002  転生したらやりたいこと

目を開けるとそこは真っ白な空間だった。


んと・・・ここは・・・?

死後の世界・・・なのかな?

でも、よく聞くご先祖様の『お迎え』は来てないし・・・


もしかして、待機場所みたいなところなのかな?

あってもおかしくはないよね。


「おはようございます。塩野義廉太郎さん」

「あ、おはようござ・・・え?」


あまりにも自然に挨拶してくるから普通に返しかけてしまった・・・

聞きなれない女性の声にびっくりして振り向くと、


「どうも、私は異世界で働いている天使でございます。この度はあなた様に謝罪と賠償をしに参りました」

「は、はあ・・・異世界?謝罪?賠償・・・?」


何のことだろう?特に迷惑をかけられた覚えはないんだけどなあ。


「あなた様が生前罹っていた病についてです」

「!あの病気と何か関係があるんですか・・・?」

「はい。私たち天使には世界間で魂の移動を行うという役割がありまして、基本的には一つ一つを丁寧に移動させるのですが・・・」

「何か不具合があった、ということですか?」


まあ、不具合ならしかたないよね

どんなに対策して注意してても、起きるときは起きちゃうから。


「いえ、不具合というわけではないのです。実は災害のように短時間で沢山の命が現世から帰ってくる際に、天界側がパンクしないよう水際対策として一度複数の魂を異世界に移動させることがありまして。世界間を超えるのはかなりの負荷を伴うものなので、基本的に天使が一つ一つ抱えて運ぶのですが・・・」



緊急時にはそうはいってられない、と。

多分、危険を承知で複数を一度に抱えたんだろう。

つまり、複数抱えて持っていくときにその負荷から守り切れずに僕の魂がダメージを受けたから先天的に難病にかかった。ってことかな?


まあ、それなら仕方ないよね。最善を尽くしてもできないものはできないし。


「・・・あなたほど物分かりがいい人は初めてです」


あれ?声に出してたっけ・・・いや、たぶんだけど心が読めるんだろう。

こういう人神や天使たちならありえそう。


「・・・あれ?もしかして私、必要ない・・・?」

「あっいえいえそんなことは!あ~、えっと、その、そうだ!賠償って・・・?」

「ああ、そうでした。その賠償についてなのですが、あなたは私たちが管理する世界で快適で健康な一生を送っていただきたいのです。魔法がある世界で、命の危険なくやりたいことをゆっくりしてほしいのです。」

「は、はあ」


やりたいこと・・・やりたいこと・・・やりたいことかぁ。

う~ん・・・特にないなあ


「でも、まずは病気にかからない健康な体が欲しいです」

「なるほど。他に思い当たりませんか?例えば、ゲームとか・・・」

「う~ん。、ゲームなんてしたことがないですし・・・」


前世は生きるので精一杯な時期と生きるのを諦めた時期しかなかったから、ゲームなんてする時間も気力もなかったんだよなあ。


「う・・・申し訳ありません・・・」


あぁ!?そうだった心読めるんだった!


「いえいえ!その・・・ほかの例ってありますか?」

「フォローまでしていただいて、情けないです・・・ほかは、例えば学問とか」

「学問、ですか・・・」


学問?学問かあ。数学とか物理とか化学とか・・・化学?

もしかして僕、化学がしたい・・・?

・・・これだ!!


「あ、ありました!」

「本当ですか!?教えていただいても?」

「化学です!あと、異世界っぽいことを言うなら錬金術とか!」

「錬金術・・・なるほど。わかりました」


錬金術、興味あったんだよねえ!


「それでは、廉太郎さんのやりたいことを加味して、所持スキルを選ばせていただきました」


錬金術アルケミーLv10】

身体強化ビルドアップLv10】

自動回復オートリカバリーLv10】

光速演算ケイLv10】


・・・あれ?なんか最初から全部レベル10なんだけど。


「え~っと、この所持スキルのレベルっていくつまであるんですか?」

「10ですよ?」


最大レベルだったぁ・・・まさかとは思ったけどそのまさかだったぁ・・・


「なんでまた、そんなことを・・・?」

「私たちからのお詫びの気持ちです」

「あ、はい。」


う~ん、断れないやつだなこれ・・・


「それと簡単なスキルであればあと3つほど選べますよ」

「え?あっはい。え~っと・・・?え?」

「この中から選んでください」


そして大きいディスプレイみたいなボードをくれた

そういうことじゃないんだけどなあ・・・まあいいか


改めて見てみると【剣術】とか【火属性魔法】とか異世界あるあるなスキルがいっぱいある。

迷うなあ。魔法がある世界らしいけど、どうせなら魔法がなくても生きていけるかチャレンジをしてみるのもいいかもなあ。

やりたいことをやってほしいっていわれたし。


う~んとそれじゃあ、よし!この3つにしよう!


「【武術】と【収納】と【冷静】にします!」

「魔法のスキルあありませんが、これでよろしいですか?」


わかってて聞いてますね?と視線で問いかければ、ニッコリ笑顔が返ってきた。

うん。だろうと思った。


「はい。これにします!」

「わかりました。それで、転生・転移についてですが転生と転移を選べます。穏やかに過ごすことを考えるのなら、転生にして転生先を貴族にしていただくのがおすすめです。」


う~ん、そうだよね。でも・・・健常者が思う不自由な生活もしてみたいな。


「転移でお願いします。」

「・・・よろしいのですね?」

「はい。転移先は・・・取り敢えずすぐ死ぬ危険のないところでなるべく人がいないところにしてください」

「承知しました。では転移ということで、姿や名前が決められます。私の方で決めることもできますが、いかがなさいます?」


容姿かあ・・・特にどんなのがいいとかもないなあ。

イケメンはイケメンで辛いこともあるって聞いたことあるし。

まあでも名前は決めたいよね。なにせ一生使うんだから。


「容姿はお任せしますが、名前は決めさせてください」

「はい。・・・私にお任せしてしまいますと、どうしても自分の好みが出てしまうのですがそれでもよろしいのですか?」

「え?はい。いいですよ。・・・あ、でもその・・・顔は人並みに整っているとありがたいです。」

「承知しました」


・・・ちなみに、


「天使さんの好みってどんなのなんですか?」

「はい!?私の好みですか!?な、何故そんなことを?」

「いえ、知っておいたほうが向こうで変なことをしなくていいかなって」

「え、ええっとですね・・・かわいい系、です」


天使さんが真っ赤になってしまいました。


「なるほど。わかりました」

「うう・・・恥ずかしい・・・コホン!それで、名前は決まりました?」

「あ、まだでした」


名前かあ・・・どうしよう。廉太郎でいくのも味気ないしなあ・・・

あ、化学物質からパクっ・・・参考にしてみよう。

だから・・・ニトロノールとかいい感じかも


「ニトロノール、にします」

「承知しました。年齢はいかがなさいますか?」

「う~んと・・・向こうの世界で成人してすぐくらいで」

「では15歳にいたします」


へえ、15歳で成人なんだ。


「では、そろそろ転移していただきます。こちらへどうぞ」

「は、はい」


うわあ・・・でっかい魔方陣がある・・・


「ああ、それと伝え忘れていたのですが、転移を選んだ方は魔力量カンスト、運が人の10倍になる特典が自動で付与されます」

「・・・え?はい!?」

「では、いってらっしゃいませ」

「あ、ちょっ――」


それさらっと言っていいことじゃないってぇ!!!


そんな思いむなしく、目の前は真っ白に染まるのだった・・・


―――――――――――



「ふふっ、なかなか面白いものが見られました。」


いきなり好み聞いてきたお返しです!!・・・にしてはやりすぎたかな?

まあ、彼なら力を悪用することはないでしょう。

命を失う怖さを知っている人ですから。


「・・・しかし、彼はゆっくりできるんでしょうか?」


もしできたとしても、ゆっくりはしないでしょうねえ。

なんやかんや動いてそうです。


まあ、しばらくは見守っていましょう。・・・面白そうですし。














次回ヒント:Hg、Fe

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