SA 10. 便利屋ではないのだが?
「まあ、落ち着いて、ミスター。話が進みません。そちらとしても時間を掛けたいわけではないでしょう」
オリヴェイラは涙目になりながらも憤然やる方無しとサラたちを睨み、深く息を吸い吐き出し、ソファーの背もたれに体を預けた。怒鳴ったことで気が大きくなったのと、そちらの姿勢が楽なのかもしれない、ふんぞり返っている。
サラとルカを見ればクスクスと笑っている。ダンが目を細くすれば、サラはすぐさま「ごめん」と口を開き、ルカも胸に手を当てて謝罪の言葉を口に乗せる。ダンは肩を落とした。
「それで依頼というのは」
「ある男を殺してほしいんだ」
ダンが頷く。オリヴェイラも頷く。
沈黙。
「…………それで?」
「報酬はそちらの言い値で構わない」
ダンが太ももに両肘をつき、手を組んだ。
「報酬の件は承知しました。では、依頼を引き受けるかについて参考にしたいので、ターゲットについてお話いただきたいんですが」
オリヴェイラは体を起こし、意外なものを見るような目でダンを見た。
「それはそっちで調べてくれるんじゃないのか?」
予想外の返しにさしものダンも面食らい、珍しく目を丸くする。離れた場所にいるサラとルカは意味もなく挙動不審となり、お互いに何度も目を合わせ、首を横に激しく振っている。
ダンは手を下ろし、首を傾げる。
「申し訳ない。俺はあなたの頭の中をのぞくことはできないんだ。何故、その男を殺したいんだ?」
オリヴェイラは眉をしかめた。
「私が襲われたニュースを知らないのか?」
「何日か前に◯◯社の社長が何者かに襲われた、それがオリヴェイラ氏だったというニュースなら聞いているが」
「それだ! というか私が来た時点で気付いてほしいものだ」
「なにぶん、うちの系列ではなかったもので」
「ふんっ、情弱め。まあでも、ここまで分かったのなら言わなくても私の要望は察せられるだろ?」
「ああ、察した。その犯人を、俺たちに探して、殺して欲しいんだろう?」
「当然だ」
ダンが俯く——、いや、項垂れた。しきりに両手の指の先を突き合わせている。
オリヴェイラが身を乗り出す。
「金ならいくらでも出す。必要とあれば都度請求してくれても構わない。一週間で終わらせてほしい」
「はい?」
ダンが顔を上げた。珍しく、あからさまに感情を露わにしている。
「何の手がかりもない状態から捜索を含めて一週間と?」
「ああ、そうだ。できるだろ?」
ダンが唇の端を噛んだ。
サラは思った。こりゃマズイかも、と。
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