二十二年 六月 「紫陽花」
日本がまだ鎖国時代だった頃。
珍しく付き合いのあったオランダの軍医として日本にやってきたシーボルトは、日本の植物の多様性に感嘆し、仲良くなった日本人の協力で調査を始めます。シーボルトの持つ西欧の医学や情報と引き換えにして。
シーボルトは一番気に入った美しい花に、愛する妻の名・瀧と名付けました。つまり、 学名 HYDRANGEA OTAKSA(ハイドランゲア・オタクサ → おたきさん……親父ギャグか) は紫陽花のこと。日本の固有種です。後にシーボルトはスパイを疑われ日本を去りますが(本当にスパイだった)いつまでも、お瀧さんのことを愛していたという、哀しいロマンスに包まれた紫陽花を詠んでみた。
紫陽花をしゃがんで見ている河童の子
紫陽花の花房を愛しげに抱っこする、梅雨の申し子、河童の笑顔が目に浮かびました。キュンキュンしたのですがボツ。トホホ。
紫陽花やペアで買い足すマグカップ
新婚カップルの引越支度です。仲睦まじい二人は秋には結婚する予定です。食器なんて何でも良いようなものですが、やはり二人一緒じゃなきゃね。でも結婚祝いに紫陽花柄のものは避けた方が無難です。花言葉が「浮気」ですからね。
紫陽花の雨や実朝公の下駄 ☆☆
鎌倉の鶴岡八幡宮を訪ねた折りのこと。季節はちょうど今時分で、雨に濡れた紫陽花が豊かな花房を風に揺らしていました。大きな賽銭箱の前で祈願を済ませ、境内の砂利を踏んで戻ろうとすると、ふいにインスピレーションが湧きました。
わたしたちの前を歩く若武者の五、六人。名のある武家の師弟で、華やかな狩衣が似合う若造たち。足元は下駄。それぞれに家来が重たそうな傘をさしかけています(傘が一人で開閉できるようになったのは江戸時代です)
1,800年くらい前、バリバリの文系皇子だった源実朝は、こうして紫陽花を愛でながら、この境内を歩いたのだろう。そう思うと近しい友だちのような気がしてきます。たまたま父親が征夷大将軍だったばかりに若くして暗殺されてしまう悲劇のプリンス。
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