1-8 行こうぜアセビ
朝焼けに照らされた店が
パステルカラーの迷彩柄に見える
太陽と店の間に日を遮るように車が停まる。
その影に個性的な数人が溜まる。
「金使いすぎたし、
一旦近くで金目の物盗ってくる。」
「オウ行ってこい、
いつでも買ってやるよ。」
満面の笑みで自慢げに店の看板を叩く。
「.......」
少し目つきの悪いカトレアは
腕を組んだまま何も喋らない。
「じゃあ、行ってくる。」
車の扉が開かれ、ちょこちょことアセビが入り、その後に俺が入る。
扉を閉め窓を少し開けて、車を出そうとしたところ、
「本当に大丈夫かい、」
カトレアが口を開いた。
「ああ大丈夫だよ何回も行ったことある場所だ。」
「お前にゃ心配なんてしないよ。
そっちだよ、エイキチの娘なら私らで預かってあげても良いよ。」
車の窓から目までしか出ていないアセビを指差す、
信用してるのか信用してないのか、
扉で隠れたところで手を握られる。
俺も負けじとその手を握る。
「まあこいつに色々なもの見せてぇし、
それに俺の娘じゃ、」
「じゃあ覚えておきな...誰が何と言おうとその子はあんたの子だよ、だからいっぱい勉強させていっぱいモノを見せてやりな。」
この地区に初めてきて出会った当初
何も知らなかった俺をメタルと結託して
襲おうとした時と同じ、真剣な眼差し。
「ああハイハイ....ありがとうなカトレア!」
少し毛が逆立つのを感じながら、誤魔化すように返す。
「おばさんありがとうござい...ました。」
俺の声に共鳴してアセビが小さい声でお礼を言うと、カトレアは少し安心したようで小さく手を振る。
「俺は?ブラザー!俺は?」
ブロロロロッ
「お嬢ちゃーーーーーん!!!」
跪き手を伸ばすメタルの哀咽の咆哮を無視して車は走り去る。
車を走らせる俺は横目で助手席に座り俺の顔を覗くアセビを確認して話出す。
「アセビ。
先に言っておくが俺は犯罪者だぞ、
お前から見たら地獄から助け出してくれたイケメンなヒーローに見えるかもしれねぇが。
紛いもない犯罪者だ、
間違っても俺を頼るな。
自分の道は自分で考えて決めろ。
解ったな。」
明るい日差しでエイキチの鋭い目が
より厳しく光る。
「解った。」
俺の目を見たままそう答えるアセビに
「ほんとかよ」と思ったが、
一度しっかり言えばその後は雰囲気を感じ取り、行動していたことを思い出す。
また前を見て車を運転する。
「あ、そう言えば日焼け止め塗っとけよ。」
言われたアセビは小さいポーチに手を入れ
日焼け止めクリームを取り出すと、
パチパチペシペシ
手に数センチ出して手に塗り広げ、
風船のように柔らかい頬を叩きながら
目をしっかり閉じて顔に塗る。
エイキチはその姿に静かに悶えていた。
朝焼けの風景を抜けて
目指している方向に朝日がうっすらと現れる。
僅かに違うハンドルの感触に笑顔溢れる、
新しい旅旅が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます