1-7 のっぽの古時計


 時は多分、だいたい2222年、


今、現在の世界は死んでいない。

人類の数が爆発的に減り、街や国、その他諸々の人間の生息圏が縮小化されているだけだ。…と聞いている。



今世界で正式に活動しているのは、元々の警察がやっている自警団、

警察が守る防護壁越しの街の中にいる高給取りの奴。


それと対をなす窃盗集団、それに窃盗集団に金を払い縄張りと言われる、一定のエリアに住んでる奴らだけだ。


防護街の方が安全に決まってる、だが統領代々続いているくらいの、富豪層の資産がないと入ることもできない。

もちろんこの世界を混乱して歩いてきた、人間にそんな金あるわけがない、そんな人の為に生まれたのが、窃盗団の縄張りだ。

少量の金は取られ、狭く苦しい生活は変わらないが、最低限の配分は行われる。

力を持たない人間には生きれるだけで、幸せなんだろう。


結局俺が、何を言いたいのかって言うと、


前の公園にいた幸せそうな子連れも、

犯罪者に肩入れしてる、限りなく黒に近いグレーの奴ばっかって事だ。


百年前は世界も、全て人間の手に使われてたらしい、それが崩壊した理由は色々探っても分からなかった。


メタルにも聞いてみたが、アイツもあんな見た目でまだ三十代だ、昔の事は知らないって、もう情報が残っていないし急激に起きたことだから、偽の情報で溢れてネットは曖昧すぎると言われた。

もう真実は分からないままだ、



「まあ...良いか。」


俺はある商品を見ていた。


カラフルな迷彩柄の店、レジに立った大大男が見た目に合わない、赤くて小さいプレゼントボックスを出す。

「アイヨー、注文の品だぜ。その名も〜?

あったか子供布団、ピンク!!」


「オー、コレが子供布団か、思ってたよりちっせぇな。」

エイキチはかなり興味があるようで、包装に開いた小さい穴を、指で広げるようにして、中身があるのを確認すると、すぐにプレゼントをアセビに渡す。


ビリッビリッビリッ

アセビは受け取ると、一瞬不思議そうな顔をしたが、エイキチの動きを真似て、小さい手で一心不乱に全ての包装を破る。


「お嬢ちゃんに似合う良い色を選んだな、

エイキチ。耳貸せ……さっき聞いたが、辛い思いしたんだな嬢ちゃん」


「ああ、ってお前、アセビを嬢ちゃん呼びなのか?」



「おうよ、お前が親なら俺ぁ叔父さんってことになるよなぁ。ブラザー!」

うでの筋肉を見せつけている。


「兄弟ねぇ...いねぇよ。」

「もちろん血は繋がっていない

でもそれぐらいの関係だってことだ。」


「ふっはは、勝手に言ってろ、」


メタル帰ってきたものが拳では無く、想像していたのとは違う言葉に驚いて、唇を尖らせて固まる。

「・・・大人になったなエイキチ、アハハハハ!!!」


机を叩きながら大笑いする声が店の壁を越え、この地区一帯に広がる。

カラスも飛んでいった。


メタルの笑う声が響く中ダンッ!それ以上衝撃で、店全体が揺れるような、大きな爆発音が響いた。


ギシギシミシミシとレジの奥に見える階段が

一歩一歩で歪み、軋む音が聞こえる。


あの200キロもある巨体で、自走できることに驚いた。


ボリューム満点のウェーブがかったオレンジ色の長髪に、巨体をみっちりと包む黒のキャミソール。


真紅のルージュをつけた唇。

「なんだいうるさくしちゃって」

一声からすでに強そうな女の声だった。


「それがエイキチがよぉ、」

メタルの声の事をなすり付けようとした言い訳を、女は目を鬼にして一喝する。


「アンタの笑い声だよ!うるさいのは!」


「オウ!スマンスマン、昨日も言ったがエイキチが女連れてきやがっってよ。」


「あら良いことじゃないか、ん?女ってまだ子供じゃないか、まさかおめでた?」


子供と思い拍手されるが、俺が否定するより先に、


「コイツがペドだって事だよ。」

「何ばか言ってんだい、そんなわけ無いだろ!」

メタルが変なことを口走って、カトレアが腕を上げメタルの頭を叩く。



「だれ」

アセビに不思議な物を見たように見られていた、カトレアはゆっくりとアセビに近づき、手を伸ばす。


ふかふかの柔らかい手で頭を撫でる。


「そうだよアセビちゃん、

…ってあらやだ、肩が日焼けしてるじゃないか!?エイキチ?ちゃんとしなさい。あんたと違って女の子なのよ!」


ドレスの肩がけの紐から出る肌が赤く、

皮膚が乾燥している様に荒れていることに、気づくとアセビの手を掴み、カトレアの勝手に付き合わされて、化粧品コーナーに連れて行かれる。



店の商品をその場で開封して、自分の腕に塗ったり、アセビ本人につけたりして選ばせている。


「そんなのいるのか?」

メタルがそれは言っちゃいけない、とでも言うように、勝ち誇った顔になり、指をチッチッチっと振っている。


少女の体を見たカトレアは、おもむろに

生理用品にまで手を伸ばしアセビに聞く。


「アセビちゃん生理は来てる?」

アセビは言葉自体は理解してるのか、でも自分の体のことについてはわからないように頭を傾げる。


「まだガキだぞ来てないんじゃねぇの。」


何も知らない男の俺なんかの言葉を無視して、カトレアは一つ小さめの袋に入ったナプキンをカゴに入れる。


「……一応持っておきな。」


日焼け止めも爪の切りもヤスリも、

今まで必要がなかった物や。

白い液体や顔に貼るヌルヌルのお面も、今まで用途すら知らなかった化粧品の物まで買わされた。

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