1-6 白い雲


 真っ白とは言えないけどかなり壊れていない綺麗な家が建ち並び、道も舗装され絵画に書かれているような昔の景色だった。


ハズレの方では全然見なかった車が数台走っていることに緊張していつもよりノロノロ運転する。


ハンドルと汗を握る男はメディクターの店主メタルとの会話を思い出していた。


「オイオイこんなに買わねぇよ、」

自分でカゴに入れた倍の量を勝手に積まれて

会計をし出した。


「…だまって買っとけ、奢りだよ。」


裏があるんじゃないかと思ってしまうほど珍しいことだった、いつもなら一円だってくすねたら、許されないのに。

「そうかよ、じゃあありがたく貰っていくよ。」


「先に言っとくが俺の前で女の売買に手を出して店に戻ってきた奴は、全員ケツにアメフトボールが入るようになる、もちろん横向きでな。


お前は〜 ペドなんだよなぁ。」

警告灯のように光る目で俺を見てくる。

ここで間違った答えを言ったら近くのナイフで何を切られるかわからない。


クソ嫌になる、NTR好きの変人にあんな目で見られるなんて、屈辱だった。

俺は無言で店を後にした。


「別の場所に行くか。」

俺がそう呟くと目の端に広い公園が映った。


目を見開いて急ブレーキをかけ、前後の車のクラクションを鳴らされたが構わずに車を走らせる。

バタンッ


草の生えた堤防の上から見ると、

改めて公園の広さに驚いた。



公園の端にいる人が豆粒サイズに見えるほど遠い、所々に子連れがいる、この広場でこの木の少なさだったら、

多分誰かに拾われる。


服を着替えて、夕陽に照らされて、

綺麗になった少女、アセビ。


「アセビ、お前はここで降ろす。

お前の幸せを思ってのことだ。」


アセビは無言で俺の目を覗き込んできた。


「なんか、最後ぐらいは喋ってくれ頼む。」


ガラの悪い男が少女の肩に手を置き必死にお願いをしている。

変な事に見えてもおかしく無い状況に

不思議と笑いが込み上げてきた。

「フハハハ、ダメか、まあ幸せになれy」

俺はちょっとキザに指を二つ立てて、

一人立ち去ろうとした。



「あの...やだ、」

俺の袖を握ってる小さい手に力が入る。

「やだって言っても、無理だ


俺はお前を誘拐した犯罪者だぞ

それがお前を...育てる資格なんて、」



「わかんない..よ」


ウッ

そうか分からないよな、

まだ子供に、俺は何を言ってんだ。


何も言わずに黙って捨てれば良かったのに、

無駄なことをした、体が勝手に動いてた?

ヒーロー気取りかよ。


何でだよ。


「「助けて!!」」


あの時の手を取れなかった自分と彼に重なる。



俺は足から崩れるように近づき、

絶対離さないようにアセビを抱きしめていた、涙が胸に染み込んで、抱きしめても余りある腕で頭をクシャクシャに撫でる。


「2回目だぞお前の涙見んのは、

ありがとうな

お前が俺に大人になる覚悟をくれた。」



抱きしめ合っているところに不穏な男たちが近づいてきた。

「お〜〜涙の再会か?別れ話か?どっちでも良いが、ここは俺ら黒蜘蛛のエリアなんでな、」

「公共の場だからなぁ、勘違いするようなことすんなよ、...チッお前ら外部の人間だな、リストバンドがねぇ。」


リストバンド、そう言えばそんなのを、

パスポートがわりに使っている盗賊団があったことを思い出す。


でもそんな事より…


「……ハァーお前ら空気読めよ、別れ話でもねぇしすぐどっか行くから、黙っててくれねぇか?見たら分かるだろ大事なとこなんだよ。」


目の前のガラの悪い男が、背中を向けながら話す態度に痺れを切らしたチンピラ達。


「甘ぇこと言ってんじゃねぇぞ!」

チンピラの渾身の拳が飛んでくるがアセビを抱き抱えてても、余裕で避ける。


トスッ


「アセビちょっと待っとけよ、

アイツらの足潰したらすぐ帰るからな。」

小さく着地音が聞こえて、アセビを少し離れた場所に、足を立たせると、優しい背中で夕陽に向かって肩を鳴らした。


エイキチの向かう一歩一歩が次々と早くなり

拳がチンピラの顔面にめり込む、


反応する間もない、片方の奴も腹を足で蹴ると、脚力の衝撃が貫通して、一瞬背中から足の形が見えた。


二人の男が目の前で倒され、やっと目で追えたと思ったチンピラが一人いたが、そいつの胸ぐらを掴んで堤防の方にぶん投げる。


人間の体がありえない速度で吹き飛び、

坂に頭から突っ込んでいく、明らかに骨の折れる音が鳴った。

たったの一撃を受けたものは口から目から鼻から、全身の穴という穴から血を吹き出し気を失う。

その間二秒ほどで三人以上を負傷させている。

「これが育児のストレス発散ってか?

つまんねぇな、全員でこいよ。」


俺は目に映ったやつから殺す。

バキバキボゴ!パシィン!パンッチ


雑魚兵の攻撃なんて一斉に突撃してきた攻撃を全て身体で受けきり、むしろ数秒ごとにチンピラは数が減る、

攻撃は止まらずに放たれ続けた。


二十碗、二十脚以上の十人前後の集団を一人で捌いていた。


「アイツの笑顔の方が何倍も、頑張れる。」


エイキチは血に濡れた笑顔のまま

最後の一人は特別に、

足元を整え、腰を引き、腕を構える、

8割型本気の拳を叩き込む。

腕の周りにあった空気を押し広げていきソニックブームが起こる。

到底人間の体では受けきれない衝撃が走り、ぶん殴り吹き飛ばす。


「足場が悪くて、良かったな。」

吹き飛んだ人間花火を見送って、

アセビの方を振り向くと爽やかな笑顔で、

アセビの手を、綺麗な左手で握ってバンまで走る。


「ここら辺アイツらの窃盗集団のエリアだった、逃げるぞ、アセビ!」


「うん!」


淡い色の遊具がある公園に似合わない赤一色の血みどろになった男たちを置いて、一つの黒いバンが逃げるように離れるのだった。



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