SA 14. 同行者

「一週間以内のスピード重視なんだよね。それなのにカストやリックがいない状態で、わたしたちに何ができるんだろ?」

 特務隊の情報部が助っ人に入っていないところを窺うに、A隊所属の情報部でこと足りるとの判断であろうが、彼等とてそこそこせわしくなくすることだろう。そんな中で不得手者が引っ付いて歩くというのは非効率的なのではないか。

「ボスはターゲットについて目星をつけているとか?」

 クロードの言にも説得力が乏しい。もしそうであるのならばこんな回りくどいことはしないだろう。

「それに隊長も少し変」

「アイツが俺たちに何か隠しているということか?」

 ダンの声が固い。

「そういうことじゃなくて、いつもならA以下に落とした案件はノータッチだったじゃん。ボスからカストやリックを出せって何回言われても貸さないくらい、他部隊に下りた案件に特務隊を関わらせるんじゃねー状態だったでしょ。なのになんで今回は条件付きとはいえ、行ってこいなんだろうって」

 ダンも手で口を覆い黙した。クロードは腕を組み、ルカは天井を見上げながらコーヒーを飲む。

 目的は情報収集ではないのだろうか。

 沈黙が下りる病室に突然、一定の音が響いた。

 サラたち三人がルカを見遣り、ルカが首肯する。

「どうぞ」

 ルカの許可にドアがするりと開いた。

 ドアの向こうから現れたのはラフな格好の女性。歳はサラと同じ16,7くらいで身長も同じくらいに見える。小麦色の肌に、艶のある黒い髪、真っ直ぐで太い眉、彫りの深い顔立ち、可も不可もない美醜。印象に残りづらい人物。

 ダンが観察している最中、サラはソファーから離れ、彼女へと駆け寄った。

「アンジェラ!」

 現れた女性にサラは飛びついた。

「サラ! 久し振り!」

 女性は明るい声でサラを受け止め、二人できゃっきゃと飛び跳ねる。

「なになに、どうしたの!? なんでここに?」

「仕事に決まってんじゃない! 昇格よ、昇格!」

「やったじゃん! もしかして、もしかしなくても!?」

「もしかしてだよ! ついさっき連絡来たの!

「やったー!!」

「雑用を押し付けてきた先輩に感謝だよ!」

 小花が飛び散っていそうな女子特有の空気。ルカは平気そうにコーヒーをたしなむ。クロードは首を傾げてダンを見る。彼の目に曰く「誰?」である。

 ダンが当事者を呼んだ。

「サラ」

 サラは飛び跳ねるのをやめた。ついでに開きっぱなしのドアも閉めた。

 サラと飛び跳ねていた女性も気恥ずかしそうに笑うと、威儀を正す。

「今回、ヒューストン、フィルトン両名と任務に当たることとなりました。実行部A隊第七班所属アンジェラ・ロザレス・クルーズと申します。よろしくお願いします」

 アンジェラはにこりと笑った。

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