SA 11. 条件は二つ

 ダンは再び俯くと肩で息をして、もう一度肩で息をして、天井を見上げて息を吐き、ようやくオリヴェイラを目に据えた。

「引き受けましょう」

 彼は静かにそう告げた。

 オリヴェイラは目に見えて顔を輝かせ、

「ありがたい! よろしく頼む!」

ダンに握手を求めた。

 しかし、ダンは手を膝の上で組んだまま、オリヴェイラに応じようとはしない。

「ただし、条件を」

「条件?」

 ダンが右手の人差し指を立てた。

「本日を含め一週間経ち、俺たちが依頼を完遂できなかった場合は他所を当たってください。この場合でしても前金は返しません」

 オリヴェイラが口を開きかけるのを、ダンは二本目の指を立てて黙らせた。

「そして、本日から一週間、そちらから俺たちへの接触は控えてもらいたい。もちろん、外で待機している方も含めて」

「情報はたくさんあった方が早くすませられるはずだ。俺からの情報は必要ないということか?」

 オリヴェイラは不服そうではあったが、

「もちろん、こちらからお話を聞くことはありますが、それほど覚えていないのでしょう?」

というダンの言葉でバッサリと切り捨てられた。

「では、前金については本日中にお知らせするので、指定の方法で納金をお願いします」

 話は終わりだとばかりにダンが立ち上がる。

 けれどオリヴェイラはソファーの背もたれへと逆戻り、自身の手のひらをじっと見つめていた。

 サラが不審がってダンを見遣れど、ダンは首を横に振り、肩を落とすのみ。彼の表情が非常に面倒くさいと訴えている。まるで子供の駄々こねのようだ。

 一分、二分と経ち、もう関わりたくないと匙を投げかけているダンに代わり、ルカが咳払いをして沈黙を破った。

 オリヴェイラがルカを見て、続けざまにサラを、最後にダンへ目を向け観念した様子で、

「……とにかく、早くすませてくれ。早ければ、早いほどいい。あの人を止められるのは、一週間でも厳しいんだ」

そう言い残し話し合いはしまいとなった。

 ダンが外で待機していた二人を呼ぶ。

 カールがいの一番にドアを引き現れた。車椅子を引き、手早くオリヴェイラを乗せると足早に部屋を横切り、無言のまま出ていった。ただ去り際、明らかにカールはダンたちを強く睨みつけていた。

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