第9話

 テレビの中で、Fは魔法陣に捕らわれ、また守られながら少女と交渉をしていました。少女は自分の髪を掻きむしって叫び声を上げていました。魔法陣の周りを回っていた顔のない女が少女の声に反応するように激しく燃えていました。スプリンクラーも効果がなく、スタジオ全体が危険な状態になっていました。『人が焼け死ぬ』と手紙を送り、Fからの返信は『髪を入れて。合図したら打て』、でした。その時流石に、Fを選んだのは間違いだったのではないかと思ってしまいました。それでも、Fが僕を信じているのを感じていましたので、裏切ることが出来ず、Fの指示通りにしました。

 藁人形に髪を入れると、テレビの中の炎に異変が起こりました。顔のない女たちは何かから追われるように逃げ惑っていたのです。女たちの中で一際大きな炎を上げていた者が、その何かに捕らわれ、火が弱まっていきました。僕にはそれが取り憑きだと直感しました。話に聞いたことはありましたが、霊に霊が憑くのを実際に見るのは初めてでした。ぼやけていた顔の目と口の位置に3つ、黒い渦が開きました。それが、ワラの顔でした。

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