えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるために尽力します。

曹操、漢中へ向かう

　許昌から司馬懿が撤退したことで、呂布軍は許昌を難なく制圧することに成功した。

　そして、曹操は従兄弟であり、この許昌で挙兵した際に駆け付けてくれた曹仁らのことをどうするべきか悩んでいた。

　曹操「先ずは、呂布殿。許昌の奪還に手を貸してくれたこと感謝する」

　呂布「構わない。人質を取るような真似をする輩が気に食わないだけだ」

　郭嘉「武力一辺倒と言われ鬼神と言われる男からの言葉とはとても思えませんね」

　呂布「所詮、人が造った虚像と実態は違うということだ」

　荀攸「フン。俺は未だに猪武者だと思うがな」

　荀彧「僻むなんて荀攸らしいですね」

　荀攸「叔父上、俺は別に僻んでなど」

　曹操「劉備は実に良い臣下を得たようだな。それでこそ俺が認める好敵手だ」

　呂布「まだ、熱い想いがあって何よりだ」

　典韋「テメェ。殿になんてこと良いやがんだ」

　曹昂「典韋殿、犬みたいに噛みつかないでください。それにしても父上、母上が安全な場所にいて、良かったですね」

　曹操「確か荊州の奥地にあるという診療所で療養生活してるのだったか？」

　曹昂「はい。元気になった曹鑠には、母上の側に付いてもらっています」

　曹操「それは朗報だが宮中に残ったものたちは」

　呂布「そっちも問題ないと思うが既に田豊殿が長安を徐庶殿が洛陽を制圧した頃だろう」

　郭嘉「そんな、一体いつの間に！？長安は曹丕様の本拠地、防備も相当なもの」

　呂布「義賢の奴は、攻めるとなったら生半可な真似はせん。涼州の玄関口である武都・漢の都である洛陽・李傕らが洛陽を焼いた際に遷都した長安・そして曹操殿が本拠地とされている許昌・豊かな土地があり民も活気あふれる弘農。義賢の奴が兵力を出し惜しみせずに同時侵攻を命じた地だ」

　郭嘉「成程。司馬懿が撤退したのは、既に包囲されつつあったからこの地での防衛が得策ではないと判断したからでしたか」

　呂布「この地を直轄地に取り込みつつ、さらなる北上をと考えては居ないがな。さて、義賢の読み通りなら次どうなると思う？」

　郭嘉「おそらく責任の押し付け合いが魏内部で起こるでしょうね」

　呂布「そうだ。魏王と司馬懿の間で戦が起こる。兗州に引いた司馬懿と」

　曹操「冀州に引いた子桓か」

　呂布「勿論、我々は魏王に付くなどということはしない。人質を取る進言をしたのは、義賢の読み通りなら司馬懿だろう。だが、証拠がない以上、劉備様が魏王に味方することはできない。即ち、我ら蜀漢は静観する。それは、つまり曹操殿の御子息を見殺しにするということだ」

　曹操「当然の判断であろう、な。劉備は民の信頼と安全という最大の武器を掲げ戦い抜いている。俺の掲げる力による武力統治とは、かけ離れている。しかし、親として我が子を見殺しにすることなどできん」

　呂布「曹操殿なら。そう、言うと義賢が言っていてな。この状況で、魏国の領土として孤立してるのに奮戦している地が1箇所ある」

　曹操「何だと！？そのようなことができる将など。まさか！？」

　郭嘉「曹仁殿に満寵殿が付いてるならあり得ない話じゃない。後は、攻め寄せる側もそれなりに手加減してるか。かな？」

　荀彧「奉孝。手加減とは、何のことかな？私たちは、曹操殿を助けるようにとしか言われていないので。そのために彼らの力は必要なのでは無いですか？」

　郭嘉「文若。君ってやつは、全く。要は、曹操殿が勝手に曹丕殿を助けるように持っていきたいわけだね」

　荀攸「フン。回りくどい言い方をしておいて、バレてるようだぞ叔父上」

　荀彧「まぁ、これぐらい読まれるのは当然ですよ。相手は、奉孝なのですから」

　荀攸「負け惜しみとは、叔父上らしくもない」

　荀彧「最近、妬みや僻みが酷くなってるようですよ荀攸は」

　郭嘉「蜀漢は、魏の真の主が決まるまで待ってくれるってことで良いのかな？」

　荀彧「いえ、我が蜀漢は徐州より青州に攻め込みます」

　郭嘉「青州に？それは、司馬懿側として参戦するってことかな？」

　荀彧「いえ、兗州の司馬懿。華北の曹丕。青州はどうするでしょうか？」

　郭嘉「全く、意地汚いよ文若は。青州を治めている義理堅く慎重な鮑信殿なら中立を貫くってわかっていて、説得で青州を分捕ろうなんてさ」

　荀彧「司馬懿に取られるよりは幾分かマシでしょう？」

　郭嘉「それもこちらが兵を出せないことを良いことにですか？」

　荀彧「えぇ。最後は内乱で疲弊した魏を暖かく見守っていた我ら蜀漢が平らげるんですよ」

　曹操「フフフ。ハッハッハッハ。面白い。そうなれば、俺は最後まで死力を尽くして、劉備と雌雄を決しよう。英雄同士、最後の戦いの場を用意してくれるのなら青州など蜀漢にくれてやる。だから兗州には手を出すなよ」

　荀彧「えぇ。構いません。劉丁殿からは、曹操殿の本懐を遂げさせてあげたいと言われていますから」

　曹操「フッ。劉備に過ぎたる弟ありか。真っ先に引き抜くべき人材であったわ。ハッハッハッハ」

　荀彧「無理ですよ。あの人は、狂気染みてますから。身を削ってまで」

　曹操「何か言ったか？」

　荀彧「いえ、それよりも漢中で耐えている面々を迎えに行かなくて良いのですか？」

　曹操「ふむ。いざ、顔を合わせるとなるとな。喧嘩別れではないが。どんな顔をして、会えば良いかとな」

　郭嘉「何も考えずに会えば良いかとお互い信じる者のために、別れたものが救いたい者のために合流するだけのことです」

　曹操「フッ。そうだな。久々にアイツらの顔を拝んでやるとしよう」

　こうして、曹操は漢中へと向かい。

　呂布は司隷を制圧することに成功し、甘寧・田豊・沮授・徐庶らと共に来たるべき青州攻略のため暫しの休息を取ることとなるのであった。