第8話

 拷問はその繰り返し。Fが僕のことを少女に吐くのも時間の問題でした。僕がその時何をしていたかというと、Fを呼び戻す魔法陣を書いていました。書き終わったら召喚呪文を唱えながら、ネットで『除霊少女』と画像検索をして、テレビに映っているのと出来るだけ同じ格好のものを探しました。それを、そこらへんにあった15センチ定規で測っておきました。

 召喚を終えるとFは戻ってくるなり、「一旦お家に帰りたい」と言いました。僕はまた召喚術をされたら困るので、僕の魔法陣にいるよう勧めました。水晶玉は今にも崩れ落ちそうになり、身体のいたるところが焼けただれた状態のFから子供の髪を受け取り、僕も覚悟を決めて、押入れの奥にしまい込んでいた藁人形を取り出しました。それにもまた定規を当てて比率を計算し、ペンで藁人形の狙いに小さく印を付けました。その間、Fは僕が渡したガムテープで顔を補強し、辛うじて前が見えるようになりました。

 テレビでは少女が怒りをあらわにし、持っていたスケッチブックのページを力任せに破いて丸め、顔のない女の一人に投げつけました。その切れ端は女に当たると燃えて、当てられた女は今までとは別の動きを始めました。その一人に合わせ他の女も動きを変えて、自分たちが通るとつく焼け跡で、何かを床に描き出しました。切れ端は先程書いた魔法陣だったのでしょう。同じ魔法陣が何倍もの大きさで、それも、あっという間に再現されたのです。僕の部屋に奇妙な短い振動が起き、僕の書いた魔法陣が火も付いてないのに煙を出して少しずつ消滅していきました。今まで見たことない現象に驚き、僕が慌てて金槌と釘を用意すると、Fから「待って、僕に考えがある」と言われました。僕にだって考えがありました。釘を打てる理由を説明しようとしましたが、Fは僕の言葉を遮って「手紙をくれ」と言い残して行ってしまいました。

 すぐ手紙にこう書いて送りました。『ペンダントを打つ』と。それでもFから『まだだ、契約させる』と返信が来ました。Fは説明しなくても僕のしようとしていることが分かっていたようでした。反対に僕のほうがFのしたいことが分かっていませんでした。

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