SA 15. お仕事開始
5
古人に曰く、情報は足で辿るものだ。
今回名目上サラたちの指導係となったアンジェラはそう語った。
この面倒くさい案件へ赴くサラたちを、歩きスマホにより自ら車に飛び込み事なきを得たルカと、そんな彼のお守り役となったクロードは笑顔で見送ってきて、サラとダンはイラっとしたが、
「わたしの昇格初任務よ、ありがたく受け取れ!」
と、アンジェラが持参した始末書に項垂れていたので溜飲は少し下がった。
病院前で車を待っている最中、ダンがアンジェラに声をかけた。
「情報はいくらか送られてきてはいるのか?」
アンジェラはメモ帳を取り出した。
「送られてはきているのですが突然の依頼だったので、公的なニュースになっている内容とほぼ変わりませんね。経過としては、午後八時、ミケラル大通りに面する自社ビルからオリヴェイラ氏が退社。午後二十三時四十九分、自社ビルから約八百メートル離れたビル群の狭間にある空き地にて発見。ボロ雑巾でしたが幸い深い傷はなかったようです」
「まあ、数日で強行突破できる元気はあったからな」
ダンの目が遠くなる。サラが彼の肩を叩く。オリヴェイラの暴走を知らないアンジェラはきょとんとし、再びメモ帳に目を落とす。
「スマホ、金品は持ち去られていました。クレジットカードの使用形跡は今のところありません。スマホも電源が切られているままのようで探知不可です」
シルバーの乗用車が到着する。助手席の窓が下がり、ダンの部下の男が顔を覗かせる。
ダンが助手席へ入り、サラとアンジェラは後部座席へ。
「ターゲットに関しては、こちらもニュースになっている以上の情報は今のところ入っていません。これから七班の者で一応氏に聴取を取るつもりですが、氏の証言もあまり期待できないかと」
車内に入ってからもアンジェラの報告は続く。車がゆっくりと動き、病院外に出て、ひとまず交通の妨げにならない場所へ停車する。
サラは上目にアンジェラを見た。
「ごめん、アンジェラ。わたし、ニュース見てない」
ダンがこれ見よがしに溜め息を付く。運転手がサラを一瞥する。アンジェラだけが苦笑してくれた。
「ターゲットは四、五名のグループ。全員若い男性」
「あの坊ちゃんは顔は見てないの?」
「いきなり周りを囲まれて、下を向いて歩くように言われたらしいよ。気が動転していてターゲットが靴を履いていたことくらいしか覚えてないっぽい」
「役立たずが」
「特徴くらい見ていてほしいよね」
アンジェラまでも愚痴った。
「それで、これからどうするの?」
サラがアンジェラに訊ねる。
「まずは現場に行ってみようかなって」
「今でなくて、夜の方がいいんじゃないか?」
運転手もアンジェラを振り返る。
「今でもいいと思う。ちょうど昼休憩の時間だから、氏の所の社員も含めて噂とか聞けるかもしれない」
運転手がダンに確認をとり、ハンドルを取る。車がゆっくりと走り出した。
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