1-7 のっぽの古時計
多分だいたい2200年、
今現在の世界は死んでいない、人類の数が減り街や国、その他諸々の生息圏が縮小化されているだけだ。
今世界で正式に活動しているのは、
警察がやっている自警団、
警察が守る防護街の中にいる高給取りの奴。
それと対をなす窃盗集団、
窃盗集団に金を払い縄張り(エリア)に住んでる奴らだけだ。
前の公園にいた幸せそうな子連れも、
犯罪者に肩入れしてる奴ばっかって事だ。
百年前は世界もほぼほぼ全部使われてたらしい、それが崩壊した理由は色々探っても分からなかった。
メタルにも聞いてみたがアイツもあんな見た目でまだ三十代だ、昔の事は知らないって、
もう情報が残っていないし急激に起きたことだから、偽の情報で溢れてネットは曖昧すぎると言われた。
もう真実は分からないままだ、
「まあ...良いか。」
カラフルな迷彩柄の店、
レジに立った大大男が見た目に合わない、
赤くて小さいプレゼントボックスを出す。
「アイヨー、注文の品だぜ。
あったか子供布団、ピンク!!」
「オー、コレが子供布団か、思ってたよりちっせぇな。」
エイキチは包装に開いた小さい穴を、指で広げるようにして、中身があるのを確認するとプレゼントをアセビに渡す。
ビリッビリッビリッ
アセビは受け取ると、エイキチの言動を真似て、小さい手で一心不乱に全ての包装を破る。
「お嬢ちゃんに似合う良い色を選んだな、
エイキチ。
...さっき聞いたが
辛い思いしたんだな嬢ちゃん」
「ああ、ってお前嬢ちゃん呼びなのか?」
「おうよお前が親なら俺ぁ叔父さんってことになるよなぁ。ブラザー!」
うでの筋肉を見せつけている。
「兄弟ねぇ...いねぇよ。」
「もちろん血は繋がっていない
でもそれぐらいの関係だってことだ。」
「ふっ勝手に言ってろ、」
メタル帰ってきたものが拳では無く
想像していたのとは違う言葉に驚いて、
唇を尖らせて固まる。
「・・・大人になったなエイキチ、アハハハハ!!!」
机を叩きながら大笑いする声が店を越え、
地区一帯に広がる。
メタルの笑う声が響く中ダンッ!それ以上の店全体が揺れるような、大きな爆発音が響いた。
ギシギシとレジの奥に見える階段が
一歩一歩で歪み、軋む音が聞こえる。
あの200キロもある巨体で
自走できることに驚いた。
ボリューム満点のウェーブがかった紅色の長髪に、巨体をみっちりと包む黒のキャミソール。
「なんだいうるさくしちゃって」
一声からすでに強そうな女の声だった。
「それがエイキチがよぉ、」
メタルの声の事をなすり付けようとした言い訳を、女は目を鬼にして一喝する。
「アンタの笑い声だよ!うるさいのは!」
「オウ!スマンスマン
昨日も言ったがエイキチが女連れてきやがっってよ。」
「あら良いことじゃないか
ん?子供じゃないか、まさかおめでた?」
子供と思い拍手されるが、俺が否定するより先に、
「コイツがペドだって事だよ。」
「何ばか言ってんだい、」
変なことを言ったメタルの頭を叩く。
「だれ」
アセビに不思議な物を見たように見られていた、カトレアはゆっくりとアセビに近づき、手を伸ばす。
ふかふかの柔らかい手で頭を撫でる。
「そうだよアセビちゃん、
って肩が日焼けしてるじゃないか!?エイキチ?ちゃんとしなさい。子供でも女の子なのよ!」
ドレスの肩がけの紐から出る肌が赤く、
皮膚が乾燥している様に荒れていることに気づくと手を掴み、
勝手に化粧品コーナーに連れて行かれる。
店の商品をその場で開封して
自分の腕に塗ったり、アセビ本人につけたりして選ばせている。
少女の体を見たカトレアは
生理用品にまで手を伸ばしアセビに聞く。
「アセビちゃん生理は来てる?」
アセビは言葉自体は理解してるのか、でも自分の体のことについてはわからないように頭を傾げる。
「まだガキだぞ来てないんじゃねぇの。」
何も知らない男の俺なんかの言葉を無視して、カトレアは一つ小さめの袋に入ったナプキンをカゴに入れる。
「……一応持っておきな。」
日焼け止めも爪の切りもヤスリも、
今まで必要がなかった物や。
白い液体や顔に貼るヌルヌルのお面も、今まで用途すら知らなかった化粧品ものまで買わされた。
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