第19話 俺はやってはいけないことをした…

 中村優斗なかむら/ゆうとは学校にいる。


 昼休み。

 校舎の中庭に設置されたベンチに一人だけ座り、何となく昨日のことを振り返っていた。


 昨日は、自宅の二階でひたすら掃除を行っていたのだ。

 そして、あの部屋から、一冊のアルバムが見つかった。


 そのアルバムは普通の大きさであり、ページをめくっていたら、とある写真が視界に入ったのだ。


 それには二人の女の子と一緒にいる自分の姿。


 確かに写真に写っている、その子らとは、優斗が夢の中で出会った子と同じである。

 容姿なども大体似ていて、間違いはないと思う。


 その二人は可愛らしい見た目をしており、子供らしく無邪気なところもある。

 あの田舎で遊んでいた時、川原に行ったり、泊っている宿舎の近くで、夜には花火とかもやった気がした。

 他には、夏らしくバーベキューもしたはずだ。

 そこらへんの記憶は曖昧だが、何となくそんな気がする。


 でも、昨日、アルバムを見たことで、薄っすらとは脳内で記憶が再生され始めていた。


 彼女らとの記憶は優斗の脳内にある。


 という事は、彼女らのいう通り、昔、本当に出会っていたのだろう。


 しかし、夏休み以外は、そこまで関わっていた印象はない。

 学校や、地域が少しだけ違っていたことが理由なのだろうか。


 済む場所は違っていたとしても、児童同好会的な街のイベントに参加していたこと。

 それで、一応の繋がりがあったのだろう。


 しかし、なぜ、あの子らと関わる機会が減ってしまったのかは不明。


 昨日の夜、スマホで児童同好会について調べてみたが、小学生の内であれば参加可能だと知った。

 特に問題がなければ、夏のイベントの後も普通に、彼女らと関わっていてもおかしくはない。


 何かがあったという事なのか?


 強く過去を思い出そうとすると、少しだけ脳内が痛くなる。

 酷く眩暈を感じてしまうほどに苦しくなるのだ。

 だから、優斗は深く思い出すことはしないことにした。


 がしかし、そのモヤッとするところを解消したいという思いはある。

 知りたいという気持ちも少なからずあるのだ。


 こんな状態になるという事は、これ以上は追及しない方がいいという、本能的な知らせなのか?


 母親も話を逸らしたりしていた。


 何かあるのは間違いないだろうが、その隠されたことがあると余計に知りたくなってしまうものだ。




「ふあぁ……」


 眠い。


 疲れたという知らせがからだ全体に通達された。


 昨日は夜遅くまで、あの部屋にいてアルバムを見ていたのだ。

 気が付けば、朝だった。


 要するに自分は、あの掃除していた部屋で眠くなり、夜を過ごしていたのだろう。


 気が付いたら、意識は夢の中という事だ。


 一応寝ていたが、体の方は怠い。

 少々寝不足気味だったりするのだ。


 教室のような雑音の多い場所にいると、頭に声が響いて、なおさら頭が痛くなりそうだった。


 だから今は一人の方がいい。


 昼休みは孤独に過ごし、ある程度の休息を確保しようと思う。


 本来であれば昼食をとるのだが、そんなことよりも眠い。

 食欲よりも、眠気の方が勝っていたのだ。

 そして、優斗は中庭のベンチで軽く仮眠をとることにした。






 一人でリラックスしていると、意外とわからなかったことがパッと閃くことがある。


 体に力が入っていないからだろうか?


「ふあぁ……」


 よく寝た気がする。


 スマホの画面を見れば、ベンチで昼寝をしてから十五分しか経過していない。


 意外と昼休みの時間はまだある。


「そういや、もう一冊だけ、アルバムがあったはず……」


 昨日見たアルバムの他に、別のアルバムがあった。


 そちらの方にはまだ目を通していない。


 もしや、それに重要なことがあるのだろうか。


 確か、あの田舎のイベントは二泊三日だったはずだ。

 小学生にとっては長くも短いような、楽しいひと時だった。

 多くの写真が残っているという事は、それだけ楽しかったという表れかもしれない。


 けど、優斗は忘れていたのだ。

 楽しかったはずなのに、今まで思い出す事すらできていなかった。

 それが一番の疑問点である。


「そろそろ、教室に戻るか」


 そう思い、背伸びをしながらベンチから立ち上がる。


 ふと、遠くの方へ視線を向けた時、その先には、芽瑠の姿があった。


 午後は移動教室なのか、彼女は普段とは違う校舎へ向かって歩いている。


 駆け足で追いかければ、芽瑠と会話できるだろう。


 けど、そんな気分じゃなかった。

 今は一人でいたい。

 そんな心境ゆえ、優斗は芽瑠の方へは行かず、いつもの教室へと戻ることにしたのだ。






「今日は色々とやってもらうから」


 放課後、部室内で、夏理南奈なつり/ななからそう言われた。


 やってもらうとは、多分、あのことだと思う。


 南奈は優斗の目の前に立っており、堂々とした立ち振る舞い。


 何かを隠すとか、そういうことはせず、制服からでもわかるほどの胸を張っていた。


 南奈の言う、やってもらうの、やるというのは胸を揉むということ。


 以前、ブラジャーを取ってこれなかった変わりとして揉むことになったのだ。


 この前は街中で付き合った。

 今日は、部活の一環として彼女の貧乳を揉むことになっているらしい。


「ねえ、こっちに来て」

「うん」

「もっと近づいてってこと」

「……本当にやるのか?」

「そうよ。当たり前でしょ? 彼女の下着とか、持ってこれる?」

「……いや、難しいと思うけど」

「だったら、潔く揉んでよ」

「俺に揉まれて嫌だとか思わないのか?」

「別に、そんなことはないわ。別に嫌いとかでもないし」

「そうか……」


 揉むというは難しいところだ。


 なんせ、貧乳過ぎて何もないというべきか。

 本当に微妙にあるかないかのラインである。


 これは、芽瑠のブラジャーを取ってこれなかったことが原因なのだ。


 芽瑠に迷惑をかけないこと。

 その対策としては揉むしかない。

 それこそが一番の対処法なのだ。


「じゃあ……揉むから」

「お願いね」

「……」

「なに?」

「いや、向き合いながら揉むのか?」

「別に私はどっちでもいいけど」


 南奈は余裕のある視線を向けてくる。

 まじまじと見られていると、逆に緊張するものだ。


「このままでいいよ」


 優斗はそう言い、手を出す。

 その両手は彼女の胸へと向けられた。


 ……あれ?

 意外とある?


 小さいと思っていたが、そうでもなさそうな気がする。


 おっぱいは小さくても、おっぱいなのだと理解した瞬間だった。


 優斗は一応揉んだことにし、南奈の胸から手を離そうとした時。

 嫌なタイミングで、部室の扉が開く。


 そこには、なぜか、結城芽瑠ゆうき/めるの姿があったのだ。

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