第6話

 テレビには3、40体ほどの顔のない女が映っていました。行ったり来たり、時計の振り子のように揺れていました。少女は平然と歩きまわり、他の出演者一人一人を人差し指と中指でゆっくりと指差していきました。すると、指を差された出演者たちは気を失い、その場で倒れ込んでしまいました。それは間違いなく一般の人からしたら除霊に見えるでしょう。しかし、実際には霊一体一体と契約を交わしているのです。それはおおよそ、「解放するから、この場に呪いを持ち込んだ者を捕らえろ」というような内容だと思います。顔のない女たちは、目的地が定まらないようで、電球のそばを飛ぶ虫のように、くるくると回り出しました。それらはスタジオ中心の広いスペースへと移動していって、段々と数を増やし、手こそ握らないものの、かごめかごめのような、マイムマイムのようなことになっていきました。僕では敵わない、世にも恐ろしい報復を受ける、その時そう悟りました。

「ワラしかない」そう言ったのは、Fでした。どうして僕が『ワラ』を持っていると分かったのか、おそらくFは感じ取ったのでしょう。それが凄まじい霊気を帯びていて、日本で最も有名な呪いだったからです。そう、僕は、日本呪術の中ではたった1つだけ、一撃必殺が出来る、呪いの藁人形の所有者なのです。ある神社に封印されていたのですが、神主からの頼みで僕が引き受けたもので、当然ですが、それもまた霊の力を借りる代物です。ただし、何の霊かは、僕にも分かりませんでした。呪われた者だけが、取り殺される時にその正体を見ることが出来ると言われていたのです。

「消されちゃうよ」とFは繰り返すのですが、簡単に「じゃあワラで」とは、僕には言えませんでした。

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