチ...もッ?」


「ああ.....昔な、でかいディスクに針を落としてまた馬鹿でかいホーンに伝わって、


光も見えない隙間から冷たい風に乗って逆再生で流れてきた、アイツら曲のセンスだけは良かった。

まあアイツらのセンスじゃねぇけどな、高価だからって適当に買ったんだろ、使い方もわからねぇヤツらだ。」


そう言えば昔、初めて稼いだ金で

あの時の音楽が忘れられなくて同じ音楽のディスクと蓄音機を探したけど、どこにも売ってなくて、


この世界でもバカ高い携帯型音楽レコーダーを買ったことを思い出す。


「そう言やー同じやつどっかにあったから

後で聞かせてやるよ。」


俺がそう言うと、

アセビは頭を2回上下にふり

大きく口を開けて深く息を吸い、

目を細めて今にも眠りそうな顔になる。


「今日は疲れただろ、もう寝とけよ。」


「おやすみ。」

ピンクの布団に入ったアセビはこっちをみないで言う。

俺もついでに返事だけはする。

「おやすみ、」



......ゴソ♪ゴソ♪

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