漢中の攻防?
漢中を攻撃する趙雲・張郃・黄忠・魏延らは、苦戦していた。
というよりも苦戦しているフリを装うのに苦戦していた。
それもそのはず。
軍師に龐統・法正がいて、漢中を力押しで落とせる兵力も整っている。
それでいて、相手に防げてるぞと思わせなければ行けないのだ。
趙雲「弓隊、構え。放て!」
張郃「歩兵隊、前進せよ!漢中を落とすのです!」
黄忠「縮こまって、篭ってる敵兵を脅かしてやろうかのぉ」
魏延「黄忠将軍に続け!」
曹仁「矢が来るぞ!城壁の弓隊を守るように歩兵隊を展開せよ!」
曹休「曹仁殿、騎兵隊では防衛戦でお役に立てず申し訳」
曹純「兄上、不甲斐なく」
曹仁「気にするな。皆馬から降りて、その代わり盾兵となって、敵の矢の攻撃を凌いでくれている。皆がいるから耐えられているのだ」
曹純「あ、兄上」
曹休「曹仁殿」
満寵「おかしい。どう考えてもおかしい」
曹仁「どうしたのだ満寵よ?」
満寵「敵の攻勢があまりにも緩いと感じる時があるのです」
曹真「それは、相手もここまでの行軍で、疲れが出ているからだろう」
満寵「いえ、それにしては、こちらの被害も軽傷者が出るぐらいで死人は出ていません。向こう側は、死者がいるはず。現に全く先ほどから動いていない兵もチラホラ見えます」
曹仁「確かにおかしいとは思うが。防衛する我らとしては、有難いのでは」
満寵「そうなのですが。何か、何か、見落としている気が」
動かない兵を引き摺って去って行く蜀漢軍、これが毎日続いていては、怪しまれるのも無理はない。
趙雲「龐統軍師、そろそろ武将の1人や2人、討ち取られたフリを」
樊玉鳳「ダメよ子龍。私たちの役目はあくまで、この戦線の膠着及び現状維持。即ち、どちらの被害も出さないことよ」
張郃「樊玉鳳殿の言葉もわかりますが。しかし、流石にこう毎回同じ展開では、そろそろ相手に怪しんでいるものが出てもおかしくはないかと思います」
法正「うむ。確かに頃合かもしれん。城門手前に投石を開始、心因的圧力を与えるのが良かろう」
魏延「法正殿の言う心因的圧力ってことなら虎熊の猛獣部隊でも良いのでは?」
龐統「魏延殿の言う通り、躾けられた優秀な獣たちなら可能かもしれないねぇ。だがアッシなら。法正殿の策を採用して、投石による攻撃を開始、夜は太鼓を鳴らして、奇襲を警戒させようかねぇ。やれやれ、アッシとしたことがこんなことに付き合わされるとはねぇ」
虎熊「劉丁殿のことはわかんねぇけど。これが最善だって言うなら従うのが漢ってもんだ。あのゴロゴロシチューが食べたいわけでは、決してないのだ」
魏延「言葉に出てんだよ虎熊。まぁ、確かに董白殿の作るしちゅーとやらは絶品だ。聞くところによると劉丁殿が作り方を教えたらしいが。何処で、そんな情報を仕入れたのか」
龐統「へぇ、それは興味深いねぇ(前に孔明から聞いた劉丁殿が未来人ってのは、あながち間違いじゃないのかもねぇ。アッシとしては、眉唾物だと話半分にしてたんだけどねぇ。ということは、本当にこれで魏内部で内乱が起こるのかねぇ。こちらとしては、兵力を増強して、疲弊した敵を叩くなり、どちらかに肩入れした後、まあ片方を潰すなり、色々方法があるから楽できるってもんだねぇ)」
法正「ゴホン。では、明日より、昼間は投石を開始、夜は太鼓を打ち鳴らすということで良いな?」
全員が頷くと同時に先程引き摺られて来た兵が起き上がる。
蜀漢兵士「ふわぁ。よく寝た。あっ!?その、いやぁ。やられるフリも楽じゃないなぁ」
趙雲「ハハハ。散々寝ていて、よくそんなことが言えるね。明日もしっかりとやられ役してくれるのかな?」
蜀漢兵士「も、も、も、勿論です趙雲将軍!」
この蜀漢の攻撃に対して、怪しんでいた満寵はさらに混乱するのである。
曹仁「馬鹿な!?投石機が多数出現しただと!?」
曹純「あぁ。物見の報告からだ。間違いない」
満寵「昨日までのは、負けてるように装って、これらを隠れて準備していたということか。しかし、あのような大きい物、隠しておけるはずが」
曹休「今こそ、騎兵の出番かと。我々に命令を曹仁殿!」
曹洪「投石が飛んできた。防御陣形を展開!盾を前に構えて、着弾に備えよ!」
城の手前数メートルのところに着弾して、岩が破片のように飛んでくるのを盾で防ぐ。
幸いなことに壁に当たらなかった事から被害は出なかった。
しかし、粉塵が巻き上がり、その後ろから獰猛な獣たちが姿を現したのである。
曹仁「蜀漢の猛獣部隊か!?」
猛獣の咆哮を聞き、尻もちをついて盾を落として、怯える魏兵たち。
曹休「これでは、投石機の破壊など無理だ」
曹純「兵だけでなく民までもが怯えている。離反者が出て、城門を開け放たれては終わりだ。兄上、取り締まりの許可を」
曹仁「ならん。ただでさえ苦労を敷いている民を取り締まるなど。もはやこれまでかもしれん」
満寵「諦めるのですか?本当にそれで良いんですか?曹丕様のことも何もかも投げ出して、魏を蝕む害虫に好き勝手されて、それで良いのですか?」
曹仁「わかっている。曹丕様が臣下の子供や妻を人質に取るなど誰の目から見ても誰かの入れ知恵があったのは明らかだ。賈詡か司馬懿であろう。殿が気をつけるべきと言っていた司馬懿が怪しいのだろう。しかし、事ここに至っては」
満寵「それでも耐えていれば、何か好転するかも知れません!決して、生きることを諦めてはならないのです!」
曹仁「!?そうだな。満寵の申す通りだ。民たちを含め投石が城門に届いた時のことを考え、後方に下げるのだ!」
こうして、夜を迎える。
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