義賢、馬超を訪ねる

 田豊や沮授に心当たりがあると言った義賢だが、その者が治めているのは涼州であり、友好相手とは言え、容易に近づく事はできない。


 義賢「困ったな。うっうぐっ。ハァハァハァハァ。まだ持ってくれ俺の身体。これは。しかし、いや今はそんなことまだ考えられないか」


 俺の頭に流れ込んできた夢のようなものは、馬超が鍾繇の計略にハマり、漢中に向かい、その惨状を見て、涼州から誘い込むための罠だったと知り、若い少年のような見た目の軍師らしき人と話して、劉璋に付くという流れだった。


 義賢「本来ならこれを変えるべきだ。しかし、そうすれば馬超殿と接触する機会が失われる。わかっていながら見過ごすことがこれほど辛いこととは。領地を失うことがどれほど辛いかなんて、わからないわけがない。でも、俺は敢えてそれを選択するよ。このタイミングでこの夢のような感覚を味わったことに意味があると信じて」


 時が流れ、益州を制覇して、数日後。

 曹丕が魏の国を建国して、魏王を名乗り、これに反抗する形で、孫翊が呉王を、そして、兄上は臣下たちに詰め寄られ、悩んでいた時、霊帝が現れて、即位する形で蜀漢が建国され、軍事を司る首相として、兄上が就任した。

 それらを見届けた後、俺はようやく馬超殿を訪ねることができた。


 義賢「馬超殿は、御在宅でしょうか?」


 王異「あぁ。凄い。朝からだなんて。だめぇぇぇぇぇぇ」


 楊笙鈴「そんな、もう復活!?ダメです。朝からこんな濃厚なのを受けたら妊娠しちゃいます。いやぁぁぁぁぁぁぁ」


 中から女性の悲鳴が!

 馬超殿、まさか!


 義賢「失礼する!」


 王異「きゃっ。誰?あっ劉丁殿、こんな姿で申し訳ありません」


 楊笙鈴「もう腰がガクガクで立てません〜」


 馬超「2人とも本日も良かったぞ。ん?劉丁殿か。何用だ。まぁ、入れ入れ」


 そこには、産まれたままの姿の馬超・王異と楊笙鈴がいた。

 馬超は、まだやり足りないのかビンビンにいきり立たせていることを除いて、まぁまともか。

 って、んなわけあるか!

 えっ!?

 羌族だけでなく氐族の血も流れている馬超殿は、性に奔放なのか?

 違う違う。

 とにかくその雄々しい奴をしまってくれ。


 馬超「おぉ。これは失礼した。俺の物が満足していないようだ。2人ともお掃除はどうした?」


 いや、見せ付けるなよ!

 って思いっきり2人にぶっかけてるし。

 いや、出すなよ。

 いや、一向に小さくならんやん!

 これ待ってたら良いの?

 もう、何なんだよこれ。

 御色気シーンとか必要ないんで、やめてくれます?

 って、誰かに言われるだろうが!

 って、誰にやねん!

 やっと終わった。

 2人ともグッタリやんか!

 アンタ、やりすぎやで馬超はん!


 馬超「劉丁殿、先程は、失礼した。しかし、2人の裸を見ても勃たないとは、アレか?」


 義賢「俺は、妻一筋なだけだ。そもそも、来客が来てるのに続ける神経がおかしいと思うのだが」


 馬超「そんなの我ら一族では当然だぞ。父が母とやりながら臣下の話を聞いてたこととかな」


 義賢「いや、それは普通ではないので、ここではやめるように」


 馬超「そうか。まぁ忠告、感謝しよう。して、どのような要件か?」


 義賢「巴郡の復興に尽力してくれていること感謝する」


 馬超「我らは寄る辺なき客将の身分、当然のことをしているだけのこと。感謝される程のことではない」


 義賢「それでも、馬超殿のお陰で多くの民がまた安心して暮らせるようになるのも確かなこと。ゴホッゴホッ」


 馬超「そうなら良かった。ハハハ。しかし、俺とそう歳が変わらんのに咳き込むとは。ん?血か?まさか血を吐いたのか?何故、無理してここに来た。直ぐに医者を」


 義賢「それには及ばない。俺の命は、もう長くはない。その前に兄上に天下を一刻も早く統一してもらい民を第一に考えた政治を行ってもらいたいのだ。そのために残りの命を燃やし尽くすと決めた」


 馬超「その覚悟は、褒めるが死んでも良いなどと考えるな。家族が死ぬのを黙ってみることほど苦痛なことはない。すぐに医者の元に」


 義賢「療養すれば、今より少しは長く生きられるだろう。だが、天下は遠のくだけだ。この間にも司馬懿は着々と準備を進め、我らが危機に。ゴホッゴホッ」


 馬超「決意は硬いようだな。わかった。これ以上は、何も言わん。それに劉備殿に訪れている危機とは何だ?」


 義賢は、馬超に全てを語った。


 馬超「未来人とは、大層な嘘ではないのだな。かつて、張飛殿・関羽殿・趙雲殿・黄忠殿と共に呂布と戦った時、不思議とお互いの考えていることが手に取るようにわかる感覚だった。成程、我らはお前たちの未来では、蜀の五虎将として、武威の象徴となっていたか。陽動だけで良いのか?俺は、鍾繇には涼州を追い出された借りがある。そのまま涼州に攻め上がり、奪還しても構わないのだが」


 義賢「本当の主攻となると?」


 馬超「騙すならそれぐらいしないと釣られはしないだろう。バレる陽動など無意味だと俺の軍師ならいうだろう」


 どこから現れたのか少年のような見た目の青年が現れた。


 姜維「お初にお目にかかります。姜伯約と申します。誠に勝手ながらお話は聞かせていただきました。その上で提案なのですが、より主攻に見せるため劉義賢殿にも我らと共に出陣をしていただきたいと思います」


 義賢「麒麟児!?」


 姜維「その名で呼ばれるのは少し恥ずかしいのですが。先程の返答は如何ですか?」


 義賢「俺のことを聞いて、何故、信じると?」


 姜維「人質を取るなど人にあらざる蛮行です。そのようにして、戦わされる者たちを救いたいという気持ちに心が打たれただけのことです」


 義賢「協力に感謝する。望むのなら俺も兵を率いて、その陽動に加わろう」


 姜維「では、話は纏まりました。決行は、呉王が動いた時で、良いのですね?」


 義賢「あぁ」


 馬超「さて、我ら馬一族を舐め腐った鍾繇に鉄槌を下してやろうか」


 姜維「殿、あんまり暴れすぎませんように」


 こうして、馬超は陽動を引き受けてくれたのだった。

 準備が整いつつある中、俺は最愛の人にも自分のことを話すことにした。

 恐らく、最愛の人をこの世界に置いて先に逝くことになるだろう俺がそれを告げるのは、あまりに残酷だろう。

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