1-9 車上荒らし


六車線はある大きな道路には

誰も乗っていない車がまばらに捨てられて

中には骨組みしか残っていない車もあり

中途半端に道を塞ぐバリケードになっている、

道路の脇には豪華な家が立ち並ぶが木が巻きつき外壁は見窄らしくなっている。


緑色の溢れる景色の中

俺とアセビは車の影にしゃがみ込みカチャカチャと音を立てる、


「コレも壊れてる、コレもだ、

コレもコレもコレも?!」


エイキチの持っている

ピッキングツールが容易く折れる。


性格のせいで驚かれるが俺はかなり器用な方だ鍵開けの技術も持っているし、目利きも出来る。

この車の鍵にも正確に合っているはずなのに、


車の錆が鍵穴の中まで侵食して

鍵穴の機能を壊してしまっていた。


「はぁあ!鍵がうごかねぇ、クソが!」


苛立ちに任せた蹴りで車を大きく傾き、

ドアの留め具やフレームなんて気にせず破壊する。



埃まみれの座席をスッキリした顔で見るが

あ忘れてた、と一拍子遅れて気づくその様子を静かに見ている小さな存在を、


「あー〜こんなこと出来るぐらい

体を鍛えろよ、どんな状況でも1番信用できるのは自分だけだ筋肉は裏切らねぇぞ。」


あぶねぇあぶねぇ

世界での生き方を教えるために来てることを忘れるとこだったぜ。

と少し思いながら大まかな部品をガコガコ外して下準備を終わらせると、

本格的にプラスドライバー一本を取り出し

分解し始める。


背後で静かに見ていたアセビを手招きして

内壁を剥がした車の中身を見せる。


「こっちこっち高いのはここら辺だ、

スピーカー

簡単な配線だジャックから抜けばそれであとはネジで数本止まってるだけだ、

それなのに需要が高い。


まあ簡単に言えば高く売れるってことだ。」

エイキチは気持ちいい笑顔で教える。


「あとは...そうだなー、

シートは劣化して売り物にもならない、

だが中のスポンジは色々と使える。

お前洗ったのもコレだぞ。」


少しのめり込んでアセビが窓枠を支えに

見ようと手を伸ばした時。


「おっと、

こういう所は支えにするなよ。」


エイキチが止めて

その説明として指で優ッしく硬そうに見える壁を突く、すると指が飲み込まれたみたいに穴が開く。

パリパリ

手で壁を撫でてみるがプラスチックは風化して手で触れるだけで崩れる。


「樹脂製のものは劣化が早いんだ、

それと比べたら機械類は生きてるものが多い

何でかはわからないけどな、


…昔のコーティングが優秀なんだと。」


俺は金目の部品今までの経験で見抜くと

順調に外していく、

そんな時今まで静かに聴いてただけのアセビが質問する。


「ココはどうするの…」


「ん?トルクかそんなの手で、」

座席を留めていた鉄製のトルクを

バキィィ

錆びて茶色になっていたとは言えギッチリつけられていたトルクを手で

大きな金属音を立てて外す。

「なっラクだろ。」


質問の答えとして渡される、

指の力だけで外されたトルクは頭の部分が

コインぐらい潰されていた。


「じゃあお前もやってみろ、見よう見まねで良いから反対のスピーカーを外せ。」



俺の動きを粗悪コピーしたような子供の腕だが、注意をしようとする直前に


自分で調整していて意外に器用そうだった。


「ほぉ、初めてにしては上出来だ。」


アセビの外したパーツを

エイキチが広げた大きな袋に入れると、


また次の車のドアで

ピッキングツール折ると

力任せの蹴りで破壊するのだった。



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