二十二年 九月   「浜辺の焚火」

 お題の写真は夜です。屋外と思われます。大きさも形も不規則な石で組んだ風の炉の内側に、不格好に積み重ねた薪が炎を上げて燃えています。手前には、この火を熾した男性らしき人物の片足だけが映り込んでいます。お題に浜辺とあるので浜辺と分かるくらいで、これ以外の情報はありません。


 夜明け前焚火を囲む漁師の背☆並選


 写真よりも大きな焚火を想像しました。夜明け前の浜辺です。漁師たちが体を暖めようと燃える焚火に無骨な手をかざしています。夜は未だ明けず、燃える炎を囲む男達の背ばかりが黒々と火に映えています。季語は「焚火」で冬です。


 

 潮騒やときに焚火の爆ぜる音☆並選


 潮騒というのは満ち潮の立てる大きな音のことです。ザワザワと波が満ちてくるときの音です。その音が迫ってくると、焚火がパチパチと爆ぜる音以外は何も聞こえないという音だけの句です。詳しくはネタバレになるので書けませんが、フランスのモン・サン=ミッシェルを舞台にした、アーロン・エルキンズの「古い骨」というミステリーが思い出されます。季語は前の句と同じく「焚火」です。庭焚火、朝焚火、夕焚火、夜焚火、焚火跡などの傍題があります。



 夜通しの岬の焚火悪天候☆☆人


 嵐の近づく闇夜のこと。海に突き出た岬の暗礁に、船が知らずに近づけば座礁してしまいます。昔のことで船との通信手段は何もありません。急を知らせる為には夜通し火を焚くしかありませんでした。風は次第に激しくなり雨も混じり始める。どうすれば焚火を守れるのか。船の運命や如何に。―― 続く。

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