二十一年 八月  「蜻蛉と青空」

  秋茜あきあかね今年も過ぎゆく西の窓 (選外)


 西の窓とは病室の西向きの窓です。……と書かなきゃ、誰にも分からないですよね。下手なというか、いろいろ足りない句でした。

 季語は「秋茜」(赤トンボ)。母が入院した病室の西向きの窓からは、秋になると秋茜の飛び交う姿がよく見えました。同じ病院に何度も入退院を繰り返していたので、秋には秋茜に出会うのが楽しみになりました。それにしても秋茜、西の窓とくれば、これは夕陽の句だなと思いますよね。「青空」の要素がさっぱり抜けてしまいました。選外でした。



  蜻蛉とんぼ寄りくる磨き込まれたボンネット ☆並選


 季語は「蜻蛉」です。街中まちなかの蜻蛉は駐車場でよく出会います。特に水辺が無い地域では乗用車が(特に黒や紺色の車体)くもりひとつ無くピカピカになるまで磨き立てられていると、鏡のように自分を映すボンネットを水面と見間違えて産卵する仕草を見せるのです。なんて不憫なんでしょうか。磨き上げた車体がまさか蜻蛉の恨みを買うとは思いませんよね。バードストライクも同様ですが、人間以外の痛みにも配慮できてこその文明だと思います。



  夕星ゆふづつを見つけた指に秋茜 ☆並選


 季語は「秋茜」です。夕星とは「宵の明星みょうじょう」(明け方ならば「明けの明星」)と呼ばれる金星のことです。太陽、月に続いて、三番目に明るい星(ほぼマイナス4等星)ですから、暮れゆく空に早々と輝くので「一番星」と呼ばれることもあります。その一番星を「見つけた」と指差したら、その指先に秋茜がきてとまったよ、という句です。


 前回の輝かしい成績とでは別人のような並選二句にボツ一句。でもこれが実力。結果を求めてここに来たわけじゃない。俳句をもっと楽しめるように学びに来たんだ。挫けている暇はありません。

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